ケイゴ視点:ついに言われたら
さぁ、おたのしみの修羅場です!
今日から来た教育実習生のせいで、とても忙しい。何故なら、結城が指導係になってしまったからだ。結城の仕事の一部がケイゴに回ってきた。
(副担だから仕方ないか。それはいいけど…よりによって真綾が来るなんて…。しかもうちのクラスに。)
真綾とケイゴは、高校時代付き合っていた。真綾から告白してきたが、当時ミラとの恋愛が無いと知り自暴自棄になっていたケイゴは、たまたま告白してきた年上の優しさに甘えてしまった。
真綾はスタイルが良く胸も大きい。顔もキレイで有名だった。学園の有名人と付き合えるのも悪く無いと思った。そして、初めての相手としてもとても良かった。彼女は良く知っていたから。
でももう昔の話。今はミラと両思いのケイゴは、真綾とのことは正直忘れたい思い出なのだ。それより、ミラが真綾と接して嫌な思いをしないか、それだけが心配だった。
(早く話を聞かないと。そして真綾のことを話さなきゃいけない。)
やっとの思いで仕事を終えて帰宅した。階段を登る足が重い。
ミラの部屋をノックするが、なかなか返事がない。
(どうしたんだろう。早く会いたい。抱きしめたい。)
「お嬢?入りますよ?」
そう言いながら、俺は入った。何となく空気が思い気がした。
「?どうされました?扉の前で立ち尽くして。」
そう聞くと、ミラは一瞬表情を変えた。
「立ち尽くしてた訳じゃ無くて、開けようとしていたのよ。ケイゴお帰りなさい。」
「ただいま。」
いつも通り抱きしめた瞬間、ビクッとなり固まっている。そんなミラを見て確信した。やっぱり何かあったと。
(何だ?真綾に何か言われたのか?それとも他の男絡み?)
「いつもと違いますねぇ、何かありましたか?」
「別に?ちょっと太ったからギュッとされるのやだなと思っただけ。」
(太った?太り辛い体質なのに?誰かに言われてショックを受けたってこと?)
「そうですか?全然変わりませんけど。というか、もっと食べて下さい。細すぎます。俺はもっと太い方が好みですよ。とくに胸周りは。」
少しおちゃらけて言ってみる。しかし、返答におちゃらけの色はなかった。
「あはは。セクハラですよ、先生。」
(太った訳じゃなさそうだな。何だ?分からん。誰かに何かを言われたのは確かだろうな。)
「何ミラ?今日は先生と生徒ごっこなわけ?」
ケイゴは思いっきり誘う様に甘い笑顔でキスをしようとしたが、ミラは体を少し引き、顔もやや背ける。
(俺のペースには巻き込まれないか。つまりそんなメンタルじゃ無いと。)
「あー今日はもう眠たいんだ!だから、お休み!」
(わざとらしすぎだろ…。素直に聞くしかなさそうだな。)
「どうした?学校で何かあったの?俺には言えないこと?」
ミラが俺の胸を押して離れようとする。俺は左腕で強くミラを引きつけ、右手で顎をすくい目を合わせた。
(やっと瞳があった。)
しばらくの沈黙の後、静かに、しかし強い瞳でミラは言った。
「一人にさせて。」
ミラの瞳には拒絶の意思が宿っていた。これ以上話をする勇気が俺にはない。
こんな瞳は初めてだった。
(もしかしてミラは、俺を嫌いになったのかもしれない。)




