第二話 「出会い」
あの大爆発の後、俺と少女は奇跡的に一命を取り留めたという。人々が火の渦に飲まれていく中、俺が無理をして走り抜けたおかげで、だ。
そのせいで目を失ったし、全身に大火傷を負ったが
あまり後悔していない。それよりも、少女が無傷でよかったとさえ感じている。ただ少し、心残りがあった。
「あなたが助けてくださった少女は、私に伝言を頼んで去ってしまいました」
救急車の車内は、薬の匂いで充満していた。
朦朧とした意識の中、看護師の人にこう言われた。
「『お兄ちゃん、ありがとう。怖かった』だそうです。泣きじゃくりながら、何度も言っていましたよ。あなたは、あの子の命を救ったんです」
本当は、少女の口から聞きたかった。
ただそれだけのことだ。
とにかく、生きていてよかったと思う。
目を失ったせいで、夢が絶たれた。何も見えない。
そう実感する日々。
─── そんな絶望の闇に一筋の光が差し込んだ。
細口華という一人の女性だった。
彼女とは、部屋番号の勘違いがきっかけで知り合った。本当は妹のお見舞いに来るはずが、部屋番号を間違えてしまって俺の部屋に入ってきてしまったらしい。そのまま追い返すのもなんだと思い、その場で少し世間話をした。
彼女は、心優しい人間だった。俺の境遇を理解し
寄り添ってくれた。今はすっかり打ち解けて、一週間に三回程会う仲だ。俺は彼女と会える日をただ楽しみに待っていた。
「蓮、今日の調子はどう?」
「まあまあってとこかな。そっちは?」
「うーん、妹が来週に大手術を控えてて、周りの看護師さんたちがバタバタしてる。あたしも、着替えを取り替えたりとか、忙しいんだよね」
「そうなんだ…」
そんなに忙しいのに、俺のために時間をとってくれたのか。そう思うと、胸が熱くなる。
ちょっとした手違いのせいで偶然出会った男のために?俺のためにか?どうして俺にそんなこだわるんだ。俺には理解できなかった。お人好しにも程ってものがあるだろう。そういうものか。俺はそんなことを考えながら、彼女が注いでくれた紅茶を一口啜った。




