13話 身代わりに来た娘が最高すぎる 後編
昨日、12話を間違えて11話と同じ内容で投稿してしまいました。
本当に申し訳ございません……!!
遅れて登場した真打をまだお読みでない方は、 『< 前へ 』ボタンでお戻りくださいませ。
よろしいですか?
リカルダが騎士になって一か月、その間、着実にファンを増やしていった。本人はもちろん無意識である。
「キャアア!!リカルダ様がこっち向いたわああ!!!」
「わたくしに微笑みかけて下さったのよぉぉ!!!」
演武場の開放日は大挙としてご婦人方が押し寄せ、黄色い声の声援が響き渡る。
肖像画はバンバン売れ、姿絵をまとめた本は高値で取引された。エリオットのファンクラブは解体し、そのままリカルダのファンクラブへなだれ込んだ。
「帝都のご令嬢でさえなければなあ……」
ホフドンは嘆く。
「騎士団創設以来の逸材ですよね」
エリオットがしみじみとこぼす。
ちゃらんぽらんな軽薄色男が劇的のビフォーアフター、落ち着いた物憂げな美青年に変貌をとげていた。そして色恋沙汰とは無縁の僧侶の如く清らかな生活を送っている。
変わったのはエリオットだけではない。平民出身の荒くれ者で有名な第三番隊長ヴォルフもリカルダの崇拝者になった。
「リカルダ。三番隊の隊長になってくれ。俺も部下共もお前以外考えられねえ」
「そこまで言ってくれて感謝するよ。だが、私は婚約中でね。ここにずっといられるかもわからないんだ」
「……何か理由があるのか」
「まあね」
リカルダが言葉を濁したのは話すと長すぎるだけだったのだが、ヴォルフは深読みした。さらにヴォルフの手下の暴走が話をややこしくさせた。
「隊長、知り合いの下女から聞いたんですが、帝都のご令嬢から借金のカタに結婚を強いられてるそうですぜ」
「俺も聞いた!!許せねえですよ!! カネで結婚を強制するなんて人間じゃねえ!!」
手下どもは口々に憤慨するが、回り回って己の主君を貶しているのだが彼らは気付いていない。リカルダの噂は尾ひれどころか違った方向に進化していた。リカルダを取り巻く「結婚」「借金のカタ」「ご令嬢」のキーワードは正しいが、誰もがリカルダとご令嬢を結び付けることはなかったのだ。
義憤に燃えるヴォルフはそのまま暴走した。
「団長!! 聞きましたよ。帝都のご令嬢があいつを気に入って借金のカタに結婚を迫ってるって!! どうして止めないんですか!!」
「……なにがどうなってそうなったんだ」
ホフドンは変な顔をした。
借金のカタに結婚を迫っているのは自分たちの主君である。ホフドンは丁寧に説明した。
しかしヴォルフは割と頑固な男だった。
「団長!! アイツが女なわけナイッスよ!! 剣も格闘も俺より上!! ドラゴンを下して迷宮も一人で踏破できるアイツは誰よりも男らしいんだ!!」
「まあ、そう思うよな……」
リカルダの功績はよく知って居る。本当の騎士なら褒めたたえるべきだが、リカルダの素性はファルディス侯爵家のお嬢様なのだ。
しかも追い出す予定と来ている。
ホフドンもリカルダの居ない騎士団など考えられない。
勇猛果敢、礼儀正しくて英姿颯爽ときている。
喉から手が出るほど欲しい人材だ。
そしてリカルダが来てからエレディンは健康になっている。それはホフドンだけではなく、身近な使用人や家臣たちも認識している事実だ。
ダメでもともと、ホフドンはエレディンにリカルダの引き留めを勧めてみた。
「公爵様、リカルダ殿を失うのはロトランダの損失です。追い出さず、このままロトランダにいて頂くわけにはいきませんか」
「ダメだ。このままいくと俺はあいつと結婚する羽目になる」
エレディンは即答した。
真面目なホフドンは引き下がったが、そうはいかないのが古だぬき連合、家臣たちだ。
彼らはリカルダが居なくなる未来を憂い、計画変更を打診し始めた。
リカルダ追い出し作戦改め、結婚計画である。
「伴侶としてリカルダ様ほどの御仁はおりません!!」
「ファルディスの借金くらいわたしどもで払いますので!!」
家臣に詰め寄られ、騎士団に懇願され、使用人たちに無言で泣かれる。
エレディンはダンと机を叩いた。
「俺を説得しようとしても無駄だ!! 言葉をたがえる気はない!! ファルディスが借金を返済次第、リカルダを追い出す!!」
エレディンはそう言い放ち、ヘルムントに吉報はまだかと催促するのだった。