パーティー当日3
時間軸は、パーティー会場へ戻ります。
混乱したらごめんね。
ここは誕生日パーティーの会場
甘いチークダンスの曲を踊る紫苑とミラは、どう見てもラブラブカップルだ。まるで本物の恋人同士に見える。
ケイゴはずっと紫苑を射殺さんばかりに見ている。理屈では仕方ないと分かっていても、心が追いつかない。そんな様子を見て、美琴が色々話しかけるが上の空だ。
ダンスの曲が終わる。センターで踊っていた紫苑とミラはお辞儀をし拍手を浴びている。当主夫妻や主催側の人達がホールに出たのを合図に、他のカップル達もセンターへと進み、ダンスが始まる。
紫苑とミラがこちらへ来る。
「ケイゴ!やっと会えた!美琴さんもご無沙汰しております。」
ミラは美しい淑女の挨拶をする。それに応え美琴は手の甲にキスをしようとするが、ミラの手を先に握ったのはケイゴだった。そしてミラと見つめ合い、それから手の甲にキスを落とす。
ミラの手をグッと手を引いたかと思うと、そのまま腰を抱いてホールへ出る。
「俺を焦らした罰です。」
ケイゴはそう言ってイタズラっぽく微笑む。ケイゴのエスコートは、紫苑とは違う安定感がある。紫苑は優しく引き寄せる感じ。でもケイゴは鍛えているので私を持ち上げて踊っているのかと思うくらい、軽やかにステップが踏めるのだ。
ケイゴとは、もう何十回も踊っている。私が苦手な足捌きのところも、ケイゴとなら不思議と上手くいくのだ。
ふっと笑ったミラが言う。
「やっぱりケイゴとは体の相性がバッチリね!」
ケイゴはその発言に目を見開き、動揺する。そして小声で言う。
「何て事仰るんですか!!俺らはまだそんな関係じゃないでしょ!他の方に聞かれたら大変ですよ!」
「でも本当よ?」
ミラは何がいけなかったのか分からないといった様子で小首を傾げる。ケイゴは珍しく頬を紅くしている。
「…許しますから、もう勘弁して下さい…。」
曲も終わってないのにケイゴはそのままミラを連れて自然にダンスから抜け、紫苑達が見ている所へ行く。
「どうしたの?まだ曲の途中だけど。」
ハリスの問いにケイゴは答える。
「もう我慢の限界だ。向こうに行く。」
「えー!まだ序盤なのにー!それにお前のせいでお嬢様方とお近づきにもなれてないのに…。」
美琴が抗議するが、ケイゴはどこ吹く風だ。
「ならこのままここに残ればいい。行こう。」
ケイゴはミラの腰を抱いて歩き出す。紫苑もそれに従い歩き出す。
「ケイゴ酷い!待ってよ、俺も行くよー!」
美琴も後を追いかけるのだった。
******
「ここは?休憩室じゃないよね?」
「ああ。紫苑に頼んで、俺達専用の控室を用意してもらった。」
ケイゴはミラをエスコートしながら椅子に座らせる。その隣に自分も座り、ミラの前に紫苑、ケイゴの前に美琴が座る。その様子を見てハリス家の使用人達が料理を運んでくれる。
「わー!美味しそう❤︎」
「お腹空いてるよね。作らせたから、いっぱい食べてね。」
「紫苑さん、ありがとうございます!」
「お礼ならケイゴから貰うよ。彼の我儘を聞いただけだから。」
ミラは首を傾げてケイゴを見る。
ケイゴはミラに見つめられてクスッと笑う。
「知ってます?潤んだ瞳でじっと見つめてくるのは、キスのおねだりなんですよ?」
ミラは一気に真っ赤になり一瞬たじろいだが、ケイゴからは瞳を離さない。
「無理よ。だって今日のケイゴは、いつもよりも更にカッコいいんだもん。そんなケイゴの視界に入りたい女の子がきっとたくさん居るわ。私もその1人よ?」
ケイゴは攻撃したつもりが返り討ちに遭った気分になる。
「…貴方って人は…本当にさっきから…。」
ケイゴは「まいった」といった感じで、力が抜ける。そして人目も憚らず顎を掬いキスをする。周りの2人は居心地が悪そうにしている。
紫苑は元々イギリス育ち。両親やら知り合いが目の前でイチャイチャする姿をよく見て来ただろう。そんな紫苑でさえ目を逸らす程のラブラブっぷりだ。
美琴は今にも反吐を吐きそうな顔をしている。
「おい、もうやめろー!こっちが恥ずかしいだろ!」
美琴は真っ赤になって抗議する。が、ケイゴは怖い顔で一瞥し、
「馬にでも蹴られて来い。」
そう冷たくあしらう。唯一ケイゴに抗議出来るミラは、優しく甘いキスでポヤンとしている。
「俺ら邪魔じゃない?って言うか、もう無理…。」
美琴は首を垂れる。
「そうだな。ウマに蹴られる前に退散しようか。」
紫苑も苦笑いで賛成した。




