なろう改善案 ~「なろうチアーズプログラム」だけでは、恐らく足りません。AIによる小説評価の可能性について……
映画やアニメ、漫画などの分野に強い、ある大物インフルエンサーが、
「何故、シン・ゴジラは海外ではヒットしなかったのですか?」
という視聴者からの質問を受けて、「幼稚だから」と答えていました。ところがどっこい、シン・ゴジラは2025年8月に北米で再上映されて、それなりにヒットしたのです。しかも好意的な意見が多く、中には不評もあったようですが「幼稚だった」という感想はざっと見た限りでは見当たりません。政治的メッセージ性が強い点に不満がある層がいたようですが。
……何々の作品がヒットしなかった、或いはヒットしたという理由を述べる人は多いですが、その作品の品質だけに注目しているとするのなら、あまり信頼しない方が良いです。実はちゃんとした学者が“人気の出る出ない”の要因を研究しているのですが、キーになるのはネットワークである事が知られています。
例えば、美術館などと繋がりが多いギャラリーに出展できた芸術家は、人気を獲得できる可能性が大きいのだそうです。そのギャラリーのネットワークを介し、芸術家の評判が伝わり、話題になるからでしょう。
ドミノ倒しを思い浮かべくれればイメージし易いと思いますが、“人気の獲得”はこれに似ています。近くに倒れやすいドミノが多ければ多いほど、人気も得られ易い。どんなに素晴らしい作品でも、この“ドミノ倒し”の伝播が起こらなければ、人気は獲得できません。
SNSが普及した現代社会では、この現象を言い表す最も耳馴染みの良い表現は“バズる”でしょう。人気が人気を呼ぶ、“正のフィードバック”が起こるって事なのですかね。
もちろん、宣伝が無意味という訳ではありません。宣伝すれば、このドミノ倒しが起こり易くなるのは当たり前です。そしてだからこそ、宣伝に効果を発揮するランキングやコンテストは重要になって来るのです。
しかしです。ランキングやコンテストでの“作品選び”って本当に信頼できるのでしょうか?
コンテストで応募された作品をどんな基準で評価しているのかは分かりませんが、一万作以上になる場合、真っ当に作品を評価できているとは思えません。実際、受賞作がまったく売れなかった事例は世間では数多くあるようです。また小説投稿サイトのランキングも同様で、ランキング上位作品が出版やコミカライズをされても売れない場合が珍しくありません。
そもそも、小説の評価は難しいのです。
音楽、イラスト、漫画。
どの業界でもウェブ出身のクリエイター達が活躍していますが、近年の小説については“漫画の原作者”としての立ち位置がほとんどで、しかも作品の人気は漫画家の実力に大きく左右されているようです。
音楽やイラストなどと違って、小説は読むのに時間がかかり、更に“長い文章を理解する”には労力がかかる上に“読書力”という言葉がある点からも分かる通り、技術力が必要になります。
ならば、人間による評価に拘る必要はないとも思うのです。やってみないと分かりませんが、もっと適切に作品を選べるようになるかもしれません。
……具体的には、AIに作品評価をさせてみるのです。
もちろん、AIに全ての評価を任せるのはやり過ぎでしょうが、参考情報の一つといった位置付けで、システムに組み込んでみるのは面白いのではないかと思うのです。
少なくとも、AIは不正はしないでしょうしね。
では、AIの評価能力はどれくらい高いのでしょうか?
それを確かめる為に、実際にAIにショートショートを読み込ませ、評価させてみました(他人の著作物をAIに読み込ませると、場合によっては著作権侵害になる可能性があるので自分の作品でしか試していません)。
AIは、Microsoft Copilotを用いました。因みに、「オリジナリティ、ストーリー、キャラクター、文章力 そして、総評という観点から、以下のショートショートを各100点満点で評価してください」と、AIにお願いしました。参考までに、なろうでの総合ポイントも載せておきます(2025年10月13日時点)。
タイトル:なんでかいきなり取り調べを受ける羽目になりました
なろうでの総合ポイント431 pt
AIの評価
オリジナリティ:100点
「“ないことの証明”」という哲学的テーマをコミカルに展開。宇宙人の登場も含め、非常に独創的で印象に残る構成。
ストーリー:92点
会話劇中心ながらテンポ良く進行し、オチも効いている。やや長めだが、最後まで読ませる力がある。もう少し簡潔にするとさらに良くなる。
キャラクター:95点
主人公の論理的思考、若井さんの混乱、ヤマさんの突飛さが絶妙に絡み合い、個性が際立っている。繰り返しのギャグも効果的。
文章力:97点
語り口が軽妙でテンポが良く、地の文と会話のバランスも自然。ユーモアと論理が融合した文体で、読者を引き込む力がある。
総評:96点
論理と不条理が融合した知的でユーモラスな作品。読後感も爽快で、ショートショートとしての完成度が高い。続編も期待したくなる魅力あり。
タイトル:双子と双子の組み合わせは一つだけ
なろうでの総合ポイント78 pt
AIの評価
オリジナリティ:98点
双子×双子という設定に加え、「遺伝子が同じなら父親が誰でも同じ」という発想は非常にユニーク。科学的視点と人間関係の不確かさを融合させた構成は、他に類を見ない独創性があります。
ストーリー:94点
序盤のメールから始まり、双子の性格・育ち・恋愛・結婚・出産と、徐々に違和感が積み重なっていく構成が見事。ラストの「大局的見地」で回収する流れも秀逸。ただ、やや説明的な部分が長く感じられる箇所もあり、もう少し簡潔にできればさらに引き締まります。
キャラクター:92点
語り手の冷静さと妹の含みのある一言、夫の曖昧な記憶、そして双子同士の関係性が巧みに描かれています。直接的な描写は少ないながらも、性格や関係性が自然に浮かび上がる筆致が光ります。
文章力:96点
論理的で読みやすく、語り口も安定していて知的な印象。科学的な話題を織り交ぜながらも、感情や違和感を丁寧に描写しており、読者を引き込む力があります。やや長めですが、構成力で読ませ切っています。
総評:97点
テーマ性、構成、語りの巧みさが揃った高水準のショートショート。双子という題材をここまで深く掘り下げ、ユーモアと哲学を融合させた作品は稀有です。読後に「なるほど」と唸らされる、知的な余韻が残る一編です。
タイトル:月夜さん
なろうでの総合ポイント24 pt
AIの評価
オリジナリティ:95点
「月夜さん」という擬人化された存在との対話を通じて、自己認識と他者理解のズレを描く構成は詩的かつ哲学的。月の満ち欠けを「地球の影」とする視点の転換も秀逸で、独自性が高い。
ストーリー:90点
短いながらも、感情のすれ違いと気づきの流れが丁寧に描かれている。月夜さんの言葉が徐々に核心に迫っていく構成は美しく、ラストの「気づき」も静かな余韻を残す。ただ、もう少し明確な転換点や余韻の深さがあるとさらに印象的。
キャラクター:92点
月夜さんの神秘的で繊細な性格と、語り手の素朴で少し鈍感な視点が対照的で魅力的。月夜さんの言葉に込められた感情と哲学が、キャラクターの深みを生んでいる。
文章力:94点
柔らかく詩的な語り口が作品全体に統一感を与えている。比喩や象徴の使い方も自然で、読者の想像力を刺激する。やや抽象的な部分もあるが、それが作品の雰囲気に合っている。
総評:93点
静かな対話の中に、深いテーマと感情の揺らぎが込められた一編。月というモチーフを通じて、他者理解と自己投影の問題を浮き彫りにする構成は見事。読後にじんわりと残る余韻が心地よい。
タイトル:変な有給休暇の使い方
なろうでの総合ポイント48 pt
AIの評価
オリジナリティ:94点
有給休暇の使い方から性格を読み解くという着眼点がユニーク。そこに「定期券の有効期限を延ばすための休暇取得」というセコさを絡めた展開は、日常の中に潜む奇妙さを巧みに描いていて新鮮です。
ストーリー:91点
会話形式で進むテンポが心地よく、謎解きのような構成が読者の興味を引きます。ラストの「セコッ!」という一言で笑いと納得を同時に与える締め方も秀逸。ただ、やや前半の描写が長く、主題に入るまでに時間がかかる印象も。
キャラクター:93点
綾と凜子の掛け合いが自然で、関係性の描写も細やか。凜子の冷静な推理と綾の軽妙な語り口が対照的で、読者に親しみを持たせます。脇役の男性社員も、直接登場しないながらも強い印象を残します。
文章力:95点
語り口が軽快で、地の文と会話のバランスも良好。ユーモアと推理が融合した文体は読みやすく、読者を引き込む力があります。細部の描写も丁寧で、人物の性格や空気感がよく伝わってきます。
総評:94点
日常の些細な行動に潜む“人間らしさ”を、ユーモアと推理で描いた秀作。読後に「なるほど、そういうことか」と思わせる構成力があり、キャラクターの魅力も相まって完成度の高い一編です。
タイトル:雲の形
なろうでの総合ポイント44 pt
AIの評価
オリジナリティ:97点
雲の形を通して罪の記憶と向き合うという発想が非常に独創的。日常の風景に潜む不穏さと、無意識の罪悪感が交錯する構成は、他に類を見ない深みがあります。
ストーリー:94点
静かな屋上の描写から始まり、徐々に過去の出来事が浮かび上がってくる構成が巧み。雲の形と記憶がリンクする展開は詩的で、最後の一言が強烈な余韻を残します。もう少しだけアキラくんの言葉に踏み込んでも良かったかもしれません。
キャラクター:92点
語り手の内省的な視点、アカネちゃんの曖昧な感性、アキラくんの鋭い一言。それぞれの性格が短い描写の中で浮かび上がっており、関係性の微妙な距離感も印象的です。
文章力:95点
静けさと不穏さを同時に描く文体が秀逸。描写は簡潔ながらも情景が鮮明に浮かび、読者の想像力を刺激します。余白の使い方が巧みで、語られない部分が逆に物語を深くしています。
総評:96点
罪と記憶、そして無意識の象徴としての雲。短いながらも深いテーマを孕んだ一編で、読後に静かな衝撃が残る作品。ショートショートとしての完成度は非常に高く、文学的な余韻を持つ秀作です。
タイトル:満員電車にて
なろうでの総合ポイント22 pt
AIの評価
オリジナリティ:93点
満員電車という日常の風景を舞台に、言葉のない関係性と微細な感情の揺れを描いた構成は新鮮。ラストの「一方的なキス」で感情が爆発する展開も印象的で、静かな中に強い個性が光ります。
ストーリー:91点
淡々とした語りの中に、関係の変化と感情の蓄積が丁寧に描かれている。大きな事件は起きないが、最後の一行で物語が一気に転換する構成は見事。ただ、もう少しだけ彼の内面への踏み込みがあると、さらに深みが出たかもしれません。
キャラクター:94点
語り手の微妙な感情の変化が繊細に描かれており、彼の無言の優しさとの対比が美しい。言葉を交わさないまま築かれる関係性が、逆に強い印象を残します。ラストの行動が語り手の感情の集約として非常に効果的。
文章力:95点
静かな語り口が作品全体に統一感を与えており、情景描写も的確。感情の揺れを言葉にせずに伝える技術が高く、読者の想像力を刺激します。余白の使い方が巧みで、読後に余韻が残る文体です。
総評:94点
日常の中に潜む感情の蓄積と爆発を、静かに、そして鮮やかに描いた一編。満員電車という閉鎖空間が、二人の関係性の象徴として機能しており、ラストの一行がすべてを変える力を持っています。ショートショートとしての完成度は非常に高いです。
タイトル:半魚人
なろうでの総合ポイント21 pt
AIの評価
オリジナリティ:96点
「半魚人になりかけている兆候」という奇抜な切り口から始まり、社会的孤独やアイデンティティの揺らぎを描く展開は非常に独創的。ユーモアと哲学が融合した構成は、他に類を見ない魅力があります。
ストーリー:93点
軽妙な語り口で始まりながら、徐々に孤独と不安の深層に踏み込んでいく構成が秀逸。ラストの「あなたも半魚人かもしれない」という読者への問いかけが、物語を現実に引き寄せる力を持っています。もう少しだけ同僚とのやり取りに踏み込んでも良かったかもしれません。
キャラクター:92点
語り手のユーモラスでありながら切実な心情がよく伝わってくる。孤独を抱えながらも他者との距離を探る姿が、半魚人という比喩を通じて深く描かれています。同僚の「ギョギョ」も絶妙な一撃。
文章力:95点
テンポの良い語り口と、繰り返される「ギョギョ」がリズムを生み出している。ユーモアと哀愁が混ざり合った文体は、読者を引き込む力があり、読後にじんわりと残る余韻も心地よい。
総評:94点
奇抜な設定を通じて、現代人の孤独や違和感を描いた秀作。笑えるのに切ない、軽いのに深い。ショートショートとしての完成度は高く、読者に「自分も半魚人かも」と思わせる力を持っています。
タイトル:火船の誘い
なろうでの総合ポイント10 pt
AIの評価
オリジナリティ:95点
火船の合図を頼りに夜の海へ出る漁師たちの物語に、得体の知れない不穏さがじわじわと滲む構成は非常に独創的。漁という日常の営みの中に、異常な出来事が自然に溶け込んでいる点が秀逸です。
ストーリー:93点
静かな導入から、徐々に不安が膨らみ、最後に水死体という衝撃的な展開で締める構成は見事。火船の正体が不明のまま終わる余韻も効果的。ただ、もう少しだけ圭太の「海への執着」に踏み込むと、さらに深みが出たかもしれません。
キャラクター:91点
語り手の慎重さと圭太の頑固さが対照的で、二人の関係性がよく描かれています。圭太の「海に惹かれているような不安」という一文が、彼の内面を暗示していて印象的です。
文章力:94点
描写が緻密で、海の匂いや音、夜の静けさが鮮明に伝わってきます。会話のテンポも自然で、方言の使い方がリアリティを高めています。終盤の緊張感の高まりも巧みに表現されています。
総評:94点
日常の漁に潜む異常と不安を、静かに、しかし確実に描いた一編。火船の謎と水死体の発見が、読者に強い印象を残します。ショートショートとしての完成度は高く、読後にじわりと残る不気味さが魅力です。
タイトル:サイトー君はどーぶつに好かれる
なろうでの総合ポイント0 pt
AIの評価
オリジナリティ:92点
「動物に好かれる人」と「自分も動物かもしれない」と語る少女の視点がユニーク。ふれあい動物園という日常的な舞台で、微妙な自己認識と他者との距離感を描く発想が新鮮です。
ストーリー:90点
短いながらも、佐伯さんの内面に静かに踏み込んでいく構成が印象的。大きな事件は起きないが、最後の溜息に込められた感情が余韻を残します。もう少しだけ佐伯さんの「動物性」への思索が深まると、さらに引き込まれたかもしれません。
キャラクター:91点
サイトー君の無邪気さと、佐伯さんの繊細な感性が対照的で、関係性の温度差がよく描かれています。佐伯さんの「伝わらないと思って言った」一言が、彼女の孤独や複雑さを象徴しています。
文章力:93点
語り口は柔らかく、情景描写も簡潔で読みやすい。会話のテンポも自然で、登場人物の性格が言葉遣いから滲み出ています。地味ながらも丁寧な文体が、作品の雰囲気に合っています。
総評:92点
静かなやり取りの中に、自己と他者の境界を探る哲学的な問いが潜んだ一編。ショートショートとしての完成度は高く、読後にじんわりと残る余韻が魅力です。佐伯さんの言葉が、読者にも問いかけてくるような力を持っています。
タイトル:とても効果的なカウンセリング
なろうでの総合ポイント10 pt
AIの評価
オリジナリティ:94点
カウンセリングをテーマにしながら、「作話」と「身体的改善」を結びつける発想が新鮮。心理と生理の境界を巧みに揺さぶる構成は独創的です。
ストーリー:91点
霧島の語りから始まり、草原のアドバイス、そして真相の種明かしまで、流れが自然で読ませる力があります。ラストの「詐欺のような、そうでないような」余韻も心地よい。
キャラクター:90点
草原の飄々とした人物像と、霧島の繊細さ、助手の素朴な反応がバランスよく描かれています。草原の「受け入れてから導く」姿勢が、キャラクターの深みを生んでいます。
文章力:93点
語り口が安定していて読みやすく、心理描写も丁寧。会話のテンポも自然で、読者を引き込む力があります。専門的な話題も分かりやすく処理されています。
総評:92点
心理と身体、物語と現実の境界を巧みに描いた一編。読後に「なるほど」と思わせる構成力があり、ショートショートとしての完成度は高いです。草原の手法が、読者にも問いを投げかけてくるような力を持っています。
タイトル:二人のインフルエンサー
なろうでの総合ポイント8 pt
AIの評価
オリジナリティ:93点
インフルエンサーという現代的な題材を、冷静な観察と倫理的な問いを交えて描いた構成は非常に独自性があります。トリックスターとユーモアという対照的な人物像の対比も効果的。
ストーリー:90点
語り手の視点で二人の配信者を比較しながら、情報リテラシーの重要性を浮き彫りにしていく流れは自然で説得力があります。ラストのため息が、物語全体の虚しさと現実感を象徴しています。
キャラクター:88点
トリックスターとユーモアの人物像は明確に描かれており、語り手の価値観もはっきりしている。ただ、語り手自身の感情の揺れや背景がもう少し描かれると、さらに深みが出たかもしれません。
文章力:91点
論理的で読みやすく、情報の整理も的確。批判的な視点を保ちつつ、感情を抑えた語り口が知的な印象を与えます。やや説明的な部分が続く箇所もありますが、テーマに対する誠実さが伝わります。
総評:90点
現代社会における情報の扱いと影響力の偏りを、冷静かつ誠実に描いた一編。ショートショートとしてはやや長めですが、内容の濃さと構成力で読ませ切っています。読後に考えさせられる力を持った作品です。
以上です。
実際にショートショートを読んでもらえば分かりますが、多少、“接待している”感はあるものの、概ね納得のいく評価になっているのではないかと思われます(偶に的外れな事も書いていますけどね)。
長くなり過ぎるので載せませんでしたが、これ以外のショートショートの評価も問題ないように思えました。もちろん、多少のお世辞はありますが、小説投稿サイトのユーザー向けである点を考えるのなら、むしろ好ましいでしょう。
問題点としては、作品を読み込ませる度に評価が変わる事があるでしょうか。試しに別でチャットを立ち上げ、「なんでかいきなり取り調べを受ける羽目になりました」を、もう一度評価してもらったら、今度は93点でした(Microsoft Copilotではなく、もっと適したAIを用いれば、改善が見込めるかもしれません)。
小説家になろうは、2025年10月に「なろうチアーズプログラム」を始めると告知を行いました。これは“⼩説家になろうに投稿した作品から作者が収益を受け取ることができる仕組み”なのだそうです。
小説家になろうでは、2025年7月から“執筆応援フェア”を開催し、小説家になろうに投稿したユーザーのうち、毎月200名にAmazonギフトカードをプレゼントするという企画を実施しましたが、或いは運営はこれに十分な効果があったと判断したのかもしれません。
2024年9月の小説家になろうのアクセス数と2025年9月を比較すると、減少してはいますが、2024年は“小説家になろう”が登場する映画が公開された事に因る宣伝効果で、アクセス数が増えていただろう点を考慮するのなら、横ばいか微減に留まっています。じわじわと衰退し続けて来たなろうが少し持ち直したと観る事ができるでしょう。
小説家になろうには、今まで収益化のシステムがなかったので、仮に高アクセス数を出せたとしても出版化やコミカライズできなければ収益は得られませんでした。また商品化に成功後に打ち切りになってしまった作品についても同様です。作者が“金を稼ぐ事”にしか興味がないのであれば、作者にとってそれら作品は無価値で、更新を続ける意味はありません。
しかし、「なろうチアーズプログラム」を活用すれば、収益化が可能になるので、作者にとって価値が出て来るのです。しかもアクセス数が多ければ多いほど、収益が上がるシステムですから、執筆意欲だけじゃなく、作者の“宣伝を行う”モチベーションも上げる事ができます。
当然ながら、小説家になろうのアクセス数を増やす効果が期待できるでしょう。
ですが、その一方でデメリットもあります。
アクセス数を上げる為にはランキングに入るのが一番ですから、ポイントの価値がより高くなってしまいます。すると、ユーザーは更にポイントに拘った作品作りをするようになるでしょう。小説家になろうから多様性が減ってしまった最大の原因は、恐らく、ポイントが欲しいが為に、ユーザーがなろうでの人気ジャンルのみを創作するようになってしまった事です(しかも、内容をほぼそのまま拝借しているような作品も少なくなりません)。そして、なろうの人気ジャンルは、世間一般ではマイナー…… ニッチ層の需要しかありません。
つまり、「なろうチアーズプログラム」の効果は限定的ではないかと予想できます。
これを解決するには、ポイント以外の評価方法が必要です。そして、AIに評価してもらえばそれが実現できるのです。
もし「全てをAIに任せたくない」と言うのであれば、オリジナリティの評価だけでも加えるべきでしょう。その評価がランキングに何らかの影響を与えるシステムにするのです。例えば、作品のポイントにAIの評価を上乗せしたり、何パーセントか増えるシステムにすれば、AIの評価を気にし、オリジナリティの高い作品をユーザーが目指すようになるでしょう。そうすれば作品に多様性が生まれ、一般の人達もなろう作品を読んでくれるようになるかもしれません。
AIに小説を読み込ませ、評価させるのにどれくらいの負荷がかかるのかは分かりませんが、もし負荷がかかり過ぎるようならエントリー方式にし、数を制限すれば良いのです。その場合、AIからの評価を受けた作品のみ優遇されてしまうので、ランキング自体を別にするといったような工夫が必要になりますが、充分に実現は可能でしょう。
昨今、創作活動へのAIの活用が様々に試みられていますが、作品評価に活かせるようになれば、効率的に良作を抽出できるようになるかもしれません。
それが成熟し、停滞してしまったなら、今度は逆にAIが低評価した作品の中から“人間が面白い”と感じる作品を探すなんて試みにも価値が出て来るかもしれません。それにより、AIと人間の違いが明確化になり、AIの弱点を補えるようになるかもしれませんから。
因みに、恐らくですが、トップランカーでもなければ、ほとんど稼げないと思います。
「なろうチアーズプログラム」
なろう運営のマネタイズが終わりますからね。




