手紙4
時は戻りその日の昼間の事である。
ミラがメイド仕事の合間に休憩をしていると、昨日は会わなかった上級メイド達がキッチンに集合し、何やら議論している。
『今日の紅茶をお入れするのは私よ!』
『私もまだよ!』
『私もやりたい!!』
ミラにはまだそれが聞き取れず、ポケッと見ていると、サラが何を言い合っていたのか、ゆっくり教えてくれる。それを聞いてミラは上級メイド達に近づき話しかける。
『ケイゴ様はバルデュスがお好きなんですよ。』
その言葉に上級メイド達は少し不快そうな顔をする。
『バルデュス?初めて聞く紅茶ね。』
『バルデュスはダージリンとアールグレイのブレンドです!』
『へー。香りがケンカしそうだけど…?』
『確かなに複雑な香りですが、うまく調和するんですよ。』
『ふーん。』
『私がやってみてもいいですか?』
『…えぇ。』
『ちょっと棚を失礼します!』
ミラは紅茶の棚を開け缶の銘柄を確認していく。そして最高級のダージリンとアールグレイをそれぞれ選んで匂いをかぐ。そしてダージリンだけ他の茶葉に変えてブレンドする。
『因みにケイゴ様は熱めの方がお好きなので、丁度良い温度に冷めるよりも手前でお出しするのが良いと思います。』
『へー。よく知ってるのね。』
(あっ(^◇^;))
『ケイゴ様は日本でも有名人ですから。』
『あらー。貴方ファンなのねぇ。』
『ファ、ファン!?あー確かに大好きなのでファンではありますね(^◇^;)』
『そうよね、知識がオタクレベルだし。でもごめんね、紅茶出しは譲れないわ。早く上級メイドにおなりなさい!』
(まぁ、あんたみたいなちんちくりんには無理だけどね。)
『あ、はい!頑張ります!』
***
翌日
上級メイド達が準備をしながら話している。
『最近ケイゴ様がよく呼んでくださるの!』
『ねぇ、それって気に入られたんじゃない?良いなぁー!』
『私見たわよ。昨日抱きしめられて無かった?』
『えー見られてたの?アレは転びそうになったところを支えられて…。でも暫く見つめ合っちゃった!』
『もしかしたらこのまま専属(恋人❤︎)になるんじゃない?』
『えー!そうだったら嬉しいけど恥ずかしいよぉ。』
キャピキャピと上級メイドがしている通路の向こう側から、ミラがワゴンを押して歩いてくる。
(あっミラだわ!)
『ねぇ、ミラ?私最近ケイゴ様から良くお声が掛かるの。』
『そうなんですね!頼りにされていらっしゃるんですね!』
(良かった!ケイゴの味方がいてくれてるんだ。)
『私の事良く褒めて下さるし、この間は王宮で出されたお菓子をわざわざ持って来て下さって、私にくれたのよ。』
『そうなんですね!ケイゴ様は優しいんですね。また教えて下さい!!』
そう言ってミラは通り過ぎて行く。
(ふん!すましちゃって。本当は羨ましくて悔しいくせに!)
『ねぇねぇ、ミラって新人の癖に出しゃばって生意気じゃない?』
『まぁ確かに。』
『ちょっと立場を分からせる必要があると思うの。』
何やら不穏な空気が流れる。




