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ワルい男に誘惑されてます。〜天然系お嬢はイケメン893?に護られて、ドキドキな青春を過ごします。  作者: 華峯ミラ


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スマホさえ持っていれば3

応接室には紫苑、紫苑の父親である外交官のクリス、その弟であるゲイル(同じく外交官)、その娘のレニーと執事のルシア、そしてケイゴがソファーで対峙している。重い沈黙が流れている。口火を切ったのは紫苑だ。


※『』内はA国の言葉です。ミラはA国語は話せません。ケイゴは以前留学していたのでペラペラです。


『父上、ゲイリー、急遽お呼び立てして申し訳ありません。』


『いや、お前が呼ぶのは珍しいからな、どれほど緊急かと思って────』


『緊急です。なんせKAHO家の跡取り娘がハリス家の執事に襲われたんですから。 』


「「「!!!」」」


『今のどう言う意味だ!襲われた!?』


ケイゴの表情と声に殺気を感じる。


『ち、違います!』


剣呑な空気を読まず、レニーが紫苑に説明した通りの説明をする。


『看病して貰ってるのを良いことに、ミラさんが私の執事であるルシアを誘惑したんです!素朴な見た目ですし、男性に飢えていたのでしょうね、きっと。』


ケイゴは鋭い眼差しでレニーを睨み、レニーは怯む。その中で声を上げたのはルシアだ。


『本当です!私はお世話をさせて頂いただけですのに、キスや身体への愛撫を強要されました。』


紫苑は恐ろしい物を見ていると言う顔をしている。紫苑の父親は顔面蒼白だ。そしてケイゴは表情を失くしワナワナと震えている。


『そうか。分かった。つまりお前たちはミラに無理やり強要され、キスや身体を愛撫したと、そう言いたいんだな。』


ケイゴは怒りに身体を震えさせる。


『『そうです!』』


『…紫苑』


紫苑はケイゴに視線を送る。


『こいつら抹殺してもいいか?』


物凄く冷徹な目で2人を睨むケイゴ。


『正直ボクも同じ気持ちだな。でもミラちゃんはそれを望まない。』


『あぁ、そうだろうな。でも今ならミラは知らないからな。』


紫苑は覚悟した様に口を開く。


『叔父様、カホウミラさんは本当の婚約者ではありません。』


『え?』


『彼女は亜月ケイゴの婚約者です。ボクは彼が独り立ちするまでのカモフラージュです。』


『『…。』』


『ではお兄様はご婚約なさっておりませんの?』


レニーの顔が明るくなる。


『あぁ。』


『なぁーんだ!良かった!でしたらあの女に執着する必要ありませんわね!』


レニーは空気を読まず1人嬉しそうだ。


『お父様、私お兄様と婚約者したいわ!話を進めて下さる?』


『確かに彼女はボクの婚約者ではないが、KAHO家のお嬢様に手を出したと知られれば、ハリス家だって消されかねませんよ。』


『そんな事をしたら外交問題だろ?』


叔父は馬鹿な事をと言う様子だ。


『でも残念ながら、既にKAHO家にバレてますから、この後どうなるか分かりませんよ?』


紫苑はケイゴに視線を送る。


『レニーとか言う馬鹿女と、ルシアとか言う強姦魔をよこせ。警察に突き出されるより恐ろしい所に送ってやる。』


『なっ!貴方無礼じゃございません?初対面の私を馬鹿女なんて!それにルシアは強姦魔などではありません!』


『へー。高熱を出している人間の体に触る事が強姦にならないと?』


『誘惑してきたのよ!』


『そうですよ。彼女も感じていましたよ?気持ちよさそうに声を上げて。』


それを聞いた瞬間、何かが弾けた様にケイゴはルシアの胸ぐらを掴んでいた。裏社会の目をして。


レニーよりルシアの方が遥かに頭が切れるらしい。ここでケイゴを挑発し、ペースを乱そうとする。


『流石ですね。今は正業でも昔は裏関係の仕事をされていた家の方だけある。まるで殺人者の目だ。ふふ。ミラ様のお胸を舐めさせて頂きましたよ。それは甘い果実の様に私を誘って、実に甘美だった。』


『貴様!』


ケイゴはルシアの首をギリギリと締め上げる。しかし苦しそうにしながらもルシアは微笑み舌なめずりをする。


『ミラ様はどこを舐められると感じるのですか?先端?それとも…蜜の出るところでしょうか?』


あまりに聞くに耐えない。殴りたい衝突に駆られるが、すんでのところでミラの顔が浮かび、なんとか堪える。


『ケイゴ様だって自分の顔がいい事に、色々な女性を誑かしてきたでしょう?』


確かに仕事上でハニートラップを仕掛けた事は何回もある。しかしそれはあくまでも仕事上だ。それに女性から触れてくる事はあっても、自分からは絶対に触れない。


『貴様と一緒にするな。』


地を這う様な恐ろしい声。


2人の様子を見ながら、紫苑の父親と叔父はさっきから真っ青だ。特に叔父に関してはかわいそうならくらいの顔色だ。


『ケ、ケイゴ君、ハリス家当主として謝罪させて欲しい。申し訳ない。』


ハリス家の当主クリスが頭を下げる。それを見て慌てて弟であるゲイルも倣う。


『お前も頭を下げろ!』


ゲイルはレニーも無理やり頭を下げさせる。


『嫌よ!お父様!私がなぜ!?』


『お前、KAHO家のお嬢様を強姦させたんだろ!』


『違います!何故信じてくださらないんですか?』


『お前は昔から紫苑君に憧れていて、婚約発表した時も憤慨していたな!KAHO様は色々な所にツテがあるんだぞ!KAHO家に睨まれたら、もうこの国相手にやっていけない…。』


『そんな!』


『あぁ、もうハリス家は終わりだ。』


クリスも苦渋の表情だ。


「お待ちください!」


そこに清廉な声が届く。戸口にはミラがトラさんに支えられて立っていた。話はトラさんが分かる範囲で訳してくれた。


「ミラ!寝てろ。」


ケイゴがルシアを投げ捨ててミラを支える。


「私はそんな事望んでないわ。ケイゴ。」


「あぁ、貴方はそう言うだろうな。でもやった事は強姦だ。」


「でも私のせいでたくさんの方が路頭に迷うのは本意ではないの。お願い。」


ミラはケイゴを見つめる。


「…。でも俺は許さない。」


「ねぇ、レニーさんは、紫苑さんが好きなんでしょ?偽の婚約をしている私にも責任があるわ。」


「…。」


「ね?全てレニーさんが悪いとは言えないでしょう?」


「でも君が汚された!」


「犬に舐められた様なもんよ!」


「い、犬?」


その言葉に全員が惚ける。


「犬…。」


ケイゴはその言葉をもう一度口に出してみる。


「ねぇ、被害者は私だから、お仕置きも私が決めていい?」


「…。」


ミラはみんなに向き直り笑顔を向ける。


「初めまして、カホウカ ミラです。この度は私のせいで多方面にご迷惑をおかけしました。」


ミラは淑女の礼をする。


「ハリス家の皆様には、私のお願いを聞いて頂きます。でもそれは今ではありません。時が来た時に私のお願いを聞いて頂きたいのです。宜しいですか?」


それは疑問形だが疑問ではなく決定事項だ。それにクリスが答える。


「もちろんです。我々の持てる力全てでお願いを叶えさせて頂きます。」


クリスはミラの手を取りキスをする。ゲイルも倣う。


「お初にお目にかかります。ゲイル ハリスと申します。私も持てる力でお応えさせて頂きます。」


そう言って手の甲にキスをした。

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