事件のオープニングはいつも良い事があった後
その頃KAHO家ではちょっとした事件が起きていた。それは、ミラ宛に届いた手紙だ。差出人はJoelと書いてある。家人達は親分に相談し、ミラへの私信ではあるが断る事なく開封する。
それはパーティーの招待状だった。
「えっ!」
差出人が「Joel」としか書いていない事も不審だが、日付を見て驚く。
「1週間後⁉︎」
「どう言う事だ…?」
「もしかしてお嬢、誰かと口約束でもしてるとか?」
「そんな話聞いてないわよ?」
皆んな口々に言うがミラが帰ってこない事には分からない。
「…お嬢は今日ハリス家に泊まるんだろ?1週間後なら早く教えた方が…。」
「ケイゴが行ってるから伝言を頼もう。」
***
ケイゴのスマホが鳴る。ミラは目で電話に出る事を促す。
『はい、ケイゴです。えぇ、そうです。どうぞ────────えっ!はい、はい、…わかりました。』
電話が終わったケイゴは明らかに動揺し辛そうな顔をしている。どうやら不測の事態が起きたそうだ。
「…どうかしたの?」
絞り出すかの様に話す。その後に覇気はない。
「…ミラ宛に…手紙が届いてる…。」
ミラもその空気を受け取り、どこか固い表情だ。
「…うん。」
「パーティーの招待状。」
「うん。」
「…1週間後だ。」
「!!1週間後!?」
「あぁ。しかもJoelという人物から。」
「Joel?A国の要人にそう言う名前の方いたかな?」
「いや、居ない。Joelは匿名希望という意味だ。」
「そうなんだ。イタズラなんじゃない?私A国に関係無いし。」
「…紫苑の婚約者だと思われてるだろ。」
「あー。でもそれなら1週間前に招待状が届くなんて変じゃ無い?お茶会なのかな?」
「…いや、1週間後と言えばA国主催の舞踏会だ。」
「…何で急遽私を?」
「…。」
ケイゴは答え無い。しかし始終辛そうな顔は消えない。
「まぁいっか!分かった。急いで帰って準備しよ!」
「え?」
「ほら早く!」
ポカンとするケイゴを引っ張りハリス邸を出たミラ達は、急いで帰宅した。ケイゴが招待状を調べた結果、本物だと判明し急いで準備に取り掛かる。
衣装とメイク合わせ、ダンスレッスン、マナー講座、A国の授業。これらは普段から習っている(タミさんやトラさん)が、一つミラを悩ませたのはコレ。
『手作りのお菓子を何か一つお持ち下さい。』
と言うもの。
「お菓子作りは得意じゃ無いんだよね…。」
「手の込んだ物じゃなくて良いと思いますよ?」
「うーん…。」
「 ciel RoZeに頼んでみましょうか?」
「あっ!ナイスアイディア!」
ケイゴはciel RoZeのパティシエを呼んでくれるが、その後はA国の公爵令嬢のおもてなしで、日中はいつも居なかった。
そしてあっという間に当日となる。




