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イケメン流剣術

「美味しい!すごく美味しいよ!でもちょっと脂っこいね」

 これだからイケメン様はよぉ!男ならガツガツ行けってんだよなぁ!モグラ少女は3枚喰らったぞ!


「食ったな、それじゃ次を探すぞ。沢山狩っておけばまた美味い物が食えるからな」

「はい!あっちにいるみたいです!」

 こいつ意外に高性能だな。オークが重いというのもあるだろうが、視界の限られる洞窟の中では素晴らしい能力だ。



 見つけたのは再度3匹組のオーク。まだまだ実験だ。

「スターライトシュート」

 今度は両肩・両足に3発ずつ撃ち込んで動けないようにする。

『ぐもぉぉぉ!』

「苦しめてすまんな、だが必要なことなんだ。ノア、また後ろ向いてろ」

 身悶えしているオークに触れて【力】を抜き出した。今回は抜けるだけ抜く。

 ごろごろと抜け出す文珠は合計で青珠6個あまり、おそらく人間よりは多いんだろうな。

 力を抜ききったオークは力尽きた。生命活動に必要な力さえ抜けたか。他二体も同じようにしてからデイガンとミミナに魔石を抜かせた。

 最後に【力】と魔石を抜いたオークの体を【肉】に変える。抜き出せたのは青珠25個だ。体は灰になって消えた。


【肉】の数は魔石を抜いた場合より更に減った。だが合計の数は増えている。

 最初から【肉】を抜いた場合には力や魔石も【肉】となるんだと思う。全部【肉】に出来るけど変換効率が落ちるってわけか?

 オークからも【知】も取れるだろうし、【血】【骨】【脂】だって取れるはずだ。思いつく限り分けたら合計数は増えるのかも。

 まだまだ分からない事は多い。ゆっくり調べていこう。




「オークはとりあえずこれでいい、帰る前にもう一度狩って1体は持って帰るぞ。一旦6層に行く」

 6層は金属が採れるんだ。と言っても鉄鉱石なんて物じゃない、メタルアリゲーターという物騒なトカゲの皮がそれだ。

 厳密に言えば金属じゃないのかな?よくわからん。

 前世にも似たようなヤバイ鰐は実在していて、大きく成長すると叩きつけた斧すら火花を上げて弾いたらしい。罠で狩って肉を食い、皮は盾などに加工したそうだ。

 鰐って寿命が無いし鱗は鉄みたいになるし、ファンタジー生物だったのでは?

 まぁそれは置いといて、こいつから【鉄】をいただくのが目的だ。



 順路に戻って6層へと進む。

 大体の目安として、5層まではDランク、6層からはCランク以上が推奨されている。

 オークが弱いわけじゃないんだが、6層からは洞窟内に水場や沼が追加されて危険が増すんだ。その代わり色々と実入りも良くなる。

「ノアは冒険者ランクいくつなんだ?」

「Cランクだよ。でも僕は護衛の仕事が多くて、ここまで潜るのは初めてなんだ」

 頼りにならねぇな、まぁこいつに頼るわけにはいかないんだが。


「デイガン、トカゲの位置がわかるか?這いずっていると思うんだが」

「うーん、わからないです。水の中にいたら分からないと思います」

 それもそうか、鰐が陸上を無駄に動きまくることは無さそうだ。

「餌で釣ってみるか」


 鰐の餌って何がいいんだろう?そういえば渡河するバッファローの子供に噛りつくのを見たことがあるな。水を飲みに来た草食動物を襲って食べるイメージ。

 まぁ分かりやすい鶏肉でいいか。骨付きモモ肉サモン!!


 べちゃっ。


 適当な水辺の近くに放り投げた。

 鰐なんてこれで釣れるだろ。知らんけど。




 釣れるまでにちょっと話をしておこう。


「デイガン、ミミナ。お前らってどうやって捕まったんだ?他の獣人はどうなった?」

「あの、他の仲間は知らないです。捕まった時は僕らだけで、その、僕らは足も遅いし戦えないから……」

「潜れないのか?」

「大人は爪で穴を掘れるんですけど……」

 モグラ族は不遇なのか。いや、ここでの活躍を考えると穴蔵生活に特化してると考えるべきかな。地上では犬や猫の方が遥かに有利なんだろう。


「それで、僕らは獣人だけど大きな耳もフサフサの尻尾もないから売れないって。毎日殴られて……」

「そうか、大体分かったからいいよ。元々暮らしていた場所は分かるのか?帰りたいか?」

「帰りたいけど帰り方がわからないです。あの、僕頑張るので、その」

「あぁ、しっかり働くなら飯は心配するな。十分に働いた後になるが、解放されたいならそうしてやる。妹もそれでいいか」

(コクコクコクコク!)

「それでお願いします!」

「よし、それじゃ背中向けろ。ノアもな」


 背中に手を当てて【縛】を抜き出した。これで奴隷からは解放されたはず。

 そしてそれを再び戻す。念じるのは「俺の命令に従え。俺から逃げるな」としておこう。汎用性がある方がいい。




「ノアはどうしたいんだ?」

「僕は……、来てるよ!」


 肉の方を見ると鰐が噛みつくところだった。結構早いぞ、なかなか手強そうなやつだ。だがそれも俺の必殺技で一撃よ。

「スターライトシュート!」


 キィン!


 鱗に当たった光線が散乱して眩しくきらめく。まじか、効いたか?

『ガァッ!』

「効いてないぞ!くそっ!」


 レーザー攻撃は光を反射する物に弱い。分かってはいたが、試さないわけには行かなかったんだ。

 さてどうするか、一旦逃げるか?



「任せて!」

「おいバカやめろ!」

 ノアは石剣を構えて前に出た。その剣先は細く鋭利であるが、俺が作ったまがい物だ。そんなもんで戦えるのかよ。


『クオォ!』

 鰐が咆哮とともに飛びかかってきた瞬間、ノアの足が素早く横へと滑るように避けた。巨大な顎が地面を噛み砕く音が響く。


「やっぱり動きは硬いね」


 ノアは一瞬で距離を詰め、石剣を鰐の鋼鉄のような皮に突き立てる。だが剣先は金属に当たったような鈍い音を立てただけで弾かれた。すぐに飛び退り、鰐の尾の一撃を紙一重で躱すとそのまま鰐の背中に飛び乗る。


「これならどうだ!」


 鰐の硬い鱗の隙間、首と胴体の間の関節部分に細剣を突き立てた。鰐が暴れようとするが器用に剣を押し込み致命傷を与える。激しい動きの後、ついに沈むように倒れ込んだ。

 ノアは大きく息を吐きながら鰐の背から降り、剣を引き抜いた。付着した血が赤く輝いている。彼はそれを軽く振り払うと髪を掻き上げてポーズを決めた。

「硬いだけじゃ、僕の剣は防げないよ」



 何言ってんだこいつはよぉ!これだからイケメン様はよぉ!

「僕にも活躍出来る機会があってよかったよ、もっと狩るかい?」

「いらん、後ろを向いてろ」

 ノアは両手を軽く上げて肩をすくめた。こいついきなり余裕出してきたな、調子ノリだったのか。



 さて、改めて鉄をいただこう。手を当てるとポコポコと【鉄】が生み出された。正確には鉄ではないだろうに不思議なもんだ、鉄としての要素を満たしているということなんだろうか。

 今日のところはこれで引き上げよう。帰りにオークを一匹持っていかないとな。

明日から正月明けまで毎日2話投稿となります。

よろしくお願いします。

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