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一般男子高校生が魔法少女になって魔物を倒す日常  作者: 大崎 狂花


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第十話 免許更新①

瑠璃はセカンド会社支部の事務所へと足を運んでいた。今日はセカンドの免許更新の日である。瑠璃もそのセカンド免許を更新するためにここへ来たのである。


「面倒だけど、やらなきゃいけないからな」


瑠璃が免許更新のために受けなければならないのは、実技試験と簡単なペーパーテストのみである。


ペーパーテストも、まだ学生の身ということもあって、内容は学校とかでやる普通の期末テストとかと同じようなものになっている。これは他の学生たちも同じである。学生と兼ねてセカンドをやるような人たちは、その結果学力が下がってしまったら大変なのでそれを防ぐ意味で免許更新の試験にこういうペーパーテストを組み込んでいるのである。


セカンドには階級があって、FからSの7つのクラスに分かれている。新しくセカンドの免許を取ろうとする時や、F級やE級で免許更新をする時にはそれこそハンター試験とかぐらいの厳しさはあるが(死者は流石に出ない)、上に上がれば上がるほどそこまで面倒にはならなくなる。


瑠璃は今C級で、一応上級セカンドなわけだから、面倒面倒とは言ってもそこまで面倒なわけではない。ちなみに、瑠璃は実力的にはA級、それこそS級くらいあるんじゃないかと言われているが、魔物を倒した数が足りないため、まだC級なのである。


瑠璃がガーッと自動ドアを開けてセカンド事務所の中へ入ると、突き刺すような視線を感じた。


(・・・・・・人が多いな)


普段はそこまででもないこの事務所が人でごった返していた。


(ああ、そうか。今日はセカンドの免許試験があるんだ。しまったな、今日じゃなくて一日ずらすべきだったか・・・・・・・)


今日は免許更新試験も実施されるが、それと同時に新しくセカンドになる人のための免許試験も実施される日だったのである。


(知らない顔が多いな)


緊張でピリピリしてるところへ、可愛らしいワンピースの、どう見てもただの女子小学生が入ってきたらそれはもう注目するだろう。ましてこの事務所に初めて来るような何も知らない人たちばかりなので余計そうなのであろう。もちろん、免許更新に来ただけの勝手知ったる人たちは瑠璃の方をチラと見ただけでそこまで注目していなかった。


まあそんな状況だったわけだから─────


「おうおうおうおう、なんでこんなところに子供がいるんだ?」


「ここはガキの来るとこじゃねえんだぜ?帰りな!ガキ!」


こうして絡まれるのも当然だということである。


(こりゃまたコテコテの奴らが来たな・・・・・・)


「えーっと・・・・・・お兄ちゃんたち、だれ?」


「なんだ、俺らが誰だか知らねえのかよ!」


「まあまあ仕方ねえよ、コイツどう見たってお子ちゃまだからな」


絡んできた男2人は自分たちのことを指してこう言った。


「俺らは山本兄弟!!」


「戦えば天下に並ぶ者無し!人呼んで『竜殺しの山本兄弟』だぜ!!」


「・・・・・・竜殺したことあるの?」


「いや?なんかトカゲっぽい奴なら倒したけど・・・・・・」


「竜そのものを殺したことはねえな。竜ってドラゴンだろ?ドラゴンなんて流石の俺たちでも倒せるわけねえじゃねえか!人間の倒すもんじゃねえよあんなん!」


(それ倒した奴が目の前にいるんですけど・・・・・・)


瑠璃は心の中で苦笑した。


(いや、まあ俺が倒した奴もドラゴンの中ではそこまで強い方じゃなかったけど・・・・・・それにしても、『竜殺し』を名乗っときながら俺のことを知らないなんて、コイツら本当に大丈夫か?)


「とにかくよお、てめえみてえなガキが来ていいとこじゃねえんだよここは!!」


「ただでさえ俺たち試験の前で気が立ってんだ!!とっとと失せな!!」


(うーん弱ったなあ・・・・・・。こんなベタなチンピラにまさか絡まれるとは思わなかった。というか、何で誰も止めに来ないんだ?受付さんとかは・・・・・・)


瑠璃は受付を見た。この事務所内での騒動は見過ごせないはずだ・・・・・・。


「ふふふ・・・・・・」


受付は笑っていた。まさかの瑠璃が絡まれていることが面白かったらしい。


(おいおい受付、ちゃんと仕事しろよ・・・・・・)


瑠璃が心の中でちょっと呆れていると、男のうちの片割れが大声を出した。


「おいガキ!聞いてんのか!!」


「え?あ、ごめんごめん。聞いてなかった」


「てめえ・・・・・・!いい加減にしろ!!」


キレた自称竜殺し兄弟の片割れがついに手を上げ、瑠璃に殴りかかった。ちなみに、これは現実だと普通に犯罪なのでやめましょう。


男のパンチはセカンドを志望しているだけあって、なかなかに鋭く速かった。しかし────


「よいしょー」


瑠璃は軽々しく避けた。


「ん!?」


「おい弟!何やってんだよ!こんなガキに避けられるなんて─────」


と、男たちが瑠璃の方を見やると、そこには誰もいなかった。


「・・・・・・は?」


「え?どこいった?さっきまでここにいたよな?え、夢?」


男たちがキョロキョロと辺りを見渡していると、後ろから瑠璃の声が聞こえた。


「どこ見てるの?」


振り返ると、瑠璃いつの間にかその2人の後ろに来ていた。


「え!?」


「いつの間に後ろに!?」


瑠璃は笑顔で手を振って言った。


「私、忙しいからお兄ちゃんたちと遊んでられないんだ。だから他の人に遊んでもらってね。じゃあねー!」


(ふー、これで何とか乗り切ったかな?)


瑠璃は心の中で胸を撫で下ろすと、手続きをしに受付へ行くのであった。


・・・・・・・


(さーてと、手続きも済んだことだし、あとは呼ばれるまで待つとするかな・・・・・・)


瑠璃がとりあえず、受付の前にある待機用のソファに座ろうとすると、また声をかけられた。


「ねえ君?大丈夫?」


振り返ると、黒髪長髪の、優しそうな顔をした二十代くらいの女性がいた。屈んで、瑠璃と視線を合わせようとしてくれていることから見ても、優しい人物なのだということがわかる。


「えーっと・・・・・・?」


「ああごめんね!えと、さっき男の人2人に絡まれてたみたいだから心配になって・・・・・・」


「あー」


「大丈夫だった?かなり怖かったんじゃないかな・・・・・・?でも大丈夫だよ!あの2人はさっき私がボコボコにしといたからね!!」


「え・・・・・・?ボコボコ・・・・・・?」


彼女が指差した方を見ると、さっき絡んできた男2人が文字通りボコボコになって隅の方でしゅんとしていた。優しそうな見かけと違い。なかなか激しい性格のようである。


「・・・・・・」


「な、なに?」


彼女は瑠璃のことをじっと見つめた。瑠璃が困惑していると、彼女はぱっと顔をデレデレにして瑠璃の頭をめちゃくちゃに撫でくり始めた。


「こーんなかわいい子に意地悪するなんて、馬鹿な2人だよねー」


「う、うん・・・・・・?」


「それにしてもかわいいねー!飴ちゃんあげよっか!?」


「あ、ありがとう・・・・・・」


少し変わった奴だな・・・・・・と瑠璃は思った。


「ところで、君はこんなところで何してるの?親御さんが免許更新に来て、それについて来た・・・・・・とかなのかな?」


(違うけど・・・・・・)


「うん、そうだよ」


「じゃあ、待ってる間、私とここで話そっか?私は免許取得の試験に来てて、時間が来るまで待ってるんだー」


「へー、そうなんだ」


そういうことで、瑠璃はセカンド志望の女性と話をしながら待つことになった。


・・・・・・


瑠璃と女性はしばらくの間楽しく話した。というか、女性は瑠璃が何を話してもデレデレしていた。


そして先に瑠璃の時間が来た。セカンド事務所の担当職員が瑠璃を呼び出しに来た。


「ラピス様、時間です。C級セカンド免許更新試験の準備が整いました」


「ああ、ありがと」


女性はそのやり取りを見て困惑していた。


「え?C級?え?ラピスって・・・・・・え゛?」


瑠璃は待機用ベンチからぴょんと飛び降りると、彼女へ向かって小さく手を振りながら言った。


「じゃあね。また機会があれば会おうよ」


瑠璃はそう言って、担当職員の後をついていく。


(なんか、強キャラ幼女みたいなムーブしちゃったな・・・・・・)


瑠璃は歩きながらそう思った。

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