あーかい部! 69話 恐怖のキューブ
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
「くっ……、このっ!」
あさぎは1つの六面体と格闘していた。
「ぐぬぬ……、ぐぁぁあ!?」
「何してるの……?」
きはだ入室。
「あ、きはだ。」
「ん〜?その、机の上にあるカラフルな六面体は……、」
「ルービックキューブだよ、知らない?」
「知ってるよぉ?……はは〜ん、苦戦しているようだねぇ。」
「これがなかなか難しくてさぁ……。きはだ揃えられる?」
「どぉれ貸してみい?」
「お、頼もしいね。」
きはだはあさぎからルービックキューブを受け取ると、
「3×3の六面かぁ。ふむふむ……なるほどぉ……、
6面を眺めて
「……よし。」
再び机の上に置き直した。
「どう、できそう……!?」
「無理。」
「えぇぇ!?あんなに得意そうな雰囲気醸しておいて?」
「うむ。」
「せめてちょっと弄ってみるとかさあ?」
「見ればわかる、無理なやつだよぉ。」
「見ただけでわかるの?」
「うん。だって赤が10マスあるもん。」
「え"……!?」
あさぎはルービックキューブをふんだくって、赤いマスを数え上げた。
「ほ、ん、と、う、だ……。」
「まったく、とんだ不良品だねぇ。」
「なんか一気にバカらしくなってきた……。」
「ただのキューブだもんねぇ。」
「ルービックとれちゃったかぁ。」
「『ルービックのキューブ』って言うと特別感……!」
「そう?」
「さあ、その『ルービックのキューブ』をよこすのだあさぎちゃん……!」
「なんか一気に秘宝感出てきた……!?」
「でしょでしょ〜。」
「あ、じゃあこういうのは……!」
「おん?」
「テキトーに2、3回回して……、変身!」
「なにぃ!?貴様、キューブの……!?」
「……何やってんの?」
白ちゃん入室。
「あ、白ちゃん先生。」
「『ルービックのキューブ』で遊んでたぁ〜。」
「『ルービックのキューブ』?……ああ、ルービックキューブね。なんで『の』つけてるの?」
「その方が特別感でないですか?」
「不良品なのに?」
「そうするしかこの子に存在意義を見出せなかったんだよぉ……。」
「白ちゃん先生。供養だと思って、この子で遊んであげてくれませんか?」
「そうね……。玩具として生まれてきた以上、それがせめてもの手向けよね。」
白ちゃんはルービックキューブを手に取ると、
「……変し
「「きっっつ……。」」
「おいこら。」
供養完了。
「まったく、人にやらせておいて失礼なんだから……。」
「これ、燃えるゴミでいいのかな?」
「ついさっきまで供養とかこの子とか言ってた人のセリフとは思えないわね。」
「切り替えの速さは大事ですぜ白ちゃん。」
「今の子たちってドライなのね……。」
「やっぱり人形寺とかに寄贈するのかなぁ……?」
「こういうのは丁重に扱わないと化けて出るからねぇ。」
「化けて出たところで六面体じゃない……。」
「わかんないよぉ?捨てたはずのルービックキューブが次の日枕元に……!?」
「なんか、あんまり怖くないわね……。」
「じゃあ白ちゃん先生……。お風呂上がり、捨てたはずのルービックキューブが床に転がっててそれを踏んじゃうとかは……!?」
「それはもう別の怖さなのよ。」
「じゃあじゃあ、夜な夜な捨てたはずのルービックキューブが回る音が耳元で……!
「ただただ不快なだけじゃない……。」
「なんか、ルービックキューブで恐怖感じるの難しいですね……。」
「ああいうのは人の形をしたものが意思を持つから怖いのよ。」
「わかった!じゃあ、捨てたはずのルービックキューブが夜な夜な人形に変形して……、
「それはそれで売れそうね。」
「集めて合体するやつだぁ〜。」
「くっ、怖くならない……!」
「2人は私を怖がらせたいの?」
「じゃあ……!ルービックキューブを捨てると、夢にルービックさんが出てきて延々と面を揃えるコツを……!
「ただの販促じゃない。」
「くそぅ!あさぎちゃん頼んだ!」
「うん。捨てたはずのルービックキューブが枕元に
「それさっきと同じじゃない?
「……と思ったらルービックさんが添い寝を……!
「シンプルに嫌なやつね……。」
「きはだ……!」
「おうよ!」
「そのリレー、意味ある?」
「夜な夜な、捨てたはずのルービックキューブを持って、赤い格好に白髭を生やしたルービックさんが……!
「メリークリスマス……ッ!!」
「くっ、やりますなぁ白ちゃん。」
「後半だいたい営業じゃない。」
「今こうしてわたし達がルービックキューブの話で盛り上がれるのも、ルービックさんの涙ぐましい営業努力の賜物なんだねぇ……。」
「ありがとう、ルービックさん……!」
「たぶん違うと思うわよ?」
あーかい部!(4)
きはだ:投稿〜!
白ちゃん:ルービックさん?
ひいろ:ルービックキューブの発明者がどうかしたのか?
きはだ:おお、詳しいねえひいろちゃん
ひいろ:まあ、ルービックさんのキューブだからな
きはだ:そこは『ルービックのキューブ』で
ひいろ:なんでだ?
白ちゃん:その方が特別感があるみたいよ
ひいろ:よくわからないから読んでくる
ひいろ:あさぎの変身見たかったな
白ちゃん:私のは!?
ひいろ:見るに耐えない
きはだ:草ァ!
あさぎ:化けて出ると怖いから小分けにしてちょっとずつ捨てることにした
あさぎ:[画像を送信しました]
ひいろ:中身こうなってるんだな
あさぎ:明日はコアを捨てて来る
きはだ:コアがある限り何度でも復活するからねぇ
白ちゃん:ゲームのボスキャラじゃないんだから
ひいろ:こうやって見ると弱点感あるな、コア
きはだ:秘部だからねぇ
白ちゃん:おい
あさぎ:え、待ってなんで枕元に……!?
あさぎ:[画像を送信しました]
きはだ:ルービックキューブあって草ァ!
ひいろ:しかも未開封の新品じゃないか
あさぎ:どうしよう、このままだと赤い格好して白髭生やしたルービックさんに添い寝しながら実演販売されちゃうんだ……
白ちゃん:一昔前のおもちゃ屋かっ!
きはだ:おもちゃ屋さんは添い寝しないんだよなぁ
白ちゃん:あ
ひいろ:クリスマスプレゼント……じゃないよな?
白ちゃん:となるとあの愚妹の仕業ね
あさぎ:聞いて来ます
あさぎ:モーラさんが不良品掴ませたお詫びにって
ひいろ:不良品って知ってて渡したんだな
白ちゃん:とんでもないやつね
きはだ:おかげでネタには困らなかったし
あさぎ:サイコロステーキ焼いてくれたし
ひいろ:羨ましい
きはだ:モーラさん、狙ってやがったなぁ?
白ちゃん:平日からサイコロステーキなんて、けしからんやつね
あさぎ:まあまあそんなに『角』を立てずに
白ちゃん:だれが上手いこと言えと