接待0(昔話)
昔話
私は小さい頃から五十嵐家の一人娘として育てられてきた。私と結婚する人は五十嵐家の当主となり、私はその補佐をする。しかし実質は私が権力を維持出来る様に、基本的には私が当主の仕事をする予定となっている。
完璧な淑女となる為に、家庭教師が日替わりでやって来て、礼儀作法から楽器演奏、勉強を教えてくれた。そんな生活が物心ついた時から当然で、たくさんのパーティーもに積極的に出席した。
その結果、中等部の頃には既に派閥の中で中心人物となる事が出来た。
ある中立派閥のパーティーで、同年代のかっこいい男の子を見つけた。今までに見たことの無いくらい綺麗な顔立ちで、立ち居振る舞いもスマートだった。
大人達の話を聞くに、派閥の違う大企業の重役の子息ということだった。人脈作りに声を掛けるタイミングを見計らっていると、周りの令嬢もそんな様子だと気付いた。
人気者の彼は、男の子達からどんどん話しかけられていて、女の子が声を掛けられる雰囲気では無かった。そんな中、急に話を中断して飲み物を持った彼は、ベールを付けた8才くらいの女の子に自ら話しかけグラスを渡した。
彼のパートナーだろうか。地味なワンピースは明らかに彼と釣り合っていない。それを感じたのか、女の子が離れた瞬間勇気ある少女が彼に話しかけた。
暫く話して戻って来た時には、顔が真っ赤でポーっとなっていた。コレが骨抜きというやつだろうか。それを皮切りに、令嬢達がどんどん話しかける。
自分も行こうと思っていた時、少年がこちらに歩いてくる。自身の胸の前に右手を当て、自己紹介してくれる。
「初めまして。私は亜月ケイゴと申します。以後お見知り置き下さい。」
まさか話しかけられると思っておらず、笑顔になる。
「五十嵐李子と申します。こちらこそ宜しくお願い致します。」
その後は何を話したかも分からない程緊張した。でもお話出来たことが嬉しく、また会いたいと思った。何せ、あの中で声を掛けられたのは自分だけだったから。
それからは、ケイゴに見合う婦女子になる為に、より一層授業に打ち込んだ。しかしある時自身が対立派閥である事を知り、憧れが打ち砕かれてしまった。
それでも同じ学園に入り少しでも視野に入りたいと思ったが、その頃からケイゴは中立派閥のパーティーへ出る事が無くなり、学園でしか会えなくなった。しかし学年が違う為全く会う事は叶わなかった。
そして今年、ケイゴが高等部の教師として赴任した事では再会を喜んだが、みんなの憧れの的となり自身は埋もれてしまった。悲しいが、きっとケイゴはあのパーティーで出会った事すら覚えていないだろう。
そう思っていたのに…
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「ケイゴ先生は、社交的な笑顔以外も出来たんですね。授業以外を知らないので、びっくりしました。」
「ん?以前パーティーで少しお話ししましたよね。」
「っえ?」
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彼は一回会っただけのパーティーを覚えていた。そんな些細な事が嬉しくて、顔を赤らめてしまった。そして彼の力になりたいと思ってしまった。派閥など関係なかった。




