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第一話 「少女」

          プロローグ


「蓮は優しすぎるよ」


あの時、あの少女を助けていなければ。


「蓮は優しすぎちゃうんだよ」


あの時、あの少女を助けたせいで。


『お兄ちゃん、ありがとう。怖かった』


嗚呼、これだから。


─── 俺は優しすぎるんだ。


        フラッシュバック


 それはなんの前触れもなく、俺に降りかかった厄災だった。

あの雪の夜。思い出しただけでも、鳥肌が立つ。

酷く寒かった。だが、酷く熱かった。

怯え、逃げ惑う人々。次々と灰と化していく楽譜、楽器。それらをただ漠然と眺めていた。

 火の手が食堂へと迫る。あそこはガスが漏れているから早めに逃げよう。─── そう思っていた矢先。

(はっ!そっちは──!!)

一人の少女が、パニックのあまり食堂へ駆け込む姿が見えた。

(ダメだ!!)

俺は必死に手を伸ばし、少女を庇うように抱え込む。

「よかった、間に合っ………」

【ドオオオオォォォオォン!!!!】

火がガスに引火し、大爆発を起こす。

刹那、また全身に激しい痛みが走った。

(痛い…逃げたい……)

痛みをぐっと抑え込み、やっとの思いで立ち上がる。

(でも─── !!)

俺が逃げたら、誰がこの子を守ってやれる?

「─── この子は、俺が守る。必ず助ける!」

俺はそう決意し、真っ暗な闇の中を駆け出した。

    

 後から新聞を読んでわかったのだが、あれは放火だったらしい。あの逃げ惑う人々の様子や、楽器が燃えていく光景については一切記されておらず、すべて“放火”の一言で片付けられていることに腹が立つ。だが、今となってはしょうがない。

 その下には、犯人の動機について記されている。

「会社が倒産したことによってお金がなくなった」「保険金目当てで自分の会社の建物と、あてつけとしてその近くにあった音楽教室に火をつけた」。

なんとも馬鹿馬鹿しい。個人の問題に他人を巻き込まないでくれ、と思う。

 俺はあの大爆発で、目を失った。

そのせいで、俺のヴァイオリニストへの夢は絶たれてしまったし、作りかけだったソナタも作れなくなってしまった。尤も、燃えた楽譜は全て灰になっているだろうが。

 別に、誰が悪いということではないだろう。

俺が少女を守ったせいではなく、少女がパニックで食堂に駆け込んでしまったせいでもなく、放火した犯人のせいでもない。倒産するのは仕方ない。俺が犯人だったとしても、放火はしなくても数人から財布を奪うか殺すか、自殺するかぐらいはしていただろう。この世は運次第。実に理不尽だ。それによって、人生は簡単にあらゆる方向へ捻じ曲げられてしまう。人生とはそういうものだ。俺はそのことを、この身をもって痛感している。


こんにちは!初投稿です。連載始めました!

恋愛ミステリ小説、始まります!

小学六年生(来月には卒業)の不束者ですが、

末長くよろしくお願いします!

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