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モーニングが脂っこくてもいいじゃない

「君、お金持ちの子供じゃなかったの?」

「あんなのハッタリに決まってるだろ。俺は天涯孤独、財産はここにあるものだけ、後ろ盾なんて無い。それよりさっさとそいつらを寝かせろ」



 ガキ達はズタボロとしか言いようがない状態だ。腕や足がついてるだけ上等かな。

 顔は腫れ上がり体中が痣だらけ。脚が真っ青になってるのは腱をぶち切られてるんじゃないか?酷いことしやがる。

「君、魔法使いなんだよね?もしかして治せるの?」

「ある程度の治療は出来る、だが……」

 どうせなら起きている状態で治療して「わ、わたしの足が動きます!うっ、うっ、もう二度と歩けないと思っていました。ありがとうございます御主人様!」とか言われたい。起きるまで待つか?


「けほっ!げほっげほっ!」

「いけない、あんな怪我をした状態で運んだから内臓に損傷があるのかも」

「仕方ないな。癒やしよ!」

 右手に【癒】を握り込んで左手を開いて突き出す。超能力とか気功波を使うポーズだ。これでなんか魔法使ってる感じがするだろう。

 手の中の文珠が、ほのかに光る粒子となりガキ達を包む。すると見る見る内に怪我が消えていき、光が消えるとそこには安らかに眠る二人の子供がいた。


「すごいよ!どうして杖も無しにこんな強力な魔法が使えるの!?」

「杖?あぁ杖ね……、杖は、高いから」

「あぁ、そうだね。杖があるならまともな所に住むよね」

 失礼な奴だ。ここも十分まともだぞ。しかし魔法使いと言えば杖か。確かにそういうイメージがある。今度探してみようかな。


「もういいから寝るぞ、後は明日だ。お前も身の振り方を考えとけ」

「寝るってどこで?」

「そこら辺で適当に寝ろ!」


 これだからイケメン様はよぉ!構わず木板の上に寝転がって寝た。これが俺の寝床だ。

 もう疲れたよ。横になって目を瞑ったらすぐに眠気を押し寄せてきた。おやすみなさぁい!






 朝。

「わぁぁ!なにここ!」

「ひぃぃん!ひぃぃん!」

「泣かないで!大丈夫だから!大丈夫だから!」

 うるせぇ、朝からガキが騒いでるのか。これだから親に育てられた甘ちゃんはよぉ。


「うるさい黙れ。状況はわかるか」

「え?え?あの、僕達は捕まって殴られて……あれ、痛くない?」

「お前らは奴隷になっていたが俺が奪った。今日から俺の奴隷だ」

「……そうですか、あそこよりはましな……、まし、なのかな?」

 なんだ我が家に文句があるのか?まぁ4人で寝るのはちいとばかし狭かったが牢屋よりはましだろう。


「そっちの泣いてるのは妹か?一緒にそこの川で体を洗ってこい」

「はい!」


 なんか思ってたのと違うぞ?やっぱり死にかけの所を治療する感動シーンで寝ていたのがよくないんじゃないか。無理やりでも起こすべきだったな。



「あの、お腹空かない?あの子達もお腹減ってると思うんだ」

「お前金持ってる?」

「え?勿論もってないけど、そこにいっぱいあるじゃないか」

 金貨袋を指さしているが、こいつ馬鹿なのか?どこで金貨が使えるんだよ。それにそんな事をすれば、俺達が奴隷商館を襲撃して金を奪ってきましたと言っているようなもんだろ。


「ダンジョンに行って小金を作る。大丈夫だ、それほど時間をかけずに美味い物を食わせてやる」

 目指すはオーク。300キロ超の肉の宮だ。




「洗ってきました!」

 ビチョビチョの服で報告するガキんちょ。話は沢山あるがとりあえずダンジョンに向かいながら話すことにした。金は地面に埋めた。


「早速仕事だ。今からダンジョンに向かう。お前たちの仕事は俺が倒した魔物から魔石を取り出すだけだから安心しろ。飯も食わせてやる」

「わかりました」


「それで、お前らの名前は?」

「僕はデイガン、妹はミミナっていいます」

「獣人だろ?種族は?」

「そ、それは、あの……」

「君、いきなり種族を聞くのは失礼だよ」

「いえ!ぼ、僕達はモール族です!」

 モール?モグラか。モグラ族なんているんだな。獣人なのに耳も尻尾も目立たないのはそれでか。


「得意な事はなんだ?」

「そのぅ、穴を掘るのとか」

「とか?」

「夜目が効きます」

「他には?」

「うぅ、無いです……」

「ふぅん。気にしなくていいぞ、俺の言った仕事だけ出来ればそれでいい」

「がんばります!」


 いい返事だ。妹の方は全く喋らないが働いてくれりゃそれでいい。

 奴隷解放ごっこをやりたかったが、そういう雰囲気でもない。働く気があるなら真面目に働かせて見合った報酬を与えておこう。



 話している内にダンジョン前に着いた。相変わらず危険分子がうろちょろしている物騒な場所だ。

「ここがダンジョンだ。入ったことはあるか?」

「な、ないです。危ないって聞きました」

「じゃあ離れずについてこい」

 ゾロゾロと進む集団に混ざって5層まで安全に移動した。


「ここはダンジョンの5層だ。ここはオークばっかりが出る特殊な階層だから小さな敵に警戒する必要がないんだ。初心者ポーターでも安心だぞ」

「は、はぁ」

「そうだ、ノアって冒険者だったんだろ?武器は何を使うんだ?」

「今更聞くの?得意は弓だけど、細剣も使えるよ。今は何も持ってないけどね」

「アテにしてなかったわけじゃないぞ、ちょっと待て」


 ツールベルトから『石』の青文珠を取り出して手に取る。細剣だな、鋭く軽く、硬く柔軟で、形はこんなもん。

「石剣よ、鋭く軽く柔軟で折れない石剣よ出ろ」

 文珠が形を変えて剣が出来上がる。俺が使っていた石槍10個分の強度・精度であればとりあえずは使えるはずだ。


「これを使ってみろ」

「い、今何をしたの!急に出てきたように見えたけど!それにこれって石?」

「魔法だ、詳しいことは聞くな。それよりどうなんだ」

「うーん。剣の形はしているし切れそうだけど、重心とかは全然考えられてないね。使えなくはないけど、剣技にはならないと思う」

「そうか」

 何を作り出すにも研究が必要だな。抜き出すのに比べて生み出すのは難しい。


「さあ、獲物を探すぞ」

「あ、あの!地面が揺れてます、あっちの方に大きいのがいるかも」

 なんだ、ちゃんと特技があるじゃないか。



 デイガンの示す方に向かうと、確かにそこにはオークがいた。三匹のオークが武器を担いでのっしのっしと歩いている。

「モンスターの武器ってどこから仕入れてるんだろうな」

「ダンジョンの魔物は武器を持って生まれるらしいよ。それより3体いっぺんにいけるの?」

「誰に物を言ってるんだ。スターライトシュート!」


 チュィン!


 微かな音を立ててオークの頭を貫通する光の矢。まだまだこれ一本で無双できそうだ。

「やっぱり凄いね。魔法使いは怖いよ」

「バランスの悪い石剣に出番はないかもな。デイガン、ミミナ、魔石を取るぞ」


 石のナイフを作ってオークの体から魔石をほじくり出す。大体の種族は心臓の部分にあるので、その点でもオークは分かりやすくて初心者向きだ。1体を見本にして、もう1体は二人でやらせた。もう1体はそのままだ。


「それじゃノア、お前はちょっと向こうに行って後ろ向いてろ」

「あのさ、なんで僕は仲間はずれなんだい?」

「あん?お前はアリサお姉さんに頼まれて奴隷にしただけだからな、すぐに解放するんだから手の内を見せるわけには行かない。これまでに見たことも他人に話したら覚悟しておけよ」

「え!解放してくれるの!?」

「そう言ってるだろ、さっさと行け」

 渋っていた癖にスキップして離れて行きやがった。気楽なもんだ、どう事情説明する気だよ。



 まぁ今はオークだ。さあ【肉】になれ。

 魔石を抜かれた大きな体から大量の文珠が転がり出てくる。どんどん合成していくがすぐにいっぱいになる。

 結局最初の1体からは青珠29個と少しの文珠が取れた。残されたオークの体は灰のようになって溶けるように消えていく。不思議な光景だな。


 次に魔石が残ったままのオークだ。魔石を残して【肉】となれ。

 右手で触れて魔石が残るように念じる。だが残念、全部溶けてしまった。

 その代わり【肉】の文珠は30個少しある。

 体の大きさは全く同じに見えたが、少し大きかったのか?それとも魔石が混ざったから?どちらにせよ魔石は先に抜いた方がいいな。

 二人が魔石を抜いたオークも【肉】に変えて、合計90個近い青珠が取れた。



「よくやった。二人共腹が減っただろう?」

「あの、は、はい」

「おなかへりました」

「そうだな、しっかり働けば美味い物を食わせてやるからな。エロイムエッサイム、エロイムエッサイム、いでよファミ◯キ!」

 じゃじゃーん!そこにはたぶん250%くらい増量された巨大なファミ◯キが!


「うみゃ~~い!」

 堪らず食いついてしまった!二人の目が痛いぜ。

「ふがふふぁ、ふぁみふぃふぃ!」

 新たに2つ変化させて渡してやった。

「なにこれ!なにこれ!」

「おいふぃぃ」

 ふふふ、流石ホットスナック人気NO.1商品だぜ。こいつをキメちまったらもう離れられねぇよなぁ!



 あっという間に食い尽くして追加を出した。ちょいと脂っこい朝飯だが満足だぜ。


「お~~い!すごくいい香りがするんだけどぉ!」


 あいつどうしようかな?

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