パーティーの後始末
しばらく抱き合った2人。この温もりを手放さなくて良かったと思う。ミラはまだ酔っ払っていて、ケイゴの温もりと抱きしめられた安心感で、眠たくなっている。
「そろそろお暇しようか。」
「うん。」
ミラは頭を振って覚醒しようとする。ケイゴが腰を抱いてエスコートすると、足がもつれて今にも転びそうにたった。仕方なくお姫様抱っこをする。
(あーこのままで挨拶…まぁいいか。厄介事が回避出来るかもしれないし。)
会場に入るとざわざわしていた。ルカはいち早くケイゴを見つけ、近寄ってくる。
(1番目立たない所から入ったのに。)
「ケイゴ様、どちらへ行かれていたんですか?少し席を外すと仰って、ずーっとお見えにならなくて。それにその方は?」
ケイゴはミラをチラッと見穏やかに微笑む。
「彼女はただの眠り姫ですよ。」
その笑顔はミラに向けられたものだが、ルカが紅くなる。
「あの、、、ケイゴ様にお話があります。」
「それはまた今度でもよろしいでしょうか?」
「いえ、今からお願いします。そちらの方もお部屋にご案内致しますので。」
「いえ、ご迷惑になりますので、本日はお暇させて頂きます。」
すると成り行きを見守っていた当主がでてくる。
「そんな事言わないで、エスコートのお礼におもてなしさせてくれないか?」
蓮見当主の手前、これ以上は断る事ができず、部屋に案内された。ベッドにミラを優しく寝かせて、ソファーに座るルカの向かい側に座ると、紅茶やお菓子が運ばれてくる。お茶を勧められ飲まないのも失礼と飲み干す。すると2杯目が注がれる。ケイゴは、ため息をついた。
「ケイゴ様、私は貴方を慕っております。」
「ありがとうございます。ですが私などただの使用人です。ルカさんに相応しくありません。」
「そんな事を気にされていらしたの?私はケイゴ様が使用人でも気にしません。」
(あーていの良い断り文句が効かないかぁー)
「僕などより、ルカさんにはもっとお似合いの方がいらっしゃいますよ。」
「身分違いなど、気になさらないで。」
先程からケイゴは、かなりビジネスライクに喋っているが、ルカに全く効果がない。身分違いが理由だと、本気で信じている。
(はー通じねーわ。)
「僕はミラ様をお慕いしてまります。」
「え?ミラ様と言うのは、いつも一緒にいらっしゃる方ですよね?え?え?印象にも残らないお嬢様ですよね?あの方がそうなんですか?」
ベッドで寝ている人を指す。
「誰に何と言われようと、僕は彼女だけです。」
「そうですか。でも私は諦めたくありません。私だってケイゴ様だけなんです!あの方には、他にもたくさんいらっしゃるみたいじゃ無いですか。」
「例えミラ様が他の方をお慕いしていようとも、僕の心は変わりません。」
この分からず屋のお嬢様のせいか、さっきから鼓動は早く、息も荒くなってきた。心なしか顔が火照っている気もする。その様子を見たルカはニヤッと嫌な笑みを浮かべる。
そこでケイゴは一服盛られた事に気づく。
(ハァハァ、やられた…。)
「大丈夫ですか?お父様が用意してくださったお薬は、よく効くそうですわ。」
「近寄らないでください。何をするか分かりませんよ。ミラ様以外に優しく出来る気がしない。しかも、こんなものを盛られては。」
苦しそうに言うケイゴ。汗がすごい。
「私は成人していますから、何の問題もありません。少しお待ちください!」
清楚系お嬢様のはずであるルカが、お手伝いに命じて目の前でドレスを脱いでいく。そしてドレス用の下着をさっと脱ぐと、可愛らしいベビードールを纏った。白地にレースがふんだんに使われ、パックリ開いた胸元にはリボンが着いている。グラマラスな胸元が見える、と言うかこれ見よがしだ。ガーターベルトもしていたらしいところを見ると、計画的犯行だと誰でも気づく。
使用人が姿を消し、ルカが近づいてくる。そしてケイゴの隣に座り、恥ずかしそうにしている。
「お待たせしました(//∇//)」
頬を赤らめたルカが、ケイゴの手を取り自身の片方の胸に押し当てる。レースからは地肌が透けている。その感触が手から伝わってくる。
媚薬を盛られ、そもそも性欲が満たされていないケイゴが、この誘惑に勝てる訳も無かった。ケイゴの手が、ルカの胸をがっと掴む。それもかなりの力で。
「いだーい!離しなさい!」
ルカは今まで見た事も無い剣幕でケイゴの頬をはる。少し正気に戻ったケイゴは、すかさず席を立ちミラの所に向かう。今の大声で飛び起きたミラにケイゴは抱きつく。
「ミラ!」
「ケイーーー」
言う前に唇が押し当てられ、貪る様なキスをする。ミラが(食べられてしまう!)と思う程の激しさだ。そして手はミラの小さな膨らみを堪能している。キスは口から首、胸元へと落ちていき、それに伴って夜着がはだけでいく。ケイゴは既に直にミラの体に触れている。
寝起き、それも酔いがだいぶ覚めたミラは、働かない頭を何とか回転させ、状況を把握した。普段自制しているケイゴに襲われている状況を。一見乱暴だが、キスも体を弄る手もとても優しい。快楽に酔いしれそうになるミラの口から「あっ、」と甘い声が漏れる。それに自分で気づき急に恥ずかしくなる。
「ちょ、ちょ、ちょ、ケイゴ、ねぇーちょっとー!」
ミラはケイゴが下ろそうとする夜着を胸元で押さえる。ケイゴは直に触らせろと、夜着を下に引っ張る。
((ム!ム!ム!抵抗するとはo(`ω´ )o!))
2人の思いが重なる。いつの間にか両手の掌を合わせ合い、力比べの様な格好になっている。
ケイゴは不穏に笑って言う。
「ミラ、何で抵抗するんだよ。気持ちよさそうだったじゃん。ミラなら今の俺でも優しくするよ?」
ミラも似た様な笑みを浮かべながら言う。
「そう言う問題じゃ無いでしょ?私が高校卒業するまでは、キスまでにするんじゃ無いの?」
「そのつもりだったけど、薬盛られてるし、あの女に煽られてるし、たくさん心配もさせられたし、ここ2週間ミラ不足だし。これは手を出してもしょうがないでしょ?」
「\(//∇//)どう言う理屈よ!」
ミラはケイゴを見つめ顔を両手で包む。そして目を瞑ってキスをする。さっきまでのむさぼる様なものではなく、溶け合う様なキスだ。ケイゴの心も満たされる様な優しいキス。
溶け合う様なその様子を、ルカはじっと見ている。全ての髪が逆立たんばかりの物凄い顔だ。
ケイゴは自身を抑える為、一度この欲を収めないといけない。ただ、ミラを1人残して部屋を出る訳にいかないし、かと言って一緒にrest roomにいくわけにもいかない。
(どうしよう。)
「ねぇ、貴方もしかしてルカさん?」
「…そうですけど。」
「やっぱり!お噂は予々伺っていました。お美しくてお淑やかって。見習って欲しいってよく言われたわ!どうしようケイゴ、憧れの淑女にあっちゃったわ❤︎」
(あーさすが雰囲気クラッシャー)
「良かったですね、お嬢さま( ̄  ̄)」
「うん!」
ミラは何かに気づいた様に毛布を持ち出し、フワッとルカの方に掛ける。ルカは目を丸くする。
「女性は体を冷やしちゃいけないんだって^_^」
ルカはその自然な優しさにドキっとする。初めて感じた心地よい気持ち。ルカは潤んだ瞳でミラを見る。敵意が消える。
「良かったら、少しお話ししませんか?」
ミラは今まで男を虜にしてきた無自覚スマイルを向ける。
「は、はい(//∇//)」
ミラはケイゴに「トイレ行ってらっしゃい」の視線を送り、ケイゴは居た堪れ無い顔をするも、さっと退室した。




