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【連載版】義姉の身代わりで恐怖の公爵に嫁いだ娘が男前すぎる~身代わり娘の英雄譚~  作者: りったん
第一章 超ハイスペックイケメン女子(超鈍感) VS 恐れられる美貌の公爵(ただし常識人)、ファイッ!!
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23話 身代わり娘が身代わりでなくなるとき

  北の大地ロトランダ。

 そこでエレディンはファルディスから送られた書類とにらめっこしていた。

 ファルディスから送られた融資契約書である。

 かなりの額だった。

「おい。今の奴らならすぐに返せるだろう?」

「無理ですね」

 補佐官の一人がきっぱりと言った。

 財政立て直し中ということは潤沢に資金があるわけではなく、コゲつく可能性もある。


 つまり、融資契約書に書いている『返済できなければ毒蛇公爵と結婚』のただし書きが生きてくるのだ。


 エレディンはあまりのできごとに失神した。

 そして再び目覚めたエレディンは部屋中に響く大声で怒鳴った。


「あいつらはなにを考えているんだああああ!!!!!」


 人は理解を超える状況に落ちると錯乱する。いくら北の悪魔と評される彼も人の子、規格外の人間相手にはパニックにならざるを得なかった。


「そもそもロトランダ銀行もなぜこれを許したんだ!!」

 エレディンは怒る。

 普通に考えてこんな莫大な金額を借りられるのはおかしい。


「ファルディス侯爵家はフリーパスですよ。もともと事業を奪うつもりでしたので青天井で融資できます」

 補佐官が説明する。


「……そ、そうだったな。くそっ!! 待てよ?! 融資契約書に結婚の但し書きがある書類がまだ出回っているのか?! リカルダの件があったときに停止させた気がするが!!」


「大丈夫です!!他の契約書はすべて新しいものになっております!!ファルディス家は追加融資なので契約内容はそのままです!!」


「なんだと!? クソッ!!脅すために書いた但し書きなのにむしろ俺が脅されている気分になる!!!! ファルディスは一体何を考えているんだ!!?あいつらは俺とリカルダを結婚させたいのか!!!!!」

「そのようです」

 補佐官の言葉にエレディンはずっこけた。

「なぜだ!!? 人が恐れる毒蛇公爵だぞ!! ファルディスの人間はリカルダを疎んじているのか!!?」

「いえまさか。ファルディス家はリカルダ殿大好きですが、リカルダ殿がロトランダを恋しがっているので応援している模様です」

 エレディンの絶叫に補佐官がクールに答える。

 しかし、補佐官の言葉はエレディンにとってインパクトのあるものだった。

「恋しがっている……?アイツが……?」

「はい」



 エレディンは黙り込んだ。


 まさかの答えだ。


 そして、恐ろしいことに嬉しいとさえ感じる自分がいる。


 いくら考えてもコレを回避する手段は思いつかず……というより、本気で回避したいと思っていないのだ。


(くそ……。どうしたらいいんだ……)

 探せば手があるかもしれないが、リカルダに会いたい気持ちが膨れ上がって止まらない。


 とうとうエレディンは白旗を上げた。


 完全敗北である。


「……俺の負けだ。ファルディスの意向通りにリカルダを迎える。準備をしろ」

 敗北と言いつつもその顔は晴れやかだ。

 人間素直が一番である。


 ■



 こうして、リカルダがファルディスに戻って一か月とと立たないうちに再び借金のカタとしてリカルダがロトランダに来た。


 しかし、今度のリカルダは凛々しい貴公子ではなく。ガルディアたちが飾り立てた超美女であった。リカルダの思う相手が毒蛇公爵と知り、確実に惚れさせようと画策したのである。もともとエレディンが惚れているとも知らずに。


 そんな劇的ビフォーアフター。超絶イケメンが超絶美女へ。


 さすがのエレディンも驚きを隠せない。

 例えて言うなら今まで超イケメンと思っていた男友達が女だったくらい衝撃だ。元婚約者だけれども頭が追い付かない。



 しかし、リカルダが口を開くと懐かしい声が響いた。

 「お元気でしたか」

 英雄から淑女へと見た目を変えたがリカルダの笑顔は変わらず、夏空のように明るくて清々しい。


 エレディンの強張った体が解されていく。

 これはもう認めざるを得ない。


 エレディンはリカルダなしで生きていけないと。

「……お前が来たから元気になった」


「それは……良かったです」

 リカルダが微笑む。


 エレディンが差し出した手にリカルダが自分の指をそっとふれる。


 一年弱、一緒に過ごしていて初めてお互いが触れた瞬間だった。


「今度はもう婚約の解消ができないが……本当に俺でいいのか」

「閣下だからこそ私はここに来ました。これからよろしくお願いしますね」


 なお、超美女リカルダの降臨にロトランダ場内は大慌てだった。

「急いでお部屋をレディ用に変えて!!剣立てとか甲冑オブジェは倉庫に!!」

 男性用の衣料などは撤去され、代わりにピアノやハープと言った優雅な楽器、そして歴代の公爵夫人のために揃えられた衣装や宝飾品が調度品に収められたのだった。


 こののち、二人はロトランダ領民から祝福されて盛大な結婚式を挙げる。

 凛々しい公爵の側に立つ女神のような公爵夫人に人々は大興奮するのだが、ロトランダのトップアイドル、騎士リカルダと同一人物であることは誰一人気付かないのだった。


fin




長い間お付き合いいただきありがとうございました。

ここまでこれたのは応援して下さった皆様のお陰です。

コメントはとても励みになりました!!本当にありがとうございます!!


オマケの話など、結婚後の話とかちょこちょこ投下して行きますので、何かの折にお立ち寄り頂けると幸いです。

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― 新着の感想 ―
おめでとうございます!!!米が高くて撒けないですが紙吹雪作ります! 良かった良かったエレディン閣下もリカルダ様も幸せになって全領土の幸福度が爆上がり!
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