遅れた時間を取り戻せ4
「ねぇ、誰あの子。」
「ムカつく。」
「あんなの別に難しく無いわよ。知ってるか知らないかの差でしょ?褒められて良い気になって馬鹿みたい。」
一部の女子学生がミラを睨んでいる。
「本当。ちょっとなでなでされたからって、調子に乗るなよって感じ。」
「────ではそちらの皆さん、一斉にどうぞ。せーの?」
「「「…。」」」
ミラを見てやっかんでいた人達へ急に振る講師。指された人たちはビックリした顔をした後お互いに顔を見合わせている。
「あれ?君達も当てて欲しくてしゃべっているのかと思ったら違うの?」
「「「…。」」」
彼女らは俯いて答えない。講師はフッと笑う。
「分からない時は手を挙げて質問してね。」
そしてウィンクして教卓へ戻って行く。
その後の授業もとても分かりやしく、引き込まれる物ばかりだった。今日の授業の様子をミラに付けた盗聴器から聞いていたケイゴは、授業のうまさに驚いていた。
***
「おう!ケイゴさっきからどうした?難しい顔して。」
家業の作業中、盗聴の音声に集中していたケイゴにトラさんが声を掛ける。いつもは盗聴の音を聞いていても、何食わぬ顔で仕事をこなしているケイゴだが、今日は明らかに容姿が違った。
「例の塾ですが、かなり良い授業をしていますね。とても分かりやすいです。」
「ふーん?それは良かっただろ。何で難しい顔なんだよ。」
「…ミラの頭を撫でた奴がいる。」
ケイゴは不満げだが、それを聞いたトラさんはニッコリする。
「あぁ、それはイラつくがお前達はラブラブなんだな。」
「(//∇//)」
ケイゴはそっぽを向くが、心なしか頬が紅い。
「2人が仲良さそうで俺は安心した。」
そう言いながらトラは去っていった。




