第14話 聖女(男)、描かれる
祈りの時間だ。
礼拝所でボワッとすると何かキラキラになる。喜ばれるので定期的にやっている。
後ろから荒い息が聞こえる。
「うるさいぞ」
「申し訳ございません」
息は聞こえなくなる。ただし腕立て伏せは止まらない。
「聖女様、お時間です」
今日は、画家が来る日だった。
「お初にお目にかかります。聖女様」
鼻息の荒い修道女が画家を連れてきた。
ボゥッしても彼女の風邪は何故か治らない。
「なんか絵を描くんだって?」
「ええ、凱旋図のご依頼をいただきました」
「この方は美人画で有名なんですよ!」
「俺男なんだけど?」
「(無視)」
「それでは騎士様、聖女様を抱き抱えて下さい!」
「は?凱旋図なんだろ?」
「凱旋図ですから」
「凱旋図ということですから、ここは凛々しく…」
「聖女様の尊さを全面に押し出すべきです」
「では騎士殿、もう少し聖女様を高く掲げて…」
「待ってください!それは流石に近すぎます。節度が大事なんです!!」
「聖女様、お顔をもう少しこちらに…」
「聖女様!目線は騎士様のお顔に、です!」
矛盾する指示を出すんじゃねぇ。
かくして聖女凱旋図は完成した。
たおやかな美人が、屈強な美形騎士に抱き抱えられている。
「これ、女じゃね?」
「聖女様です」
「顔、別人じゃね?」
「そっくりです」
騎士は真顔で頷いた。
「ゆっくり霊夢です」
「ゆっくり魔理沙だぜ。今回はアイゼンヴァルト美術館所蔵『聖女凱旋図』について解説していくぜ」
「有名なやつね!前から思ってたけど、聖女、デカくね?」
「これは当時の遠近法が未発達だったからだな。
重要人物は大きく描かれるのが普通だったんだぜ」
「あと、このポーズ何?」
「これは騎士との精神的距離を表していると考えられているぜ」
「深い絵なのね!それにしても、美男美女よね
」
「一説には、聖女は男だったと言われてるぜ」
「…マジ?」
「聖女だから男なわけないぜ」
「そうよね」
「各地の『走る騎士像』の元ネタとしても有名だぜ」
「走ってないけど?」
「走ってないぜ」
「それにしても花いっぱいよね」
「聖女の奇跡によるものだと言われているぜ。聖女が駆け抜けた道には花が咲き誇ったという伝承から、花が聖女のモチーフになってるんだぜ。というわけで次回は、世界遺産『聖花の巡礼路』を解説していくぜ」
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