勘当された家と国の話を聞きながら、食欲は失せても肉は食う。
なんでもあり。
「なんか、お前の出身国、酷いことになっているらしいじゃねえか」
「……なんだそれ、相変わらず情報早えな」
「情報で小遣い稼ぎしているオレのことを舐めてもらっちゃ困るねえ〜!」
「俺の出身国なんて、随分遠いところのことをまあ。それ、売れたのか?」
「ぼちぼち」
この国に来て、もうはや数ヶ月。
自分の国を出てからは、もう数年。
こうやって働けるところがあれば、どこだって場所を移してきた。
こいつも似たようなもので、渡り鳥のように色んなところに行っては働いている。
顔のきく奴と一緒にいるのは、互いに都合がいい。
「んで、真面目な話、貴族が一気に死んだって」
「……は?なんで?」
さすがに耳を疑う内容をポンっと言われたので、俺の方が止まった。
「いくつかの貴族の首が、城に吊るされているそうな。しかも、ここからが驚き情報」
すでにここまでも驚き情報だが、というツッコミが追いつかない。
「その中に、第二王子もいるらしい」
…ああ、あの方はとうとうやらかしたのか、と思った。
「どした?顔色悪いぞ」
「そんな胸糞悪い話聞かされたら、いい気はしねえだろ」
「それだけって感じでもないだろ?んん?吐いてみ、何隠しとる」
「……その、首を持ってかれた貴族の家名、把握してんのか?」
「してるには、してるけど。……お前がこんな話にノってくるの、変じゃね?まじでどうした?」
「家名、知ってる分教えろ。話はそれからだ」
「いくらくれんの?」
「お前の驚き情報を上書きする驚き情報」
そこまで言うと、ニヤついた顔で俺の肩をバンバン叩いてきた。
「はは〜ん、そこまで言うとは、期待させてもらおうじゃないの!つまんねえ情報だったら、ここの飯お前の奢りな」
そう言って、メモを見せてきた。
いくつかの貴族の名前と、見覚えのある名前も書かれていた。
「はあ、やっぱりな…」
「なに、早くオレよりすごい情報教えろよ〜〜」
「これ、俺のことを勘当した実家の名前」
メモの一つを指さして言うと、向かいに座っている奴があんぐり口を開けていた。
「…………は」
「とびきりのいい情報だったろ。だから、ここは割り勘な」
「ちょっと待てえっ!なんだって?オレの耳がおかしくなったか?」
「情報を聞き逃すなんて命取りな奴め」
「命取りはおめえだろっ!何、勘当されてんだよっ!」
「俺は生きてるから。この名前が連なってる連中と違って」
メモをとんとん叩くと、もう一度あんぐり口を開けて、俺を見てきた。
喜怒哀楽のわかりやすい奴だとは思ってたけど、ここまでなのははじめて見た、おもろい。
嫌〜なザラッとした気分が、少し紛れる。
「理由は」
「さあ?」
「さあって、こたぁねえだろ」
「第二王子に気に入られなかった、以上」
「待て待て待て待て、かの第二王子様が関わってんの!?」
「関わって『た』、だ。過去形、過去の話、今の現状と俺は無関係。OK?」
「オーケーなわけあるか、全部話せっ!!!」
「じゃあ、ここ奢りな」
「んなもん、奢ってやるから話せ!」
おっと、飯食う気が失せてたけど、追加で注文しよ。
店員を呼んで一番でかい肉を頼んだ。
「でぇ?肉食うくらい元気なら、話せよ」
「何から話すかねぇ。お前、第二王子の悪行、どこまで知ってんの?」
「学園時代に騒ぎになったってことは、知ってる」
「ははっ、お前ほんと優秀ねー。そんな情報、あの国からしたら掻き消したくてしょうがなかったろうに」
「オレ、仕事できるから」
「知ってる。そして、第二王子は仕事のできない人だった。おまけにやらかしばかり」
「その言いぐさ、結構近い距離にいたのか?」
「学園時代の取り巻きその1ってところだな。実家に言われて仕方なくついてただけだけど」
早速頼んだ肉が来たので、ガリガリナイフを入れて、まあまあのデカさのまま口に入れる。
こんなはしたない食い方、あの頃は許されなかったものだ。
「学園時代にあの人がやったのは、大きいことだけで言うなら2つ。一つは、不正。成績やテスト結果なんかを教師を脅して、改竄させてた」
「ほーん、飾り付けだけ豪華だな」
「そう。中身が全然伴わなくて、苦労させられた。んで、もう一つは、平民の女性に恋をしたこと」
「は?」
「これが大問題。一応、婚約者もいたし」
「浮気ってことか?」
「貴族どころか、王家の話だから、そんな生やさしいものじゃないさ。しかも、最悪だったことに、その平民の女の子、別国の密偵だったんだよね」
「は?」
「お前以上に情報を嗅ぎ回るのが上手な、ハニートラップだったってあとでわかった」
淡々と語り、淡々と肉を食う俺を、なんとも言えない顔で見ている。
まあ、そんな顔するなって。
俺も、あの時ほど胃が痛かったことはないけど。
「だから、謹慎処分をくらってたはずなんだけどなぁ…。つっても、もう何年も前の話だから難しいか」
「それで、お前はどうしてたの?」
心配そうに俺を見てくるから珍しいこともあるもんだと思いながら、肉を飲み込んだ。
「ずっと苦言を呈したさ。恋人ができた時も、婚約者を蔑ろにした時も、それ以外もずっと。まあ、聞く耳は持たないし、俺以外の取り巻きは耳障りのいいことしか言わないから、俺だけ気に入らなかったわけ。しかも、親父だった奴は第二王子を担いで反旗を翻したい他の貴族と仲を深めていたから、双方から俺が邪魔になったってわけよ」
「それで勘当?」
「そ。命惜しくば国を出ろって言われて以来、俺にはもう関係ない話」
あんなに胸糞悪い気持ちだったのに、デカい肉を食べ終えた。
やっぱ、食は大事だよな。
勘当されて心底気づいたのは、飯は食えるだけでありがたいが、量があれば最高、味が美味ければこの上ないってことだ。
これだけのありがたみを感じられるようになったのは、勘当されてよかったことの一つかもな。
「……じゃあ、お前の親父さんたちは、失敗したんだな」
「ああ。そりゃそうだろ。あんな王に相応しい第一王子殿下がいる中で、ただの馬鹿な反逆者たちだ。首も晒されるだろ。…第二王子殿下は、傀儡にはもってこいだったろうけどな」
「じゃあ、よかったわ」
「なにが」
「お前が今ここで肉食えてるのが。もしかしたら、お前の首もあったかもしれねえんだろ?」
「勘当されずに、一人だけうまいこと第一王子派閥に入れていなかった時の運命は、そうだろうな」
そう言って、肩を竦めると、さっきよりも強く肩をバシバシ叩いてきた。
「そっかそっか、じゃあもっと食え!今日はオレの奢りだしな!」
「まじか。おっちゃ〜ん!デザート追加で!」
「つーか、お前お貴族様だったのかよ…?」
「元、な」
「見る影もなくて可哀想」
「見る影があったら、生きにくくてしゃーないだろ」
「それもそうか」
ようやく脳内処理が追いついたのか、いつものようにケタケタと笑い始めた。
俺は、ここのスペシャルどでかパフェに、手をつけだしたのだった。
はあ、飯がうまいっていうのは、いいねえ〜。
了
お読みくださりありがとうございました!!
245日目。
(追記)誤字報告ありがとうございました!修正いたしました!(2026.9.4)




