二度と戻れない国2
「お嬢、手を出して下さい。解錠します。」
「うん。」
ミラは手枷が付いている両手を出す。ケイゴは自分のキーケースから細い棒を選ぶ。小さな穴にそれを指してカチャカチャすると、数秒で外れる。
あれから既に待っていたアレクシスの迎えの車に飛び乗り一息つく間も無くケイゴが枷を外してくれた。
「!!コレは…。」
ケイゴはミラの手首を見て顔から歪む。捉えられた時に強く掴まれたらしい。
「あー、ちょっとアザになってるね。すぐ消えるよ。」
ケイゴはミラの手首を撫でる。ミラはその優しさに心が温かくなる。
「ありがとう。足は自分でやるから、棒貸して。」
ミラは棒を足枷の穴に入れ、苦戦しながらも10秒程で解錠する。
「えっ?ミラちゃんピッキングできるの?」
「お嬢は俺より手が小さいですからね、力が要らない物は俺より上手いですよ。」
「えっ!でも今ケイゴ様よりかかってたよね?」
「手錠はよく解錠しますが、足枷はあまりやりませんし、外国製の最新式のはなかなか出会わないですしね。」
「ケイゴでも20秒あれば余裕だと思うけど。」
「そんな事より足を見せて下さい。裸足で走らせてしまいましたから、キズができてるかもしれない。」
「大丈夫だと思うけど。ほぼケイゴに抱えられてたし。」
「お嬢足遅いんで。」
「短距離は平均的ですけど!? 」
「俺と比べたら遅いです。」
「アスリート並みと比べられても…。」
2人で言い合っていると、不意にアレクシスと目が合う。
「アレク様、巻き込んでしまってすみません。」
「いえ、私は自分から首を突っ込んだんです。それに仕事は終わってましたから。だから気にしないで。」
そう言って優しく微笑む。
「それにケイゴ様の弱点も知りましたし。まさか足枷を外すのが苦手なんて。」
「はぁ。」
ケイゴは全く歯牙にも掛けない。
「苦手なわけじゃなくて私よりは遅いってだけなんだけど…。」
「そんな事より、足を出して下さい。」
ケイゴは自分のジャケットをミラの膝に掛け、足を自分の膝にのせてマジマジ見ている。
「細かいキズができてますね。それに冷えて真っ赤です。」
そう言って自分の手でさする。
「いいよ(//∇//)ありがと!」
ミラは慌てて足を下ろそうとするが、更にガッチリ掴まれる。
「膝掛けがあるよ。良かったら使って。」
ケイゴはありがたく受取り、ミラの足に巻きつける。そして今自分の上着を改めてミラの背中にかけた。
ミラは大人しく足全体に膝掛けを巻かれ、上着も羽織る。
「もうすぐ空港だ。プライベートジェットを用意してるから、そちらに乗り換えるよ。」
アレクシスの言う通りジェット機が用意されていて、すんなりR国へ降り立つ事が出来た。
ジェット機を降りると空港からまた車で移動し、深夜に宿へ着いたらしい。その間にミラはいつの間にかケイゴにもたれて眠っていた。
「ケイゴ様、」
「様は要りません。それに敬語も。」
「ならそっちも楽に話してくれ。アレクでいい。」
「分かった。で、何の話?」
「こんな事になっちゃったけど、ミラちゃんの無実は残った者に晴らさせるから。」
「それならウチのやつと協力して欲しい。」
「あぁ、じゃぁそうさせてもらう。」
「アレク、ありがとう。」
「いや、王妃のやり方には思うところがあったからな。詳しい事はまた明日。今日はもう遅いから、ゆっくり休んで。」
「ありがとう。」




