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【連載版】義姉の身代わりで恐怖の公爵に嫁いだ娘が男前すぎる~身代わり娘の英雄譚~  作者: りったん
第一章 超ハイスペックイケメン女子(超鈍感) VS 恐れられる美貌の公爵(ただし常識人)、ファイッ!!
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4話 身代わりに来た娘がシゴデキ過ぎる 後編

 リカルダが驚きの洗濯術を披露しておばちゃんたちからアイドルとしてもてはやされて一週間。

 ロトランダ城内は明るくなり、使用人たちが活気づいている。


 用もないのに洗濯房に立ち入るメイドたち、肖像画を描いて売りさばく侍女……これ以上、リカルダのシンパを増やしてはならない。


 こうなったら縫製房へぶち込んでリカルダが逃げ出すのを狙おう。


 縫製房……聞こえはいいが、騎士団が討伐したモンスターの加工場である。毒蛇の森に生息するモンスターは凶悪ゆえに最高級の素材だ。ロトランダ製の武具は名だたる冒険者や王侯貴族から常にひっぱりダコ。それを支えるのは優秀な職人たちだ。

 しかしいくら腕が良くても強靭な精神力がないとやっていけない。

 とれたてほやほやの凶悪モンスターが運び込まれるので騎士見習いでも逃げ出すこともあるのだ。


(くそっ、こんな形で出会いたくなかった!!)

 監視員の報告書をみながらエレディンは悔しがる。

 こういう関係でなければ最側近にしたいくらい優秀なのだ。


 ■


 リカルダが縫製房に移動になると聞いて洗濯房のオバチャンたちはむせび泣いた。別れの辛さもさることながら、こんないい子がいびられやしないかと心配したのだ。

 過保護なおばちゃんたちは団結して縫製房へ向かう。

「ロブト!!いいかい!! うちのリカルダを虐めたらタダじゃおかないからね!!」

「おいおい。騎士見習いですらすぐに逃げ出すんだぜ?俺が何かする出番はねえさ」

「ほんとうだね?嘘ついたら奥さんに言いつけるからね!!」

「おうともよ。男に二言はねえ」

 そうロブトは答えたのだが、彼がリカルダを『ファルディスから来た娘』と認識することはなかった。

 というか、やってきたリカルダを男前の新入りと勘違いして扱いた。

「親方、こんな感じですか」

「おう!!すごいな。もうそれができるようになったか!!天才だな」

「昔取った杵柄ですよ。傭兵団にいたときに少々」

「なるほどな。どうりでタダモンじゃねえと思ったぜ」

 ロブトは納得する。


(まさかこんな新入りが来るとはなあ。縫製房の未来は明るいぜ)

 ロブトはリカルダの雄々しい姿を見て惚れ惚れした。

 

 長い金髪を頭の後ろで結び、黒のタンクトップと灰色の作業ズボン姿が実に似合う。筋骨隆々というわけではないが、細身ながらも鍛えられた体は頼もしい。さらには最新の工具などの情報や薬液も教えてくれて作業効率が大幅アップし、ロブトは思わずにっこり笑顔になる。


 ちなみに、ロブトの娘、エミリーがリカルダ目当てにちょくちょく差し入れに来るようになった。

「あ、あのリカルダさん。これ!! 私が焼いてきました!!」

 籠の中には美味しそうな焼き菓子がどっさりと。男の子ならたくさん食べるわよねと母と共に作ったのだ。

「わあ、すごいな。ありがとう。休憩の時に頂くよ」

 リカルダは爽やかな微笑を浮かべて受け取る。超ハイスペックだが同時に鈍感でもあるリカルダは何も気づかず喜んで受け取る。誰が呼んだかリカルダの綽名は初恋ハンターである。

  

 そして誤解が熟成されて醗酵した結果、ロブトはエレディンの執務室に土下座しにいくことになった。



「公爵様!!お願いです!!お願いです!!!」

 熊のような巨体を丸め、男泣きに泣いてロブトは懇願する。

「……何か嫌な予感がするが、とりあえず聞こうか」

  エレディンは眉間に指を押しあてた。

「公爵様!!リカルダを追い出すのをやめて下せえ!!」

 大粒の涙をぽろぽろと溢しながらロブトが言った。

 エレディンは冷めた顔になり、(ロブトお前もか)と心の中で突っ込む。

 そんなエレディンの心中を知らず、ロブトは必死にリカルダのいい所を力説した。


「アイツは本当にいい奴なんです!!腕もいいし博識で性格もいいんです!!」

「そうだな」

「アイツほどできた人間を見たことありません!!」

「そうだろうな」

「公爵様!! そこまでわかっているならなぜ追い出そうとなさるんですか!!」

「それはアイツが借金のカタに来た娘だからだ」

 エレディンが淡々と言った。


 ロブトの目が点になる。

「へ?ファルディスは娘の身代わりに息子を寄こしたんですか?」

「アイツは女だ」

 エレディンはため息を吐くついでに答えた。


 ロブトは固まった。

 暫くしてぼそりと言う。

「……エミリーがリカルダにゾッコンなんですが」

「まあ、超絶ハイスペックなイケメンだからな」

「……ウチのカミさんも最高の息子ができるとウッキウキなんですが」

「どこからどうみても好青年だからな」


「……」

 黙り込むロブトをエレディンは責められない。

 勘違いしても仕方がないなと思ってしまうあたり、エレディンもだいぶリカルダに脳を焼かれている。


 リカルダが来てからというもの城内は活気づくし、効率はアップするしでいいことづくめである。さらには商務官からランドリーサービス事業を立ち上げる話まで出ているほどだ。


 しかしこのままだとエレディンを待つのは結婚の二文字。

 

(くそっ……どうやって追い出せばいいんだ……)


 頭脳明晰才色兼備、決断力に優れた若き当主エレディンだが、彼の悩みは解決しそうになかった。


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― 新着の感想 ―
ご自身の色恋になるとお手上げなエレディン様やっぱり◯タリ◯殿下みが(笑) しごできスーパーハンサムのリカルダさんがビジュアル化されて動く日を楽しみに応援して待ちます、声はやはりジェンヌトップスター系か…
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