修一編2
修一の私邸
夜、ミラの部屋を訪れる。
「修一さん、どうしたんですか?」
「ミラちゃん、悩んでるみたいだったから、頭がスッキリするの、掛けてあげようか。」
「悩んでるのバレてました?ははは。折角なので、お願いします。」
「うん。じゃぁ、ベッドに横になって?」
「はい。」
ミラは素直にベッドに寝転ぶ。
「目を瞑って、悩んでる事を思い浮かべて。ミラちゃんはその悩みから解放されたいと思ってる。良いんだよ。君は悪くない。忘れて良いんだ。」
その優しい声がスーッと体に染み込む。
「ケイゴ先輩はね、君じゃなくても良いんだよ。だってモテモテだろ?君よりも歳が近くてもっとグッと大人の女性が好きなんだ。でも、君は恩人のお孫さんだ。恩義で付き合っていただけなんだ。それは、ミラちゃんも感じてただろ?辛かったね。でも、もうその辛さから解き放たれよう。僕は君を愛してるよ。だから僕を受け入れなさい。君だけを愛すように誓うから。さぁ、彼への想いはこの涙と共に全て流れて、僕への恋心へと変わる。目が覚めたら新しい世界となっているよ、ミラ。」
ミラの目から涙がどんどん溢れる。その唇に優しいキスを何度も落とす修一、それを受け入れるミラ。
ミラにケイゴへの恋心を忘れる催眠術をかけ、自分へ向く様に術を掛け直す。
(何でももってるんだから、ミラちゃんくらい貰ってもどうって事ないだろ?ケイゴ先輩は。)
***
ミラは目を覚ます。体を起こしてボーっと周りを眺める。
コンコンコン
ノックの音と共に修一が入ってくる。
「修一さん?」
「おはよう、ミラ。」
「おはようございます。修一さん。」
ミラと修一は微笑み合う。修一はミラの顔を見る。とてもとろ〜んとしていて、誘っているようだ。催眠術の成功を確信し、ミラに問う。
「キス、して良い?」
「ええ、もちろんです\(//∇//)\」
恥ずかしそうに紅くなったミラと、深い口付けを交わす。
(良い女だ。さすがあのケイゴ先輩が愛しただけはある。でも、今はもう僕のものだ。)
***
ミラが家に帰らなくなって10日が過ぎた。最初の数日は松本邸に確かに居た。しかしミラはその後帰宅したはずたった。ナオもそう思っていた。しかし、家に帰らないミラを心配して電話が掛かってきて、事が発覚した。
KAHO家が全力でも見つからない。
流石に焦る。血眼になっても見つからない。親分もそろそろ限界そうだ。どうにか連絡が取れないものか…。いそうな所には出向いた。もちろんナオの家は最初に訪問した。荒木の店や橘家や四葉家も行った。でも居ない。
「どこへ行った、ミラ…。」
ケイゴ達はリビングに集まって考えあぐねている。すると1人の部屋住が大声で叫んだ。
「あっ、お嬢!おーい皆んな、お嬢が帰ったぞ!」
「ミラ!」
ケイゴは一目散に玄関に向かい、そこに立っているミラを抱きしめた。
「ごめんなさい連絡もせずに。心配させました。」
ケイゴはその一言でミラへの微かな違和感を感じる。
「好きな方のところへ行っていたの。」
「「「……………?」」」
(好きな人?)
「えっ?どう言う事ですか?好きな人?」
珍しくケイゴが狼狽える。
「えぇ、そうです。その事でおじいちゃんとお話しがあります。」
後から現れた親分に視線を投げるミラ。
「…ミラ、私は怒っている。」
「はい、本当に申し訳ありません。」
「どこに居たんだ!」
親分は怒鳴る。それをタミさんが諌めてくれる。
「当ても無く、街を歩いていました。そしたら修一さんとお会いしました。最初はナオの家にお邪魔していましたが、修一さんは別荘をお持ちで、その後は気分転換にそちらに滞在させて頂きいていました。」
「小僧!」
「修一さんは悪くありません。いつも連絡をしろと私に言っていました。怠ったのは私です。申し訳ありません。責任を取って、私はこの家を出て行きます。失礼します。」
「え、あ、ミラ、待ちなさい。何でそうなる!」
「ですが、私は一生添い遂げたい方を見つけてしまったのです。」
後ろから修一がやってきて、みんなに頭を下げる。皆は黙って警戒体制に入る。そこにケイゴが声を掛ける。
「あの、失礼します、親分…。」
しかしこの状況に二の句が告げない。そんなケイゴを親分は一瞥する。
「ケイゴと結婚すると言う意味か?」
「ケイゴ?何のことでしょう。私は修一さんをお慕いしているのです。ケイゴは他に心を向ける方がいますから。」
「「「え?」」」
「何を言っているんですか!お嬢!俺は貴方だけです!」
ミラはケイゴを見て微笑む。
「ケイゴ、もう良いのです。貴方はおじいちゃんに恩義を感じて、私を大切にしてくださった。でも、私も本当の愛というものが分かりました。」
「俺に向けてくれた気持ちは、本当の愛じゃなかったと?」
「貴方が私に向けてくれた気持ちが、本当の愛ではありませんでしたでしょ。」
「何言ってるんですか!」
「あっ!」
ミラは急に頭を抑えて痛がる。修一はミラを抱き寄せる。
「ミラちゃん、無理しちゃダメだよ。調子悪いんだから。」
「ごめんなさい。帰りましょう。」
修一はミラに優しく微笑んだかと思うと、KAHO家に向かって鋭い視線を投げる。ミラは気づいていないが、修一は小さいナイフをミラの首元にかざしている。それを見て全員の目付きが変わる。
「着いてこよう何て思わないで下さいね。ミラちゃんに手を出してほしくなかったらな。」
「「「…。」」」
「ケイゴ、ナオと修一さんを怒らないで!うっあー。」
「お嬢、無理せずこちらでお休みになって下さい。」
頭を抑えるミラ、修一はミラを睡眠術で寝かせる。
「頭痛が相当酷いな。かわいそうに。ケイゴ先輩との関係にかなり悩んでいたよ。だから僕が取って代わってやったさ。僕ならミラちゃんをちゃんと愛してあげられる。じゃぁな。追うなよ。」
全員の睨みを無視して、修一はミラを連れて行ってしまう。
「「「………。」」」
全員が静まる中、ケイゴはミラの言葉を復唱していた。
「『ナオと修一さんを怒らないで。』」
(なぜ怒るんだ?修一はまだしもナオ?知らないと嘘をついたからか?でも、ナオの顔は嘘を言ってる感じじゃなかった。ナオは何も知らない?俺は修一とは面識が無い。一方的に知ってる可能性はあるが。だが俺とミラの関係はいつ知った?ミラはパーティーでは必ず地味で印象に残らない様にしているし顔も隠してる。文化祭で主従と知られたが、俺たちの関係までバレたのか?可能性は学園の連中ではあるが、あいつらがバラすとは考えにくい。)
「親分、もう一度松本尚子の家へ行って来ます。」
「主従以上の関係がバレるぞ。」
「その時はその時です!お嬢を失うことに比べれば大した事ありません。」
「行ってこい。」
***
ナオの家
「ケイゴ先生、まだミラが見つからないんですか?」
「あぁ。」
「…あの、今からミラの家の方が来る予定で、客間にご案内出来なくてすみません。」
「気にしなくていい。その人間は俺の事だからな。」
「………え?どういう事ですか?」
「俺はミラと一緒に住んでる。そしてミラのお世話係だ。」
「………………ミラのお世話係?」
「そう。だからここに来た。ミラは修一に誘拐された。」
「え?何でそこにお兄様が?誘拐?どう言うことですか?」
「悪いが、情報を整理する時間は無い。兄貴はどこにいる?」
「兄は誘拐する様な人ではありません!」
「悪いがそんな論争をしている余裕は無い。兄貴はどこだ!」
「分かりません。数日前にミラとお兄様がここに来て、翌日には帰って行ってからは来てません。兄は私邸だと思いますが、その場所は知らないんです。ミラは大丈夫でしょうか!?」
「激しい頭痛があるようだ…。」
「激しい頭痛?兄はミラに催眠術をかけていました。だからしばらくは大丈夫なはずなのに…。」
「その催眠術でミラを心変わりさせた。」
「!!兄はそんな事出来ません。怠さを取る程度しか使えないんです。」
「さっき一瞬ミラが帰ってきた。そしてお前の兄と見つめあって、まるで恋人同士だったぞ。」
「恋人?そんなはずは。だってまだ何回も会って無いし、ミラだってベタ惚れの彼氏さんがいるんですよ!数日で心がわりなんて。」
「あぁ、知ってる。でもその男とは今すれ違ってる。」
「すれ違ってる?彼氏と別れたんじゃ無いんですか?彼の気持ちはただの優しさだったって言っていました。でも自分も、ただの憧れを恋と勘違いしてしまったからお互い様だって、まるで自分を納得させる様な感じで。…泣いていました。」
「…。」
(あの人はいつもそうだ。自分に自信が無くて、失う前に自分から手を放す。自分が傷つかない為にそんな事ばっかりして、本当に我儘な人だ。代わりに傷つくのはいつも手を離された方だ。何で…もっと信じてくれないんだ…。何でもっと不安だと伝えてくれないんだ…。)
「兄貴の私邸の場所、検討も付かないか?」
「…両親は北海道に別荘を持ってますけど…。」
「北海道…?」
(そんな所なはずは無い。)
ふと家族写真が目に入る。幸せそうな松本家。しかしケイゴは目を疑う。
「あ、兄貴はどれだ?」
「兄はコレです。」
「…他の兄貴の写真はあるか?」
「写メでいいなら。」
そう言って、次々に見せてくれる。
「じゃぁ、あいつは誰だ!」
「何がですか?」
「今日、ミラと一緒に来た修一とは誰だ!」
「えっ?お兄様じゃ無いんですか?」
「こんな顔じゃ無かった。もっとガタイが良くて、もっと悪人面だった。」
「!!」
「兄貴と連絡は?」
「えっ、電話してみます。」
ナオはスマホで兄に電話するが、繋がらない。
「繋がりません。」
「そうか。」
「ミラの居場所は分からないんですよね?」
「あぁ、人質を取られてるから追跡できなかった…。でもミラがナオと修一さんに怒らないでって言ったから、何か手がかりが無いかと思ってここに来たんだ。ここに来た事で偽修一の存在が分かったが…。」




