遅れた時間を取り戻せ2
「ゲンさん、この書類書いて欲しいんだけど。」
「あぁ、言ってた塾のやつですね。」
「うん。」
「分かりました。書いておきます。受講科目はどれにするんです?」
「5教科だよ。」
「えっ5教科ですか?」
「うん?ダメだった?」
「あっ!いえ、そうではなく。ケイゴに数英は教えてもらうものだと。」
「ナオが全部にするって言うから、私もそうし良いかなって。」
「承知しました、お嬢。」
部屋を出るとケイゴが壁に寄りかかり腕組みをして立っている。ミラは前を通り過ぎようとすると、腕を掴まれる。
「な、何!?」
引かれるままに階段を登りケイゴの部屋に入ったところでやっとケイゴが喋る。
「何で数英も受講するんですか?俺が教えれるのに。」
「ナオが数英は苦手だから受講したいって言うから。」
「いつもみたいに松本さんも一緒に勉強したら良いじゃないですか。対策プリントも作ってありますよ。」
ミラはふと真面目な顔になる。
「…ありがとうケイゴ。本当はケイゴもレポートがいっぱいあって大変なのに、私のテスト勉強までフォローしてくれて。」
ケイゴにそっとだきつく。
「本当にいつもありがとう。あのね、私にはイケメンで勉強もできて、私の事を大切にしてくれる良い男が居るんだって。でもナオにはいないから、1人でも多くの良い男との出会いを逃したく無いって。」
「そうやって頼まれたんですね。」
拗ねた声だ。
「どんなイケメンでも、他の人なんか見えないよ?」
「…。分かってますよ。でも不安なんです。」
「…もしかして、やきもち焼いてくれるの?」
「そうですよ。いつも焼きっぱなしです。苦しいですよ。でもお嬢の行動を制限したく無いから我慢してるんです。」
「私はケイゴだから!」
「分かってます。でも…。」
「どうしたら安心してくれるかなぁ。」
「…お嬢からキスして下さい。」
「えっ!は、恥ずかしい(//∇//)ムリムリ!」
ミラはずっとケイゴの体に回していた手をパッと放す。ケイゴは不満げだ。
「じゃぁいいですよぉー。」
拗ねた顔でケイゴはベッドに倒れ込む。顔は見えない。
ベッドが軋む。ミラが座ってケイゴの背中を優しく揺する。
「ケイゴこっち向いて。ねぇ、お願い。」
「嫌です。どうせキスしてくれないんでしょ。」
拗ねてる。たまにこういうモードがある。かわいい。
「いいからこっち向いて。」
ケイゴはシブシブ仰向けになる。するとそっとミラの顔が近づいてきて、髪が耳をくすぐる。フワッとした唇が自分の唇に触れる。そしてハムハムと唇を啄む。
(かわいい。こんなキスどこで覚えたんだ\(//∇//)\)
暫くミラからのキスを大人しく受けるケイゴ。
そしてスッーと唇が離れ、ミラはケイゴの胸に顔を埋める。
「…。」
ミラは無言だか耳が紅い。
ケイゴはフッと笑いミラの頭に手をのせて暫く撫でた。
「しょうがないから、許してあげる。」
「うん。」
ケイゴはミラの体に手を回し、ギュッと抱きしめ、コロンと寝返りを打ちながらミラをベッドにのせる。仰向けにされたミラの上には、さっきまで下で拗ねていたケイゴの真剣な顔が。
「俺を襲ったんだから、覚悟はできてるよね、お嬢?」
ケイゴは妖艶な顔でミラの瞳を見ながら、髪をひと束掬うとキスをする。
「襲ってないからー!」
「大丈夫、大丈夫。自分の性欲に正直な女の子も好きですよ。」
「せ!?…だから、ケイゴに言われたからしたんだもん!」
「誤魔化さなくても良いんですよ。大丈夫、大丈夫。」
「もー!違うってば!」
ミラの顔はずっと真っ赤だ。こうして『イケメンを堪能しに行くミラ』へのお仕置きは終わった。




