コスプレの衣装は災いの元
休日。先日学園祭の出し物が決まったので、今日は衣装を決めるために九条家に来ている。
「いらっしゃいケイゴ君、ミラちゃん。」
「おい、そこはお嬢を先に言うべきーーー」
九条を睨みながら言うケイゴの言葉をミラが焦って遮る。
「まぁ、まぁ。私は気にしないし、好きな方から挨拶すればいいのよ!おはようございます、九条様。」
「お嬢!貴方もサマなんか付けなくて良いんですよ!」
「ここではただの後輩のハナミネだからね。ケイゴにとっても先輩でしょ?」
「そうですが…。」
「ミラちゃん、良いのよ、ケイゴ君は元々私たちより最初から地位が上なのは分かってたから。」
「九条先輩、お嬢の方が俺より上ですが。」
「ケイゴ、私は後輩なんだからいいの!それより学園祭の準備をしなくちゃ。」
「…。」
ケイゴは不満気だ。
「そうね!ケイゴ君はあっちね。ミラちゃん行きましょう!」
ケイゴは執事と一緒に衣装へ行く。ミラも九条に連れられて別の衣装部屋へ行く。
***
「わー!いっぱいありますねー!かわいい❤︎」
そこにはメイド服やゴスロリ、魔女服やチャイナドレスなど、多種多様な衣装がたくさんあった。
「凄い品揃えですね!凄くステキです!私、こんなにかわいい服たちを見るのは初めてです!」
ミラは凄く興味深そうに、キラキラした瞳で服の数々を眺める。
「ミラちゃんって、こう言うの好きなの?」
「好きです!!あーでも自分には似合わないので、良いなって思っても買えないんですけど…。九条様はスタイルも良いし美人だから、どれきても似合いそうで羨ましいです…。」
「ありがとう。あ、ケイゴ君も言ってたけど、サマはいらないわ。私ね、こういうのを作るのが好きでね。」
「えっ!もしかして手作りなんですか?」
「実はそうなの…。」
「えー!既製品じゃないんですね!凄すぎです!!ステキ❤︎」
「…ミラちゃんの言葉にはおだてが混ざらないのね。」
「…?だって本当に凄いですよ!端の処理とかとっても丁寧で、着脱しやすいデザインになってますし、職人の領域じゃないですか。」
「クスクス。ありがとう。…実はね、先日ミラちゃんに会った時、あまり好きになれなかったの。あ、勘違いしないで、今は違うから!ケイゴ君が連れて来て、しかも将来ミラちゃんが上の人間になるなら受け入れるしか無いでしょ。だから、友好的に接しようと思ったし、ばぁやにも言われたわ。コスプレカフェの案だって、本来はちょっとした嫌がらせのつもりだったの。そしたら意外と乗り気で…。この部屋見せてミラちゃんの嫌な一面が見れたら良かったのに。そしたらケイゴ君を取り返す布石になるかもと思ったけど…。完敗よ。ミラお嬢様、今までの無礼の数々申し訳ありませんでした。」
九条は頭を下げる。
「頭を上げて下さい!私は何も持ちません。ただ会長の孫に生まれただけです。それだけで認めろだなんて、横暴だと私も思います。だけどそれを背負って生きていく覚悟をしてこの学校に入学しました。今、もがき始めたばかりで、認めて頂くにはもっと出来ることを増やさなきゃって思っています。いつか、絶対認められたいって思ってます。だから九条様、私がちゃんとやれるか見張って下さい!!」
「ミラお嬢様、私を許してくださるのですか?」
「言葉遣いも呼び方も、今まで通りで大丈夫です。許すも何も、九条様は当然の主張をされただけです。私がもっと努力をしなければならない事を教えて頂き、ありがとうございます^_^」
(こんな器の子に勝てないわ…。)
「本当にサマはやめて下さい…。」
「はい、ありがとうございます。あの、九条先輩、私にも似合うものがこの中にあるのでしょうか…?」
「勿論あります!そうですねぇ、これとか、これとか嫌いですか?」
「!!こういうのは着たことがありませんが。とても可愛いです!でも、私で似合うでしょうか…?」
「なら着てみましょう!」
ミラは九条に勧められるがまま、たくさん着替えた。そして、それをお手伝いさんたちがスマホに納めてくれていく。
***
「色々とてもお似合いでしたが、私はこちらが1番良かったと思います。」
九条ある一着を持っている。普段ミラなら絶対に選ばないデザインだ。
「こ、コレですか!?」
「はい、だってミラちゃんの新たな一面を発見出来る衣装でしたから!絶対コレです!」
「\(//∇//)\コレは確かに可愛いのですが…。」
「ケイゴ君も好きだと思うなぁー!」
「………コレにします(//∇//)」
ミラは真っ赤になりながらも、その衣装に気が直す。
「さぁ、ケイゴ君たちはだいぶ前から衣装が決まってるみたいだから、行きましょう!」
「あの、恥ずかしいので、何か掛けるものをお借りしても…?」
すると近くにいた年配のお手伝いさんが、体をスッポリ覆える大判のストールを掛けてくれた。
***
「皆さんお待たせしました!」
そこにはそれぞれ衣装を着た班のみんながいた。九条は黒のチャイナドレスを着ており、とても神々しい。荒木が近づいてきて言う。
「九条先輩、さすが美しいですね!先輩の魅力がさらに引き出されてます!」
さすが荒木。バーのオーナーだけあり、女性への褒め言葉はスルスル出る。そしてミラと目が合う。
「どう?俺らも似合う?」
「似合ってる!いいわね!荒木君は狼男を選んだのね。」
「そう!ケモ耳楽しいね!で、ケイゴはミラちゃんおすすめのスーツね(*≧∀≦*)執事」
「ちょっとスーツじゃ無いだろ。ジャラジャラ光物が着いてて。こんな執事、現実にはおらん。」
ケイゴは気恥ずかしそうにそっぽを向きながら言う。
「藤ノ宮は警察官、斎藤は忍者。」
その他紹介してくれる。
「そしてミラちゃん、俺らも恥ずかしながら着てるんだから、観念して見せてよ。」
「………。笑わないで下さい\(///×///)」
ミラは掛けていたストールを俯きながらゆっくり外す。すると、アラビアンナイト風の衣装が出てくる。ネックホルダーになっていて首から降りてくる布は胸元で交差し背中へと流れる。大胆に肩、背中、おへそが見える。また、ロングスカートは履いているが、深いスリットが入っており、布も薄い為脚に絡みつきヒップからのラインがハッキリ分かる。そして情熱の赤。
想像の遥か上を行ったミラの衣装に、男性人は凝視してしまう。ケイゴも目を見開いたまま固まっている。そんな皆んなを恐る恐る見回すミラ。
「…やっぱ似合わないですよね!お目汚しすみせん(>人<;)」
その言葉にいち早く解凍したケイゴは、落ちたストールを素早く拾ってミラの体に巻き付け、無言で担いで部屋から出ていく。その一部始終を見た荒木たちは顔を真っ青くする。
「な、な、な、な、なぁ、俺たちミラちゃんのあんな姿を見てしまったが、命はあると思うか………?」
荒木はギコギコ音がしそうな程の固い動きで皆んなを見回す。男どもは全員顔を真っ赤にして呆けている。
(ヤバイ!俺たち命無いぞ。そしてミラちゃんは大丈夫か………。)




