廊下でのニアピン
元々の会場を探し尽くしたケイゴと樹は、新しい会場でミラを探す事にした。しかしケイゴはエスコート役がある為、一旦パートナーの元へ戻る。「もー待っておりましたのよ?寂しかったんですから。」などとパートナーのルカは、会場に来てからお淑やかさよりも『彼女感』を出している様な気がする。
「すみません」と言いながらも、ケイゴは不快感を募らせていた。本来ケイゴはミラだけだ。ミラしか大切じゃなく、要らないと考えている。親分の命令じゃ無ければ、ルカに愛想を振りまく必要も無い。それなのに何日もミラに会えず、メールは勉強の質問のみ。忙しいのは分かっているが、始まる前に送ったLINEの返事もスタンプのみ。しかもOKって!どう言う意味だよ!?
他の男がエスコート役で、更にミラは現在行方不明。ケイゴは限界に近い。今すぐにでもこの女を無視して、ミラを探したい。しかし『親分からの命令』というキーワードで、何とか相手をしている状態。
「でケイゴ様、ーーー」
「すみません、少し体調が優れませんので、良くなるまで休んで来ますね。」
何かを言っているルカを遮り、ケイゴはその場を立ち去る。ルカから離れたのを確認し、樹が合流する。
「どうだ、居たか?」
「いや、全く見つからない。」
「…ミラ、どこに…。」
休憩室を覗くも、そこにも居ない。他を探そうと廊下を歩いていると、ぐったりとした女性が、小犬系の可愛い男子に抱えられて近づいてくる。ドレスは水色、ピンクじゃない。そのまますれ違う。背格好は良く分からない。ただすれ違い様に「可愛いボクの子猫ちゃーん」などと気持ち悪い単語が聞こえた為、恋人同士の語らいだと判断した。
他の休憩室を覗く。
「あ!ケイゴ様!やっぱり華峯様といらしてたんですね^_^」
「Liseの店員の…四葉?というか、ミラと会ったのか?」
「はい。お料理を美味しそうに食べてらしてましたけど、ケイゴ様が他の方をエスコートしているのをご覧になり、休憩室へ行かれましたよ。」
ケイゴと樹は見合わせる。
「それはいつの話だ?」
「さっきの会場の時です。こっちの会場には来られて無いんですか?」
ケイゴの纏っている空気が、一瞬にして変わる。それも邪悪な方に。
「おい、ミラを探せ!命令だ!」
その声を聞いた休憩室に居た面々がビックリしてケイゴを見る。何故なら、ケイゴが現れてから「ケイゴ様だ!美しい。」「きゃー!かっこいい❤︎お話出来ないかしら!」と羨望の眼差しを送っていたからだ。
それがかなり怖い顔で「命令だ!」と言ったのだ。いつも印象に残らないご令嬢に仕えている時は完璧な紳士然としている。それなのにミラとか言う印象薄のご令嬢を探せとは。
「ケイゴ君、人前で主人を呼び捨てしちゃって良いわけ?」
「ミラは俺のだ。それに関係ない奴らにどう思われても問題ない。いいからミラを探せ。ただ、こんなに探しても見つからないとすると、休憩室じゃなくて誰かの個人ルームの可能性も…。」
「かしこまりました。」
レイと亮平、樹はミラを探す為、散り散りになった。




