簀巻き事件解決
この作品に出てくる占いや暗示、催眠術は実際と異なります。ご了承下さい。
簀巻き騒動から2日、ミラとケイゴは必要最低限の会話しかしていない。ケイゴがミラの部屋へ言っても、勉強や体調不良を理由に入れてもらえない。明らかにミラがケイゴを避けているのが、家の者に伝わっている。
心配する声が、ミラの耳に届いていない訳では無い。しかし、今はまだケイゴと向き合う勇気が無いのである。
親分はしばらく静観しようと考えていたが、そろそろ「ケイゴがミラに手を出したのではないか」という憶測が上がってきてきそうな雰囲気を感じ、ミラを部屋へ呼ぶ事にした。
「おじいちゃん、失礼します。」
「ああ、入りなさい。」
「どうしたの?」
そう聞きながら手で示された座布団の上に座る。
「ケイゴと何かあった様だね。」
ミラはハッとした顔をするも黙っている。
「喧嘩でもした?」
「いいえ。私が怒らせてしまったの。」
「そうか…。でもどちらかと言えばミラがケイゴを避けてる様に見える。ケイゴは何度もミラの部屋に行っているだろ?」
「…。」
「話したくない事を無理に話せとは言わない。でもね、このままならケイゴを罰しなければならない。」
「!!なんで?悪いのは私よ!」
「…どう言おうと、ミラを怒らせたケイゴという構図に見えているからね。」
「ケイゴはいつも私の為に動いてくれてるわ。」
「分かっている。しかし、このままではどうしても罰は免れない。見せしめの意味もあるからね。」
「悪くないケイゴを罰するなんておかしいわ!」
それを聞いて親分はフっと笑う。
「そうだな。正義感の強いお前ならそう思うだろう。それなら早く仲直りをしなさい。話すチャンスを与えるのも大切な事だぞ。」
「…はい。」
親分の部屋を出て、ミラはある所に電話をする。相手は「松本修一」。
『もしもし、修一さん?』
『どうしたの?ミラちゃん。』
『…ちょっと頑張る勇気が欲しくて電話しちゃった…。』
『クスッ。僕を頼ってくれるなんて嬉しいよ。勇気が出るおまじないしようか!』
『はい、お願いします。』
『じゃぁ、先ずは深呼吸してーーー。』
電話越しに修一に勇気の出る暗示をかけてもらう。
『ありがとうございます!頑張れそうです!』
『そっか!力になれて良かった^_^じゃぁ頑張ってね!!!』
******
コンコンコン
ケイゴの部屋がノックされる。
「はい。」
ケイゴは自室の部屋の扉を開ける。そこには俯いたミラが立っている。
「…お嬢…。」
「ごめんね。今少しいいかな?」
「もちろんです。どうぞ。」
ケイゴはふんわり笑って部屋へ招き入れてくれる。ケイゴの部屋は勉強机と本棚、ベットがるのみの簡素な部屋だ。しかも本棚には難しい本ばかりで、漫画などは一切無い。
ミラが偶に部屋に来る為、大きなビーズクッションは置いてある(これはミラがお店で「気持ちいい〜」と言ったのを、ケイゴがプレゼントしそのまま置いてくれている)。
「座って下さい。お茶、持ってきますね。」
ケイゴが立ち去ろうとすると、ミラが背中にピッタリくっつき、腕を回してくる。ケイゴはびっくりするが振り向かない。
「どうされました?お嬢。」
「〜い。」
「え?すみません、小さくて聞こえませんでした。」
「…ごめんなさい。」
聞こえたと同時にケイゴは急いで振り返る。
「お嬢は謝る事なんてありません!俺こそすみませんでした!嫉妬…しました…。あまりにも他の人には見られたくないお姿で。」
「皆んなの目を汚染させてしまったよね…。」
「そんな事ありません!でも、目の毒ではありました。我々男は思春期の狼ですから、女性のあんな姿を見れば理性を狂わされてしまいます。」
「でもケイゴはーーー」
「俺も同じです!お嬢は俺を清廉とお思いかもしれませんが、いつも理性で抑え付けてます。お嬢をものにしたいと思う俺自身を。お嬢はいつもそれを振り切っていきますからね。」
諦めた様な困った笑顔で言う。
「俺も変わらない。狼です。ミラを主人では無く女として見てますし、夢の中では貴方に欲望のままに触れてしまう。」
「触れるくらいなら、いつでもいいのよ。ケイゴになら触ってもらうの、嬉しいわ。」
「俺の言う″触れる″は、性的な意味ですよ。」
ミラはそれを聞いて一瞬で茹蛸になる。ケイゴはいつもオブラートを5重くらいにしてミラと会話するので、ここまでハッキリ直接的に言う事は無い。
「(//∇//)…ケイゴになら嬉しいわ…。」
「…だから、俺の理性をぶっ壊さないで下さいね。ここは俺の部屋だと言う事をお忘れ無く。夜に男の部屋に入ったら、何をされても文句は言えません。俺が何かする前にお戻り下さい。」
ケイゴはミラの手を引いて部屋までエスコートする。ミラの部屋の前まで来ると、ケイゴはスッと手を離す。ミラはケイゴの瞳を見つめる。するとケイゴも見つめ返してくれる。そしてフワッと一瞬抱きしめられる。
「おやすみなさいませ、お嬢。」
「おやすみなさい。」




