ミラ、落ち込むの巻
ミラは落ち込みながら服を着替える。お手伝いしてくれている九条家のご年配の使用人が、そんな落ち込んだミラに声を掛ける。
「華峯様、亜月様は華峯様がご心配で声を荒げられたと思います。貴方様を大切にお思いだからこそです。あまり落ち込まれなくても大丈夫だと思いますよ。」
「…ありがとうございます。」
落ち込んだ顔でそう返すのが精一杯だった。
***皆んなの集う客間
ケイゴとミラが出て行ってから、気まずい空気が流れている。
「先輩、アレはダメですよ…。」
荒木が弱々しい声を出す。
「だって、ああいうイメージ無いでしょ?凄く似合ってたし、あんまりしない格好をしてもらいたいと思って。」
「華峯家は男所帯なんですよ!あんな格好してたら家庭内が崩壊するわ!ああいう格好は、ミラちゃんより派手な先輩の方が合うでしょ!それとも嫌がらせですか!?」
「そんなつもり無かったの!ちゃんとケイゴ君は諦めてるし、単純にミラちゃんの他の顔が見たかったというか…。」
「九条先輩のその好奇心が、俺たちを今正に死に追いやってるんですよ!!どうしてくれるんですか!」
それを聞いて周りの男子たちの顔が青ざめる。
「やっぱりそうなのぉ!俺たち殺される訳ー!?」
「じゃぁもし自分の大切にしてる彼女があの格好で出て来たら、お前らはどうも思う?!」
「「「………。」」」
更に青さを深めるメンバー達。
「俺達は大人しくケイゴにヤられるしか無いんだ…。」
お葬式の様な空に、九条は自分のした事を深く反省した。
ガチャ。
そこへ扉が静かに開かれる。全員が静まり返る。ケイゴが邪悪な顔で入ってくる。無言だ。全員が注目する中、ケイゴは前を向いて宣言する。
「帰る。」
「「「!!」」」
そしてそのままサーっと着替えて出て行ってしまう。
「ケイゴが暴れないなんて…。逆にコワッ!」
ケイゴは本来穏やかな性格ではなく、暴れる時は暴れる。ケンカも強い方だ。荒木とも殴り合った事がある。そんなケイゴが…。荒木は複雑そうな顔になるのだった。
***
コンコンコン。
控えめなノックと共に声が届く。
「お嬢様、お着替えは終わりましたか?」
その声にオズオズと扉を開けて部屋を出る。
「…はい。」
「お嬢、帰りますよ。」
有無を言わさぬ顔に、うなづくしか無かった。
「挨拶をーーー」
「いりません。既に俺が済ませました。」
「はい。」
***
家に着くと、挨拶もそこそこにミラは手を引かれ階段を上がる。そしてポーンと自分の部屋に投げ入れられてしまう。
「け、ケイゴ!?」
無言のままケイゴは去ってしまった。ミラは、話したく無い程ケイゴを怒らせてしまった事に、胸を痛めた。
***
「失礼します。親分、少し宜しいでしょうか。」
「ケイゴか、どうした?」
親分が襖を開けてケイゴを招き入れる。
「あの、急で申し訳無いのですが、しばらく友人の家に泊まっても良いでしょうか。」
ケイゴは何やら変な顔をしている。ミラと何かあった事は明白だ。修学旅行ですらミラと離れたくなくてボイコットする程度には、ミラ教なのだから。
「分かった。どこの家かくらいは言ってくれるか?」
「はい。荒木の所です。」
「分かった。早くミラと仲直りしてくれよ。お前も孫の様なものだからな。」
そう言って親分はケイゴをガシガシとなでる。
「…はい。」
ケイゴは恥ずかしそうに返事をした。
***晩御飯
ミラはタミさんと一緒にご飯を作っている。ケイゴにどんな顔をすれば良いか悩みながらシチューを混ぜている。
「お嬢様、元気がありませんがどうかされましたか?」
「ちょっとね…。」
そのへ親分が声をかける。
「ミラ、タミ、今日はケイゴはご飯いらないぞ。」
「え⁉︎」
ミラは驚く。今まで、ケイゴが外出の予定をミラに伝えない事は無かった。親分の許可を取るより先に、必ず教えてくれていたのに。
(同じ屋根の下にいるのも吐き気がする程なんだわ。)
「私もお出かけしようかなぁ。」
「どちらへ?」
「…夜の街へ。」
ミラの発言に親分とタミさんが慌てる。
「お、お嬢様!どこでそんな言葉を!」
「ミラ、わたしたちが何か嫌な事をしてしまったのかな!済まない!だから、そんな危ない所には行かないでくれ!!」
「ふふふ。ちょと友達の家に泊まらせてもらうだけよ^_^」
ブーブーブー
ミラのスマホがバイブる。
見るとナオからLINEだ。
「相談したい事あるんだって!行ってくる!」
「あ、あぁ、気をつけて。」
ミラは珍しく超早で支度して慌てて出て行く。本来親分はこんな外出は認めない。しかしナオの家は関連企業であり、内部調査もしており『ミラのお友達』として申し分無い。何より元気のないミラに配慮した。
***ナオの家
「ミラ!来てくれてありがとう!」
「ううん。私も家にいたく無かったから、丁度良かったの。」
「何?なんかあったの?」
「彼氏と喧嘩みたいな。」
「ミラって彼氏いたんだね!フリーかと思ってた!」
「内緒にしててごめん。周りには知られたく無くて。」
「複雑な事情があったんだね、ごめんね(゜o゜;;」
「こっちこそごめん!気にしないで^_^ で、相談って何?」
そこへ知らない男の人がやってくる。
「ナオ、お客さん?」
「あ、お兄様。お帰りなさい。」
「あぁただいま。」
「こちらは同じクラスのミラだよ。」
「はなみねミラです。お世話になってます。」
「いつもナオがお世話になっています。兄の修一です。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
「良かったら、オレもご飯に混ぜてくれない?」
「もちろんどうぞ!」




