パーティー当日5
4人が会場に戻ると、待ってましたとばかりに紫苑・ケイゴ・美琴はお嬢様方に囲まれる。その圧にミラは圧倒され逸れてしまった。
「まさか、ケイゴ様と紫苑様と美琴様お3人に同時にお会い出来るなんて、夢みたいです!」
「私と踊っていただけませんか?」
「いえ、私と是非踊って下さい‼️」
そんな会話を口々に言っており、この国のお嬢様方の推しの強さを感じる。3人は苦笑いになる。
「大変嬉しいお誘いですが、私にはパートナーがおります。本日はその方と踊りたいと思っております。またお誘い下さい。」
紫苑はキラッキラの笑顔でお嬢様方をかわす。
(この為とは言え、俺の婚約者をダシに使って!)
「私にも心に決めたパートナーがおりますので、申し訳ありません。」
ケイゴも主張し強引に人集りを掻き分ける。
(あいつら!!俺を囮にしたな!)
「僕も居るので。」
「そんなはずありませんわ。ケイゴ様はともかく、美琴様は今日は誰とも踊られておりませんし、いつも決まったパートナーはおられませんわ!」
「ゔ……。」
「是非踊って下さい!」
「私も美琴様で我慢しますわ。」
(我慢するレベルならやめてくれー!!)
そうは言っても美琴はやっぱり優しい。集まったお嬢様方を列に並ばせ椅子に座らせる。どうやら一人一人ダンスの相手をする様だ。
「美琴はすごいね。」
「あぁそう(テキトー)。それよりミラはどこ行った?」
「…居ないね。」
ケイゴと紫苑は顔を見合わせる。
「警備は万全たけど…。」
「ああ、分かってる。でも…。」
「早く探そう。」
ケイゴは紫苑を強く見つめ返した。
******
一方、ミラは…。
男の子に保護されていた。
「ミラは大人なのに転んだり迷子になったり、どうしょうもねぇなぁ。」
「あはー。返す言葉もないわ(苦笑)」
遡ること数分前。
ミラがケイゴ達に付いて会場へ戻り、お嬢様方に囲まれた時、勢いよく弾き出された挙句尻餅を付いていた。そこに丁度立っていたのが、この10歳のナマイキボウズだった。
「お前、何やってんだ?鈍臭いなぁ。」
ナマイキボウズは手を差し伸べてくれる。ミラは一瞬ビックリするが、お礼を言って手を取る。
「お前名前は?」
「私?ミラだよ!」
「ふーん。ミラかぁ。聞いた事ないな。ドレスは高そうだけど下級貴族ってとこか。」
「ま、まぁね。」
「俺は明。で?何で床に座ってたんだよ?」
「あー…。人集りに揉まれてねぇ…。」
「あー、あの有名人3人と踊りたい女どものひとりか。」
「あははー。まぁそんなとこ?」
(ケイゴとは踊りたいし、紫苑さんとは踊ったし、あながち間違ってない(苦笑))
「やめとけよ。荒木様以外は婚約者がいる。好きになっても惨めなだけだろ。」
「…なんか、達観してるね。」
「…母さんがそうだから…。」
「…そっか。辛かったね。」
「そうだろうね。」
「…お母様ではなく貴方がよ。明くん。」
「は?何で俺なんだよ?」
「お母様の愛情が欲しい時に貰えなかったんでしょ?」
その言葉に、ひどく傷付いた様な顔になる。そんな表情が、幼かったケイゴと重なる。
「…いらねーよ。そんな不確かなもん。」
ミラはしゃがんでギュッと明を抱きしめる。
「やめろ!こども扱いすんな!」
明は振り解こうとするが、ミラは強く抱きすくめている。
「するよ!明君はまだ子供で、守られるべき存在なんだから!」
明は複雑な表情をしている。
(こんな表情も似てる。)
「うる、せぇよ…。」
明もミラを抱きしめ返した。
暫く抱きしめ合う2人。
「…浮気ですか?お嬢様。」
「…えっ?」
ミラは顔を上げて声の方を見る。
「あっ!ケイゴ!いた!」
「はい、本当に良かったです。見つかって。まさか浮気現場に出くわすとは思っていませんでしたが。」
「浮気現場って?」
「…男と抱き合ってますよね。」
「この子は明君だよ。」
「へー。それで?」
すると後ろにいた紫苑と美琴が明を驚いた顔で見ながら声を揃える。
「お前、避妊くらいしろ。」
「きみ、避妊くらいしろ。」
「ウザ。」
「ケイゴに面差しが似てて、ほっとけなかったんだぁ。」
「面差し…っていうか、親子レベルだろ。」
「あぁ、本当に瓜二つです。他人なんて言われたら、逆に疑うね。」
明はビックリしている。有名人3人が集まって来たからだ。そしてミラを振り返る。
「ねぇ、ミラって亜月様達と知り合いなの?」
「うん、まぁ一応ね。」
「なんですか、一応って…。」
ケイゴはジト目でミラを見る。
「いゃ〜だって…ねぇ?」
「亜月様、ミラが踊りたいそうです。踊って上げて下さい。」
(何でこんなガキに言われなあかんのだ。)
そんなケイゴが明に聞く。
「お2人はどう言う関係ですか?」
「転んで迷子になったミラに、俺が付き添ってやりました。」
「そうか。ありがとう。あとはこちらで引き取ります。」
「えっ?ハリス様は今日の主催ですし、亜月様も荒木様もお忙しいのでは? 」
紫苑が答える。
「ふふ。君は僕の誕生日会なのは分かってるのに、パートナーは見てなかったんだね。もったいない。」
「こんなガキに見せなくていい。」
そう言われて明はミラをジッと見つめる。その視線にミラは佇まいを直してニッコリする。
すると明はハッと気づいた顔をする。
「えっ!あの凄く美しい人!?本当に???ウソだろ?こんな抜けたマヌケが!?遠目美人っていうやつかよ。詐欺だ!」
ミラはその言葉に反応する。
「さっきから聞いてるとさぁ…。」
「えっ!」
ミラは真剣な顔で明の両肩に手を付く。それに驚き焦る明。
(ヤバい!失礼過ぎた!怒られる(>人<;))
「明君は難しい言葉をよく知ってるんだね!凄い!!」
「ふぁ?」
明が変な声を出す。
「いや、凄いじゃ無くて…貴方ディスられてるんですけど…。」
ケイゴがすかさずツッコむ。
「さすがミラちゃんだね。」
「だな。」
紫苑も美琴もミラを微妙な表情で見つめる。
そんな話をしていると、明に声を掛ける人物が。
「明!やっと見つけた!良かったわ。」
その女性は一瞬笑顔になるが、周りにいた人物、特にケイゴを見て青ざめる。
「ウソ…そんな…そんな…。」




