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ワルい男に誘惑されてます。〜天然系お嬢はイケメン893?に護られて、ドキドキな青春を過ごします。  作者: 華峯ミラ


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ケイゴと喧嘩7

意識が浮上する。鼻を薬品の匂いがかすめる。


(病院?)


目を開けようとするが開かない。瞼が何故か動かない。体を起こそうとするが力すら入れられない。唇も動かせない。


(ダメだ。起きてるのに声も出せない。)


コンコンコン


ノックの音が聞こえるが、返事が出来ない。しようにも唇に少し力が入るだけで、多分動いていないだろう。


スタスタと足音がする。ベッドサイドに静かに座る。不意に頭を撫でられる。その手つきは愛おしそうだ。


(ケイゴ…。)


手の温度で分かってしまった。いつも私を大切にしてくれるその暖かな手だ。


「えっ!お嬢?」


気づくと涙が一筋頬を伝っている。目を覚さない私に一瞬動揺したケイゴだが、優しく涙を拭ってくれる。


「どうして貴方がこんな姿になるんですか!距離を置こうって言ったのは貴方のくせに。こんな風にする為に俺は離れたんじゃありません。…この一週間、俺がどれだけ辛かったか分かりますか!愛しい女性を忘れようと努力するのに、すればする程、貴女の居ない世界はどんどん虚無に覆われていきました。…貴方から離れるなんて、、、もう、、無理だ…。」


(私も。)


そう唇を動かすけど多分全く動いていないのだろう。


(聞こえてるのに体が動かせないなんて…!)


小さなノックの後扉が開く。


「お嬢様はどうだい?」


「教授(主治医)。まだ目が覚めません…。」


「そうか。もう暫くすれば起きると思うけどね。」


「…はい。」


***


あれから30分くらいだろうか。体がだんだん軽くなって来た。すっと目が開く。


「ケイゴ?」


「ミラ!」


ミラがゆっくり体を起こす。


「まだ寝てて下さい。大丈夫ですか!」


「大丈夫よ。」


ケイゴは体を支えて座らせてくれる。


「…。」


沈黙が流れる。


「なら俺は行きます。今日はここで入院です。」


ケイゴは立ち上がり出て行こうとする。


「待って!」


ケイゴを追いかけてベットから出ようとしたミラは、急に動いた事で目が回り転がり落ちそうになる。そこを慌ててケイゴが支える。


「何やってるんですか!」


「ごめん。」


ミラはそのままケイゴを放さない。


「待って。…あのね、私ケイゴが居なきゃダメだった。」


「…。」


「独り立ち出来ない私は、ケイゴの隣に立つ資格無いよね…?」


「…俺と一緒にいるのに、資格とかいるんですか?」


「いるでしょ!」


「どんな資格ですか?」


「美人でスタイル抜群で、文武両道品行方正なお色気ムンムンのお嬢様。もちろん菩薩のような朗らかな性格で自立してる。」


見つめ合い少しの間が流れる。


「あははは!貴方よく今まで俺の婚約者やってましたね!」


「ムっ!だから理想とかけ離れてる自分が嫌で距離置いたんでしょ!」


「フッ。それなら俺もイケメンで文武両道で品行方正、逆三角形のムキムキ紳士じゃないとKAHOのお嬢様には釣り合いませんね。」


「…ケイゴの場合は逆三角形のムキムキ以外は充分満たしてるじゃん!」


ケイゴはまだ肩を震わせている。


「お嬢には俺がそんな超人に見えてるんですか?」


「皆んなにそう見えてると思うよ。」


「ハハハ。そんな事全然ないですよ?お嬢の前ではかっこよくいたいのに、情けない姿ばっかり見せてますし。」


「???そんなとこ見た事ないけど…?」


「俺からしたらお嬢だって、美人なのに可愛らしくて、勉強も頑張ってて、正義感が強いくせに危なっかしくて天然で。唯一無二の理想の女性ですよ?」


「…全然私の人物像と一致しないんだけど…?」


「そうですか?俺は貴方を理想の女性と思っているのでいいんですよ。」


ミラは自分の体を見る。


「…胸大きく無いよ?」


ケイゴはおかしそうに笑う。


「肩が凝らなくていいじゃないですか。」


「文武両道じゃ無いよ?」


「苦手なところは補い合えばいいでしょ?」


「美人でも無い。」


「俺には美人だし可愛いしステキな女性に見えてますよ。俺だけがお嬢の魅力を解ればいいんです!!寧ろ他のやつには知られたく無い。」


「…私が付き合って欲しいって言ったら、どうする?」


「もちろん付き合いますよ?」


「おじいちゃんがいるから?」


「いいえ。貴方を愛しているからです。じゃぁ俺からも聞きます。もし俺が結婚してくださいと言ったら、貴方はどうしますか?」


「私も同じ気持ちって答えるわ。」


ケイゴは自分の腕時計を取ってミラの左手首に付けながら言う。


「そうですか。なら婚約者になってくださいますか?」


ケイゴは朗らかな笑みを浮かべている。


「同じ時間を一生一緒に過ごして下さい。」


ミラの頬に涙が伝う。


「は、はい。」


ケイゴは優しくミラを抱きしめる。その夜からミラは徐々にご飯が食べられるようになり、3日後に退院した。

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