表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】義姉の身代わりで恐怖の公爵に嫁いだ娘が男前すぎる~身代わり娘の英雄譚~  作者: りったん
第一章 超ハイスペックイケメン女子(超鈍感) VS 恐れられる美貌の公爵(ただし常識人)、ファイッ!!
18/40

16話 身代わりに嫁がせた娘を助けるために 中編2

 ダリオンの邸宅から徒歩一分、ちょっと古いがおしゃれな煉瓦造りがロトランダの密偵の隠れ家である。

 偶然ではなく、予めヘルムントが用意したものだ。

 「今一番勢いのある商会が怪しいな。ファーテル商会没落でうまい汁を吸う奴が犯人だ。すべて調べ上げてくれ。弱みになりそうなものを含めて」

 超優秀な密偵はその日のうちにダリオンのヅラのメーカーまで調べ上げ、エレディンに報告した。


「ほう。こいつか……こいつが俺の平穏な生活をかき乱した元凶か!!!」

 

 ダリオンが余計な真似をしなければ商店街で推しグッズを目にすることもなかったのだ。もしこれでハゲたらこのヅラメーカーにお世話になっていたかもしれない。ひどい話だ。


「ふーむ。違法賭博に産地偽装、偽化粧品販売に脱税……小悪党なら小悪党らしくそこで満足しておけばいいものを、俺の顧客に手を出すとはいい度胸だ!!!」

 エレディンはダリオンを社会的に抹殺することに決めた。

 切り札、皇帝を動かしたのである。



 そのため、朝から各省庁は大騒ぎだった。

「バーレング公爵邸を調査? なんだって急に」

「……なんでも毒蛇公爵がバーレング侯爵家を社会的に消滅させるんだってよ」

「ヒエエエ!!!! 毒蛇公爵がからんでるのかよおおお!!」

 役人たちは毒蛇公爵の恐怖に怯えながら一生懸命仕事をした。


 そして関連部署のトップたちは難しい顔で顔を突き合わす。

「毒蛇公爵の機嫌を損ねないようにしないといけません!!」

「さようさよう」

「ここは最強のチームで家宅捜査にあたり、確実に仕留めましょう!!」

 こうして結成されたのが、財務監査院……わかりやすくいうと税務署員のトップエリート集団である。

 たとえ相手が大物マフィアでも、こいつらに目を付けられれば一環の終わりなのだ。



 何も知らないダリオンは、突然の訪問者にびっくり仰天した。後ろめたいことがなければ何でもないのだが、ダリオンは真っ黒黒である。屋敷には大量の隠し財産と裏帳簿があり、見つかれば没収どころか追徴金……ペナルティが課されるのだ。


 お偉方軍団が使う切り札は監正官ジルヴェスター・リーデルシュタイン率いる、通称『ハゲタカ』である。仕事の鬼というかただのワーカーホリック集団であるが、とにかくねちっこくて粘り強くて厄介で奴らが通った後はぺんぺん草すら生えないのだ。



「こちらが礼状です。家宅捜査させていただきますね」

 クールガイの神経質そうな眼鏡男、ジルヴェスターがズカズカと乗り込み、部下たちがそれに続く。 


 ダリオンは真っ青だ。

 なにしろ、中には見られたくないものがわんさかある。


「ちょっちょっと!!こ、困ります困ります。急に来るなんて!!私は侯爵ですよ!!!」

 ダリオンが大慌てでジルヴェスターの前に出て通せんぼをする。

 大股で両手を大きく広げた姿はまるでカニだ。


「令状があるのでノープロブレムです」

「問題ありすぎるうう!!!!! なんでカーペット剥がすの!? ちょっとトンカチで置物を叩かないで!!!? やめてええ!!!! 」

 ジルヴェスターはカーペットをひっぺ剥がしたり、トンカチで色んな所を叩いていく。無表情で黙々とやっているのがさらに怖い。


「ジルヴェスターさま。こっちに隠し扉が」

「本の中に札束が、セコイですねえ」

「壺の中に金塊が山ほど」 

 優秀な部下たちが捜査犬張りの嗅覚で次々と見つけていき、ダリオンは真っ青で冷や汗でびっしょりである。まるで濡れねずみだ。


 逆にジルヴェスターのテンションが上がっていく。

「多くの現場をこなしましたがここまでセコイのは初めてですよ。いやあ、やりがいがありますなあ!!!」

 仕事の鬼、言い換えれば仕事大好きなジルヴェスターの顔はキラッキラに輝いていた。


「わわ、いや!!その!!」

「おお、このトイレブラシの柄は金ですね!! 安全資産ですから人気ありますよねえ。他にはどこに隠しているかなあ~」

 ウキウキした様子で次の部屋次の部屋と調べて回る。まるで推理が大好きな名探偵のようである。


 陽がくれる頃、すべてのチェックが終わった。

 ジルヴェスターの顔は元気ハツラツ、そしてダリオンは魂が抜けたようにへたり込んでいた。


「それではまた査問会でお会いしましょう!!追徴金がたっぷり取られると思いますのでお覚悟を!!ハッハハー!!」

 来る時とは真逆にテンション高くしてジルヴェスターは帰っていった。 


 たった半日で大切に隠してきたマイハニー(金)を見つけられ、ダリオンの心はズタボロである。今までどれだけの思いでこれをためてきただろうか。


 賭博場のために作ったイカサマ装置、ワインの産地を偽装するためにどうすればそれっぽく見えるかを研究した日々、商売敵の妨害工作を必死に考えた夜……ダリオンは苦労して金を貯めたのだ。


 奪われた恋人たち(金)を思って涙を流すダリオンは拳をぎゅっと握った。

「く……こんなことで負けていられない!! 必ず君たちを取り戻す!! ファーテル商会さえ手に入れればもっと増やすことも可能!!!」


 ダリオンは立ち上がった。愛する物たちのために!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もうすぐヅラの代わりにロリフワヘッドドレスとマシュマロボディサイズドレスと激重羽根着用だぞこのやろう!恥ずか死だ!(わりと優しいおしおき)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ