インターン10
「あんた、いいのかよ。」
「何、急に?」
ケイゴは言葉を発したゆづきには目もくれず、ティーセットを片付けている。ミラは仕事をしに既に課へ戻った後だ。
「だからぁ────」
ケイゴは逡巡してから答える。
「俺らは恋人じゃ無い。」
「…は?だってさっき!嘘なのか!?」
「ああ、厳密に言うと…婚約者だ。」
「……いや、意味わかんねー。」
「将来結婚する約束をしていると言う意味だ。」
「ば!言葉の意味は分かっとるわ!そうじゃ無くて!」
「恋人だけでお前が引くと思わなかったから。」
「いや、何で恋人と言ったかを聞きたい訳じゃなくて。」
「いい。お前とは長い付き合いになりそうな気がするからな。」
「なんで…?」
「ただの勘だ。ミラに纏わりついてしつこそうだし。」
「何だと?」
「お前気づいてるだろ?ミラがKAHOの人間だって事。」
「───やっぱりそうなんだ。」
「ああ。」
「お嬢は隠してるつもりだから知ってる事は秘密な。」
「…他のやつは?誰にバレてるんだ?」
「お前が会えるレベルの人達は当然知らない。」
「亜月ケイゴには会ってるけど。」
「俺はお嬢の付き人だからな。お嬢の行くところに常にいる。」
「ストーカーかよ。」
「それに幸せを感じているのがミラと言う女だ。キモいならちょっかい掛けるな。」
「…悪いがこんなに女に興味を持ったのは初めてだ。」
「そうか。今までは男しか興味が無かったのか。個人の自由だし俺は気にしない。」
「な訳ーねーだろ!何なんだよ!イライラすんなぁー。」
「悪いがそろそろ帰れ。俺は忙しい。」
ケイゴはティーセット乗せたワゴンを押しながら出て行こうとする。
「ちょっと待て!いや、待って下さい!」
「何だよ?急に殊勝な。」
「ミラの近くにいるにはどうしたらいい?」
ケイゴはチラッとゆづきを見る。
「…さぁな。ずっとKAHOのモデルができる様にオーディション頑張れば?そしたら稀に会えるかもな。」
「稀!?」
ケイゴはゆっくりゆづきに対峙する。
「俺は優しく無いからな、他人に塩は送らない。だから自分で考えてミラに認知されるんだな。まぁミラは俺にゾッコンだし俺も譲らないから。」
その表情を見てケイゴの本気度を感じ取り、一瞬怯む。
「俺も諦めません。」
「…好きにしろ。」
ケイゴはそう言い残し出て行った。




