Cランク
6層から引き返して5層でオークを狩った。しかしここからが問題だ。
「これを持っていくのかい?とんでもなく重いんだけど」
「あの、なにかソリみたいな物があれば」
「そんな物は無い。お前が持ち上げて運ぶんだ」
「そ、そんなぁ」
「情けない顔をするな」
この為に【力】を取っておいたんだ。デイガンを励ますように肩に触れて【力】青珠を3つ埋め込んだ。
「ほら、足の方を持ち上げてみろ」
「うぅ、い、いきます!セイッ!」
デイガンが持ち上げるとオークの尻まで浮き上がった。これなら二人で運べそうだな。
「うわぁ!すごいです!何故か力が溢れてくるみたいです!」
「ふふふ。そうだろう、では頭の方は俺が」
大丈夫な様なので自分にも【力】を埋め込んだ。こうして行けばすぐに世界最強になれそうだなぁおい!
「いくぞぉ、フン!フン!フング!」
「どうしたんですか?」
あ、上がらん!どゆこと?モグラって元からすごい力だったの?
「ちょっとタイミングが合わなかったな、じゃあもう一度」
悔しいので追加で埋め込む。合計青珠8個だ。オーク丸々1体の力より上だぜ!
「3.2.1.ハイ!ハイ!ハァァァァァイ!!」
「あ、あの」
な、なぜ!?なぜだ!
「あーいや、ミミナと二人で運ぶ方が息が合いそうだと思ってな。ほら、頼むぞ」
身体全体を使って「無理っすよ!」と示すミミナを促しつつ【力】青珠を4つ埋め込んだ。これでどうなるか。
「ミミナ行くぞ、せーのっ!」
「!??!?」
見事に持ち上がるオークの巨体。二人の様子を見るに最初から力が強かったという事も無さそう。
俺にだけ効果が無い?そんな馬鹿な、それではあの埋めた文珠はどこに?
吸収されちまったのか?魔石の時みたいに?それだったら俺だけ強くなれないじゃねぇか!
「帰るんじゃないの?」
「あ、あぁ行こう」
運び込んだ冒険者ギルドでは暇な冒険者たちがオークを運ぶデイガン達を見てざわついている。屈強な冒険者でもバラして運ぶ物なのに、小さな子供が2人で丸ごと運ぶ姿は異常だ。獣人には見えないしな。
「すげぇガキだな」
「ポーターなのか?あれなら相当な冒険者になるぞ」
「可愛いなぁ、俺も運んでくれないかなぁ」
あぁ俺もすげぇって言われてぇぇぇぇぇ!すごい漢だって言われてぇぇぇよぉぉぉ!
俺の自己顕示欲が悲鳴を上げる!俺を見ろと轟き唸る!
「トトリさん、オーク狩ってきましたよ。依頼処理お願いします」
「トトナです。まさか丸ごと持ってくるなんて、優秀なポーターを抱えていますね」
違うんだ優秀なのは俺なんだよ。お前らも誇らしげな顔をするんじゃねぇ。
「それではこちらが依頼達成の報奨金です。Cランクの冒険者証は今日お持ちになりますか?」
「んー明日また来ます」
「ありがとうございます。オーク肉もまた取ってきていただけると助かります」
「もうちょい高かったらいいんですけど」
「規則ですから」
にっこりと返されてしまった。慣れてるんだろうな。
オークを運んできた駄賃は銀貨5枚。数人使ってこれだ。他に仕事がなけりゃやるが、進んでやりたい物じゃないな。
「さて、金も出来たし小熊のアトリエに行くか」
「え、あ~、ちょっと気まずいんだけど」
「しらねぇよ。他に奴隷も手に入ったし、お前の奴隷紋はとっくに無くなってるんだ。アリサお姉さんにでも相談してさっさと仕事探せ」
「暫く僕を使ってくれないか?仕事をするにしても装備も住むところもないんだ。冒険者登録もやり直しだし」
「それこそ知らねぇよ。自分でなんとかしろ」
「君はなんとも思ってないみたいだけど、僕は本当に感謝しているんだ。恩返しをさせてくれないか?君たちを見ていると危なっかしくてね」
「騙されて奴隷落ちした癖に何言ってんだ」
「うぐっ!」
うーん、あの家に4人は無理だ。というか俺1人でもきついってのに。あ。
「家買うか」
金ならある!