檻の中の人々──希望の有無
大山駅を超え、一方通行の道を進む。
ここはまだ都心だ。
暗がりを選ぶとはいえ、それでも明るい。
左右に歩行者用の空間があるが縁石はない。
一方通行にしては幅が広い。
そして、緩やかな下り坂が続いている。
だが、大通りの喧騒も、駅前の人のざわめきも既に遠い。
美咲、彩葉、俺の順で進む。
機械的に脇道での停止、警戒、進行にももう慣れた。
背後と左右を確認しつつ歩く。
「あっ……」
彩葉の声。
美咲が止まり、彩葉を見る。
彼女は道沿いのマンションを見ていた。
視線を追う。
マンションのベランダから顔が覗いている。
1人じゃない。
カーテンの隙間から覗く人も含めれば何人も見ている。
だが、誰も何も言わない。
食い入るような視線。
「彩葉、進もう」
俺の声にベランダを見たまま彩葉が答える。
「なんすか、珍獣を見ているみたいな顔っすよ」
「俺には縋りつきたいけど怖くて手が伸ばせないって感じに見えたけどな」
檻に入った動物はどっちなのか。
俺たちか、マンションの部屋に籠った人達か。
いずれにせよ、1,2週間で、死ぬ人たちだ。
役には立たない。
マンションを見ていた美咲が視線を戻す。
「進むわよ。声を掛けられたらアタシたちが危ないもの」
──ガシャン
自転車が倒れる音?
咄嗟に美咲を見る。握りこぶしで止まれの合図。
周囲を見る。音はどこから?
「避けて!」
美咲の小さな叫び。
「……っ」
彩葉の微かな呻き声。
強張った表情の彩葉の視線を追う。
動くものが目に入る。
──ゾンビ
俺目掛けて全速力で突進してくる。
「……っ!」
身体が固まった。
固まってしまった。
本日19時40分に続けて更新します!




