元カノ現る!
学校のリズムにもクラスにも慣れた頃、教育実習生が来た。
女性の先生で大学4年生。教育学部でケイゴの先輩に当たる。
「今日から2週間お世話になります荻野真綾です。みんなと年も近いので、真綾先生って呼んでください!気軽にお話してね!」
(最近も聞いた自己紹介だな。テンプレでもあるんだろうか。)
そんなことを考えていると、ザワザワとしていることに気づいた。男子が色めき立っている。
(分かる!美人で笑顔がステキだもんね!仲良くなれたらいいなぁー。)
ミラがそんな事を考えていると、不意に目が合う。ミラは嬉しくて微笑んだが、真綾はキッと睨んできた…気がした。
(気のせいだよね…?)
休み時間中、真綾先生は男女共に大人気!ケイゴ以上である。ミラは遠巻きにその様子を見、漏れ聞こえる話を聞いていた。
色々質問攻めにあっているが、みんなの関心はコレだ。
「先生ってモテるよね?彼氏いるの?」
「全然モテないし、いないわよ。」
「そっかぁー。じゃぁ、俺なんてどう?」
「ウフフ。ありがとう。でも好きな人がいるの。高校時代から、ずっと思ってる人なのよ。」
そう言って微笑んだ顔は、とても妖艶で美しい。男女問わずうっとりとさせてしまう力がある。
(何てステキな方だろう。)
ミラもポーッとたり、憧れてしまう。
「先生って一途なんだね。その人に告らないの?」
「一度は彼と付き合ったわ。でも、家庭の事情で結婚相手を決められてしまったらしくて、相手の策略で無理矢理別れさせられたの。でも私は彼をいつでも待ってるのよ。」
「えー真綾先生かわいそう。その女最低ですね。腹立って来た!今、その彼と最低女はどうなってるんですか?」
「彼はその子の実家で一緒に暮らしてて、雑用をさせられているらしいわ。」
「好きでもない女と暮らしてる何て、彼氏さんもつらいですね。先生は彼氏さんに会ってないんですか?」
「ええ、私に危害を加えるかもしれないから近づくなって…。今でも私たちは愛し合ってるのよ。早くその子が彼からの愛情がないことに気づいてくれるといいんだけど…。」
その哀しげな顔は美しく、正に守ってあげたい欲求をくすぐる。
「実はね、ケイゴ先生のことなの。」
(えっ………ケイゴ?え?え?ケイゴって真綾先生が好きだったの?嘘でしょ……そんな…。)
漏れ聞こえた会話を聞いて、ミラは混乱した。ケイゴは自分の恋人だったはず。彼の高校時代は付き合っていなかったが、私たちはいつのまにかお互いを意識して、気持ちを伝え合ってきた。昨日も。でもよく考えたら、『付き合う•付き合わない』の約束はしていない。私たちは口で『好き』と伝え合っているだけだ。
(私たちは付き合ってない…んだ。親分の孫だから仕方なく私に合わせているだけで、本当は心に決めた方がいるんだ…。だから、ケイゴはキス以上したがらない。本当はキスもしたく無かったんだ…。ケイゴ…好き…なのに…。)
その日の授業はずっとうわら空だった。
修羅場近し。がんばれケイゴ




