ケイゴの本当〜過去編〜
誤字を修正しました。
『ウフフ!ケイゴ君ってエッチなんだから。』
『君のせいだ。君がこんなにかわいく誘惑してくるから。』
今日もケイゴは女とベッドを共にする。様々な情報を聞き出す為に。KAHO家の中で、ハニートラップで情報を取っているのは、多分ケイゴだけだろう。別に指示された訳では無い。この方が手っ取り早い事を、経験から知っただけだ。
自分の顔は商品になる。ミラを護るために鍛えたに過ぎない身体も、女が好むものだった。ミラの為に存在しているなら、こんな使い方もミラの為だと、好きでも無い女とただ枕を交わす。
***
「あっ!ケイゴおかえり!」
ケイゴが浴室に向かっていると、ミラが笑顔で走ってくる。
「お嬢、起きてたんですか?もう遅いですよ?」
「勉強してたの!テスト勉強頑張ってるんだから、いいでしょ?勉強してるのに注意されるのおかしいよ!いつもは勉強しろって言うくせに。」
「…それ、他の人にも言ったんですか?」
「言ったよ!だって勉強してるのに寝ろ寝ろ言うんだもん。」
「今2時ですよ。学校があるんだから、寝ないと体調を崩します。」
「今帰ってきたケイゴに言われたく無い。」
「確かに説得力はありませんが(苦笑)」
ケイゴからいつもと違う香りがする。
「…女の人のところに行ってたの?」
「…。好きな女がいるんです。」
「…好きな人の為なら何でもやっちゃうって、本当なんだね。」
「そうですね。俺は特にそうかもしれません。」
(貴方の為なら、どんな嫌な事だってしますよ。)
ミラが悲しそうな顔で見つめる。ケイゴには特定の女性がいるらしい。しばしば夜遅くに帰って来るからそれは知っていた。仕事も忙しいケイゴが、睡眠時間を削ってでも会いに行く女性がいる。それは愛の行為だと、中学生になったミラはもう知っている。この事は知らされたのではなく、何となく気づいたのだ。
「私もいつか、好きな人の為に同じ事(睡眠時間を削ってでも会いに行く)するのかな。」
「貴方は心から愛し合った方と恋をしていくのではないでしょうか。」
「…私の好きな人が私を愛してくれる事はきっと無いと思う…。それに私は家の為に利益のある人と結婚する事を望まれてるし。でもケイゴは好きな人と結婚できる!例えそれが家の不利益になったとしても、次期当主である私が味方だから。だから、その気持ちを貫いていいんだよ!」
「何を言ってるんですか。お嬢が望まない人との結婚なんて親分が許すはずありません。だから、お嬢こそ好きな気持ちを貫いて良いんですよ!?」
「…うん。ありがとう。」
(ケイゴを夢中にさせてる恋人はどんな人だろう…。ケイゴが私を受け入れてくれる事は、きっと一生ない。)
「早く寝て下さい。顔色が悪くなってきましたよ!」
ケイゴがミラの背を押して部屋へ向かわせようとすると、ミラがケイゴに抱きつく。
「ケイゴにはいつだって感謝してる。だから、どんな人と結婚しても、応援するから連れてきてね。」
ミラは今にも泣きそうな顔をしながら、精一杯笑顔を作る。
「お嬢…」
「なんか眠たくなってきた!もう寝るね!」
ミラは顔を見られない様に早口に言うと、部屋への階段を駆け上っていく。
(これ以上ケイゴと話してると辛くなりそう。)
「ケイゴ帰ったのか。」
奥の方から親分が歩いてくる。
「親分。ただいま戻りました。」
「…報告は起きてからで良い。取り敢えず寝ろ。学校があるだろ。」
「はい。」
ケイゴが階段を登り始めると、後ろから声を掛けられる。
「自分を大切にしろよケイゴ。」
ケイゴは足を止めて振り向く。
「俺ができる事をやっているまでです。」
「お前は充分やってくれてる。」
「はい…。」




