婚約しましょう
樹がミラにハグをし、ミラは懐かしい気持ちになっていた。
「昔はよくギュッてしてもらったよね。凄く幸せな気分になってさぁ。樹お兄様にしたら、挨拶だから大した事ないかもだけど、私はドキドキしてたよ。懐かしいなぁー♪」
「ははは。そうだね。ミラはジタバタしてたよね。」
樹は日本人顔だがクォーターで、海外生活も長い為、紳士的な振る舞いが身に付いている。フィジカルコミュニケーションも多く、昔のミラは困惑する事もあったが、慣れた今となっては、気にならなくなっていた。
「でも、日本ではハグやキスは違う意味を持つだろ?良いの?」
「樹お兄様の場合は挨拶なの分かってるしいいよ。」
(あの男が気にしてるのは気づいてないのか?)
「じゃぁお兄様お休みなさい!また明日ね。」
「待ってミラ。」
樹がミラの腕を引き、自分の向きにする。その勢いでミラと樹の唇が軽く触れ合った。ミラはびっくりして目を大きく見開いた。
「え、あ、ええ、あ」
ミラは壊れた人形のように激しく狼狽えるが、樹は余裕の笑み。
「ミラ、実はミラに婚約を申し込みに来たんだよ。」
突然の話に目を見開いてパチクリパチクリしているミラ。
「…………………………え」
「うちの会社と業務提携をするんだけど、その条件が君との結婚なんだよ。」
「……ごめん。話が見えないんだけど…。」
「だから、ミラのところの家業で、海外進出分野があるでしょ?そこの支援をうちでやるんだよ。で、その支援の条件が、君と僕の結婚。だからさっきしたハグもキスも君へのギフトなんだけど。」
「えー。」
「なんなら、もう少し大人なギフトを送ろうか?」
「えっ?」
樹はミラを妖艶な瞳で見つめ、髪にキスをする。そんな目で見つめられたのは初めてで、ミラはドキドキしてしまう。
固まったミラの腕が急に後ろに引かれて倒れそうになる。そして誰かにぶつかり受け止められる。そっと視線を後ろにやると、不機嫌なケイゴがミラをガッチリ後ろ抱きしていた。




