遅れた時間を取り戻せ
「何で態々塾に行くんですか?」
帰国した翌日、ナオから連絡が来た。『一緒に駅前の塾の、短期講座に行きませんか?』と。
***メッセージのやり取り
「確かに授業の遅れは心配だけど、ケイゴが対策プリント作ってくれるって言うし、勉強は何とかなりそうだから。」
「あのね、そこの塾はみんな講師がイケメンなんだって!だから、お願い!一緒に行って!」
「どうしようかな。」
「ミラは良いよね、ケイゴ先生が彼氏だから。でも私達にはそんなイケメンはおらん。足りんよ、イケメン成分が!」
「ならいつもみたいにウチで勉強すれば良いじゃん?」
「あのね、イケパラ(イケメンパラダイス→塾)は大学生の講師も多いの。ワンチャン彼氏が出来るかもでしょ!?私の恋を邪魔する気?」
「いやいやいや。でも家柄が…」
「何言ってるの!家柄の釣り合いなんて、このご時世気にしないわよ!それに、逆に燃える!」
「あ、あー。そう、なのね。」
「だからお願い!一緒に行こう!」
***
「何でって…勉強遅れてるから、短期集中講座で試験勉強を…。」
「それなら俺がいつも教えてるでしょ。」
「ナオと約束しちゃったの。」
「いつもみたいに松本さんも呼べば良いでしょ。」
「ゔぅ〜そうなんだけど…。」
「何を隠してるんですか?」
「…聞いても怒らない?」
「ことと次第によるに決まってるでしょ。」
「…。」
「分かりました。怒らない様に努力はします。」
「イケ…。」
極小さい声で言う。
「えっ?何ですか?聞こえませんでした。」
「…だから、イケメンがいるんだって。それで付き合って欲しいって。」
ケイゴの顔からサッと表情が無くなり、冷たい目でミラを見る。
(こ、こっわー。)
「…分かりました。行く事を許可します。」
ミラはホッとする。
「でも代わりに俺からのお願いと聞いてもらいますからね。」
ケイゴはそう言って部屋から出て行った。




