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【お前を愛することはない……ことも、ない】と言ったその氷の貴公子(火属性)が描く彼女の肖像画はとても可愛い。  作者: ぷり
■ルイス4年生■

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34/40

【34】◆公爵令嬢のプライベートルームにて


 エステルの誕生日会があった休日明けの学院にて、エステルはカンデラリアのプライベートルームで昼食を一緒にとっていた。


「どうしたの? 急に一緒に食事をとりたいなんて」

「……その、一昨日の土曜日にルイス先輩にお誕生日会をして頂いたのですが……」


 なぬ。


「なんて?」


 カンデラリアは思わず素で聞き返した。


「え、あの、私のお誕生日にルイス先輩と個展に行ってきたのです。あとサプライズでお誕生会をしていただいたんです。……あっ! すいません。カンデラリア様は自宅のお誕生日会にお招きしていたので、お誘いしてませんでした!」


「あ、いえ、それはいいのよ? ぜーんぜんいいのよ? 楽しかった? どういうお誕生会だったの?」


 良くねえ。

 呼ばなくでもいいが何故、教えてくれんかったんだよおおおお!!

 むしろ邪魔しない、邪魔しないでかつウォッチしたかった!!


「はい! とても!! えっとですね……」


 カンデラリアは、エステルにその内容を聞いて、めまいがした。


 くそう! 私、作者なのに! 作者なのに自分の小説の実写版を見に行けないなんて!!

 なにその内容!! 見逃し配信くれ!!


 は~……。


 カンデラリアは心の中で大きなため息をついたあと、自分のわがままはそこまでにして、エステルの話を聞くことにした。


「それで? 何か問題でもあったの?」

「えっとその……私……」


 エステルはそこで、手近にあったクッションをギュッと抱きしめて、顔を半分埋めた。


「ん?」

「ルイス先輩の頬にキスしてしまったのです……」


 ……んふっ!


「あらまあ、それがどうかして? 仲良しの敬愛する先輩に、誕生日を催していただいたのならそれくらいは普通では?」


「ふ、普通でしょうか」


 あはははは。お前らにとっては普通じゃねえわな、お前らにとってはなぁ!!

 スチルくれええええ!!


「あ、あと。ルイス先輩も頬にキスを返してくれたのです……」


 エステルはそこで真っ赤になって、クッションに全て顔を埋めた。


 カンデラリアは、石化した。


 え? あのルイスが? まじで? そこまで成長したんか?

 いつのまに!?


 くっそ、ノロケかよぉ!! こいつぅ!! いや、聞いてて楽しいけどぉ!!

 

「それも普通じゃないかしら? よかったわね。最初の頃あなた達ギクシャクしてたんでしょう?」


「あ、はい。そうなんです。そのはずなんです。なんですけど……その、最近ずっとルイス先輩のこと考えてしまってて……」


 カンデラリアは思った。


 ――完全に恋する乙女じゃないのよ。


 しかし、どこかエステルはしゅん、としている。


「どうしたの?」

「……昔、私とルイス先輩、お見合いしたことがあるんですけど、それが絶ち消えているんです。それなのに私、こんな気持ちになってしまって……」


 エステルは瞳が潤んでいる。


 うわああ!! 望みのない恋だと思ってるよおおおお!! ルイスぅうううううう!! 早くなんとかしろおおおお!!


「そんな関係なのに、キスしてしまったし、それを思い出したり、こ、こんな気持を抱えて美術部にどうやって今日も行けば良いのかと……すみません、こんな事お話して」


 くわっ!!


 だいたい、エステル、あんたも!

 学校でもう完全にカップルだと認知されてるの気がついてないの!?

 あんな美形ハンサム成績優秀クール男子(※一部偽りあり)が、女子に囲まれてない理由考えてみなさいよねぇ!!

 いや、私も余計な女たちはちょこちょこ排除してたんだけどぉ!!


 ああああああ、9歳だものなぁ! しょうがないよなぁ!!!

 教科書じゃ教えてくれない事柄だものなぁ!


「いいえ、いいのよ。つらいわね、エステル。でも、自分でもわかってるわよね、悩んでも仕方ないって」


 カンデラリアはエステルを抱き寄せてヨシヨシした。


「はい……カンデラリアお姉様……」


 エステルもギュ、とカンデラリアに抱きついた。


「とにかく、がんばって今は普通にしていなさい。例えば部活を出ない、なんて事をするとルイスが気にするわよ、自分がなにかしたのかって。そしてエステルも、ずっと美術部に行きづらくなっちゃうわよ? それはいやでしょう?」


「……はい」


「普通に、いつもどおり。そうして自分の気持ちがとりあえず落ち着くのを待ちなさい」

「カンデラリアお姉様、やっぱりステキです……」

「(くそ、可愛いな!)」


 しかし。

 私が小説で書いた二人の仲の深まりも、10歳頃だったけど。


 前から思ってたけれど、この二人に関するイベントが私の書いた小説の出来事とまるで違っている。

 初期設定以外、完全に原作の手を離れているわね。

 

 彼らのことは、変わらず気になるけれど――最近は、キャラとして……ではなく

普通に友人として見るように私もなってきた。


「……」

 アートの顔が浮かんですこし胸が温かくなる。


 こうやって相談してくれるなら、今後は普通に友人としてこれからは補助してあげよう。


 前世に囚われるのもそろそろ終わりにしなきゃ。

 今生を真面目に生きましょう。



お読み頂きありがとうございます。

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