修一編1
ケイゴとソラはVIP専用ラウンジで並んで座っている。ケイゴはお酒を飲んでいる。一方ソラは俯いたまま何かを話そうとする。しかしなかなか言葉がでず、3度目の口を閉じている。そこへ場違いな明るい声が響き荒木が声を掛ける。
「うっわー、この辺りのスペースだけ空気わるー。近寄りたくねーな。」
ケイゴは荒木を一瞥する。
「ならそいつ連れてどっか行け。」
「うっわーケイゴめちゃくちゃ機嫌悪いじゃん。珍しいね、こんなに引きずるの。ソラと喧嘩した事もなかったし。」
「…。」
ケイゴは無言でお酒を煽る。既に4杯目を飲んでいる。荒木はソラに目配せをして、言葉を促す。
「…。今日は本当ごめん。昔みたいに女の子に捕まって迷惑してると思って…。ひつこい相手とはお茶してたから、今回もそうだと…。やっと皆んなに報告出来るって舞い上がってたのかも…。」
「報告?」
荒木かすかさず疑問を投げる。
「あ、あ、それは今は関係ないなら。兎に角本当にごめん。」
「…。」
「おい、ケイゴ。何か言ってやれよ。」
ケイゴは答えない。ひたすら壁とお酒の間で視線を往復させている。
「まぁ、まぁ。そんなに怒るなよ。気持ちは分かるけどさ。側から見ると、器のちっちゃい不機嫌男が女の子に謝らせてるみたいに見えるよ?」
ケイゴは荒木をまたも一瞥する。
「周りからどう見えようが関係ない。ミラに何もなかったから良かったものの、何かあったら社会的に抹殺していた。」
「まぁ今回は俺達に会いに来てくれたんだし、それに免じて許してやってよ。」
「…。」
「ねぇそれよりソラ、胸メッチャ大きくて柔らかいじゃん!」
「あぁうん。そうなの。でも自分が望んだ事とは言え、維持が大変なんだ。」
「ミラちゃんより断然大っきいのに、コレに落ちないケイゴって何だろ?」
ケイゴの目が更にキツくなり、いつも以上に冷たい声になる。
「お前の性的嗜好は知らんが、俺のミラをそんな風に見てたのか。クビだ。もうミラに二度と会うな。それと俺はお前と違って体が目当てじゃ無い。」
「俺をケダモノみたいに言うなよー!それにケイゴが俺をクビに出来る立場じゃないだろー!」
「俺のやる気次第だな。やろうと思えば出来る。」
ケイゴのスマホがLINEの通知を知らせる。チラッと確認すると2人を無視してスクッと立ち上がり、お店を後にしようとする。
「おい、どこ行くんだよ!」
「家だ。何かあった様だ。」
「そうか。気をつけて。」
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「…は?松本家にミラが居ない?どう言う事ですか?」
「電話した時は確かに居たそうだ。しかし迎えの話をすると、翌日には帰ったと言っている。」




