インターン5
2人の絡みを見ているスタッフ達は、その美しさに見惚れてしまう。
ゆづきの大人な色気。それに惑わされないミラの、全てを見通した様な表情。それはまるで、悪魔の存在など知らぬ神の愛し子が、全ての危険から守られているかの様な高潔さだ。
それに引き換え、ランジェリーになる前のミラは、周りの人が恥ずかしくなるくらい真っ赤で、純粋な乙女が目の前に現れた大人の階段を戸惑いながら見つめる様な感じで、知らず知らずのうちに加虐心を掻き立てる、そんな表情をしていた。
***
ミラが今日カメラリハーサルで下着になった事は、すぐに親分に伝えられて、写真のデータも既に渡されている。
「親分どうしますか?」
「…ミラ次第だな。」
「ケイゴは納得しませんよ?」
「…だろうな。でも、インターンしてる子がモデルをやるなんて話題性もあるしな。ミラがやりたいんならやらせてやれ。」
「分かりました。ケイゴはどうします?」
「うーん。ミラと2人で話をさせろ。」
「はい。」
その晩、ミラとケイゴは深夜までモデルについて話し、ある条件のもと、結局ケイゴが折れるかたちとなった。
***
撮影本番前、スタッフと言い争う声がする。
「は?だから何で急にバラシ(仕事が頓挫する事)になるんだよ!」
「ですから事務所の方にも申し上げました様に、モデルの変更がありまして…。」
ゆづきに詰め寄られているスタッフは真っ青だ。
「オレに何の問題があったのか言ってみろ。」
「ですから、ゆづきさんには何の問題もありません。今までの分と違約金はお支払いしますから。」
「そんなの納得できねーよ!」
そこにある人物が声を掛ける。
「あの、ゆづきさん!」
ゆづきは勢いよく振り返る。
「あぁ?」
その感じにミラは縮こまるが、意を決して伝える。
「ゆづきさん、申し訳ありません。えーっと、下着で写真を撮ることに、どうしても家族の許可が降りず…違う方となりまして…。」
「はぁ?違うやつとなら下着で抱き合っても許されるのかよ!」
「あーえぇっと、まぁ。」
ミラは目を泳がせるしか無い。
(普通なら相手役いかんに関わらず、下着モデル自体NGだからなぁ。)
そこにコツコツと小気味良い靴音がする。それは会社なのにスーツ姿では無いケイゴだった。
「悪いが、うちの生徒と下着で抱き合うのは勘弁してくれ。」
「あぁ?」
「彼女はうちの学校の生徒で、更に俺が副担任なんだ。」
「はぁ?教師は黙ってろ。」
「悪いが黙らないよ。彼女と撮影するのは俺だから。」
「…は…?」
「だから、ハナミネ ミラと絡むのは俺。そちらはお引き取り下さい。」
「何でお前なら良いんだよ!担任なんてウザイだけだろ!」
「別に副担ってだけじゃ無いけど。まぁ君には関係無いから言わないけど。」
「さっきから聞いてれば良い気になりやがって!お前より俺の方がミラに良い顔させられる自信がある。」
「悪いけど、君みたいな子供には無理だよ。」
「ちょっ!、ちょっと先生…。」
ミラはそんな2人に苦笑いである。
「ねぇ、いっそのこと3人で撮ったら良いじゃ無い!」
そこに「ナイスなアイディア思いついた」とばかりに宮代が話しかけてくる。
「えっ!」
ミラは驚きの声を上げるが、他2人は何故かやる気である。
「僕は構いませんよ。」
「おぉ、望むところだ!」
ケイゴもゆづきも何故かやる気満々で、ミラが断る余地は無かった…。




