ケイゴと喧嘩4
ケイゴに付き添われて家に帰って来た。そこは既に起きている家で、他の人達は皆んな朝のお勤めに出ている。タミさんも大勢の料理を1人で作っている。
ミラが手伝いに行こうとするが、ケイゴが必要ないと言った。ミラは諦めて客間のテーブルに座る。ケイゴが柚子ハチミツティーをミラに出しながら向かい側に座る。
「お嬢、二度と勝手に外出しないと誓ってくれますか。」
その言葉は疑問系やお願いではない。有無を言わさぬ命令に近い。
「はい。心配掛けてごめんなさい。」
「分かって下さったならいいんです。」
「…酷いことを言った件も反省してます。」
「はい。気にしていません。それより俺がやりすぎてしまった事は、すみませんでした。」
「ケイゴは本当に悪くないから謝らないで(゜o゜;;頭が冷えたら分かったの。私ね、ケイゴに甘えすぎてたの。このままじゃダメだと思う。」
「…どう言う意味ですか。」
「…少し距離を置かない?」
その言葉を聞いた瞬間から、ケイゴの眉間の皺が凄く深くなった。
「…婚約を破棄する、と言う意味ですか?」
ケイゴはあくまでも淡々としている。
(やっぱりケイゴは私との婚約はあまり乗り気では無かったのかも。)
「その方がケイゴも自由になれるよね。」
「…それは貴方が私から解放されたいと言う意味ですか?」
「…一度距離を置いて考えたいの。私の本当の気持ち。」
「…本当の気持ちとは、俺を好きかどうかと言う事ですか?」
ミラは俯いたまま黙っている。
「分かりました。俺は…暫く帰りません。」
ケイゴはスクっと立ち上がりミラを振り返らずに立ち去る。ミラは引き留める言葉が見つからず、立ち尽くすしか無かった。
(私のせいで有能なケイゴの居場所が…。)
その日からミラの本当の笑顔が影を潜めていった。
***
「ねぇミラ、ケイゴ先生と何かあった?」
「何かって?」
聞き返すと不快そうな顔をさせる。
「明らかに2人おかしいじゃない?」
「そうかな?」
「おかしいよ!2人が付き合ってるって聞いてから、ケイゴ先生を観察してたんだけど、必ずミラを視界に入れてるの。でも最近はそんな素振りが無い。ケンカでもした?」
「…距離を置いた。」
「………は!?な、何で?」
「私が甘えすぎてたから。こんな子供じゃ一緒に居る資格ない…。」
「子供って、6歳も離れてたら子供なのはしょうがないじゃん!私達まだ高校生だよ!」
「…。」
「ねぇ、このまま他の人と付き合っちゃったらどうするの?」
「…ケイゴがそうしたいなら…。」
「いいの?本当に?本当にそれで後悔しない?」
「…少し落ち着いて考えたいの…。」
キーコーンカーンコーーーン
「予鈴だね。戻ろっか。」
ミラはサッと荷物を片付けて部屋を出る。
「…そんな今にも泣き出しそうな顔してるくせに。」
そんなナオの呟きは、ミラには届かなかった。




