第16話 聖女(男)、今日も光る
朝は身支度から始まる。
どピンクの絨毯の上をぞろぞろと歩く修道女たち。鼻息まじりの音が絨毯に吸われている。先頭を率いるのは騎士である。
「おはようございます、聖女様」
こいつの名前は最近儀式で覚えた。
アルなんたらかんたらアイゼンヴァルト。
相も変わらず、目を伏せている。
「着替えるだけだし、まだ休んでろよ」
「お気になさらず」
騎士の先導で、部屋から出る。
壁にピッタリとつけられたベッドを横目に仕事に向かう。今日も行列が待っている。
「馬ー。行くぞー」
厩舎に声をかける。
馬が歩いて出てくる。
クソ狭い馬車に揺られ、仕事場に向かう。
今日は至って普通の日だった。
【本編終了】
「こちらが、騎士の前室です」
「おぉ~っ!ほんとにおっきなベッドがある」
思わずカメラを構える。
「聖女の部屋の前に作られたこの前室は、護衛騎士専用の部屋として使われました。騎士は夜の間もここで眠り、聖女を守ったのです」
「ほんとに聖女の部屋の壁にピッタリとくっついてるんですね」
「えぇ、常に傍にいるという誓いを守るためだったと言われています。ただし、聖女が眠った後は、決して聖女の部屋には立ち入らなかったそうです」
「なんか尊い関係って感じ!」
「お写真はお撮りになりましたか?それではいよいよ聖女の部屋に入っていきましょう」
遠い伝説の時代に思いを馳せる。
この先で、聖女が暮らし、騎士と会話し、生きていた。
カメラを両手に、足を踏み入れた。




