スマホさえ持っていれば4
クリスはミラの手を取りキスをする。ゲイルも倣った。
「お嬢、もう暫く無理が出来そうですか?」
ケイゴがミラの手を除菌タオルで拭きながら言う。その様子を見て皆んな苦笑いしている。
「無理はしてないよ?」
「解熱剤で熱が下がってるだけです。大人しくしてて下さい。」
そう言ってミラをひょいっと持ち上げる。いわゆるお姫様抱っこだ。
「\(//∇//)\こ、コレは憧れのお姫様抱っこ!ケイゴ出来たの!?」
ケイゴは煙たそうな顔だ。
「あのねぇ、お嬢。貴方軽すぎ。もっと食べなさい。」
「これ以上体重が増えないの。ベスト体重。」
「42kgが?」
「ちょっ!ちょっとぉー!みんなの前でバラさないでよ!!」
「大丈夫。男なんて女性の体重の重い軽いなんて分かりませんし、あの馬鹿女と強姦魔は日本語分かりませんから。」
「そう言う問題じゃない!」
ミラは顔を伏せながらケイゴの胸をポカポカ叩く。そんなミラを優しい笑顔で見る。
『本日はミラが体調を崩しておりますので、これで失礼します。紫苑、また連絡する。』
『あぁ。気をつけて。本当に申し訳ない。レニーとルシアはこちらで処分を下す。』
『あぁ。』
『え!私が罰を受けるのですか!そんな酷いです、お従兄弟様!』
レニーは紫苑に縋り付くが紫苑はルーイに目で指示し、部屋へ下がらせた。
「ミラちゃん、今日はごめんね。ありがとう。早く良くなってね。」
「紫苑さんが謝る事じゃ無いです。点滴もしてもらったお陰で大分良くなりましたし。だからそんな顔しないで下さい。」
ミラは潤んだ目で紫苑の頬に触れ様とする。その手をケイゴが掴む。
「それは許せない。浮気か。」
「だって私のせいで悲しそうだったから…。」
「そう言う思わせぶりな態度が勘違いさせるんだから気をつけて。」
ケイゴは牽制する様に紫苑を見る。その視線をちゃんと受け取った紫苑は、苦笑いしながら「じゃぁまたね。」と見送ってくれる。
トラさんが運転する車に、ミラとケイゴは乗り込む。
「お嬢、辛かったらもたれてもいいですよ。」
「ありがとう。でも大丈夫。」
ミラはそう言ったが10分後。体調がまだ悪いのだろう。ミラはすっかり寝てしまい、ガラスに頭を打ちそうになる。慌ててミラの頭を自分の肩に乗せる。
「ケイゴ、お嬢が回復したらちゃんと話した方がいい。お前がお嬢を大事にしてる事を俺達は良く知ってる。だからお前の怒りも分かる。俺ですら…でもお嬢と一緒にいるためには俺達は一線超えちゃいけない。」
「…はい。」
(俺が独り立ち出来てないからミラがこんな目に遭った…俺のせいだ…。)
***
「ケイゴ、お嬢を部屋へ運んでくれ。俺は報告してくる。今回の事はお嬢にとっても辛いと思うから、箝口令を敷くつもりだ。」
「はい、お願いします。」
ケイゴは言うのも憚れる言葉を口にしなくて済む事に安堵し、ミラを部屋へ運ぶ。ゆっくりベッドに寝かせ、その穏やかな顔を覗く。
「守れなくてごめん…。」
ケイゴはミラの頭をフワッと撫でながら呟く。
コンコンコン
開いたままの扉を、遠慮がちにノックする音がした。
「タミさん…。」
「ケイゴ君、お帰りなさい。大変だったわね。」
「…。」
***
「そうか、ミラが学園で襲われたか。もうあそこも安全じゃ無いな。そろそろ家庭教師に切り替えるか。」
「親分は学生をさせてあげたかったのでは?」
「そうは言っても身の安全が第一だからなぁ。」
「校内でもボディガードを付けますか?」
「特例を認めさせるのは容易いが、便宜を図られたらこちらも便宜を図る必要が出てくるからなぁ。」
「それなら同い年の同性ですごい人物を雇うとか。」
「うーん。ミラがどうするかが先決だと思うが。」
「…お嬢の通い方を考える前に、校内の掃除が必要だと思います。」
「ケイゴ!」
2人の会話に、いつの間にかやってきたケイゴが声を掛ける。
「明日、校内清掃へ行って参ります。それが終わるまでお嬢はリモートで申請しておきます。」
「分かった。でもミラの意見が第一だからな。」




