過去編8〜ミラとケイゴ〜
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「ここのレストランでご飯を食べましょう。」
ケイゴが連れて来てくれたのは、アクアリウムの最上階にあるレストランだ。
「こんな素敵なレストランがあったんだね!全く知らなかった。」
「あまり知られていないですからね。」
それもそのはず。セレブ御用達というやつだ。このフロアは特別なエレベータしか停まらず、許可証が無いと来られないのだ。
「わぁ!全面水槽になってる!」
足元はさっき横から見ていた水槽がある。頭上にはアーチを描いた水槽で、水の動く模様が顔に映る。
「モーセになった気分!」
(色気のない感想だな 苦笑)
「…そう、ですね?どんな気持ちなんですか?」
「森羅万象を手中に収めた時の気持ちよ!」
「そ、そうですか…。喜んでもらえて良かったです。」
(イマイチ分からん感想だ。この人、たまに宇宙人だからな。)
「いらっしゃいませ、亜月様お待ちしておりました。席へご案内致します。」
「もしかして、予約取ってくれたの?」
ケイゴは答えずニッコリする。
(急遽決まったのに、いつの間に?)
そう思ったが、スマートな言動を問い詰めるのは無粋と教えられたので、ここは感謝しておくに留めた。
「ありがとね!」
「はい。」
ケイゴも笑顔で答えた。
席に座ってドリンクを注文すると、すぐにコース料理が運ばれてくる。どもれもすごく美味しくて、食べていてとても楽しかった。
「デザートをお持ちしました。」
それはピーチメルバだった。
「わー!桃だ❤︎」
「お嬢は本当に桃が好きですね。」
「ケイゴだって好きでしょ?」
「まぁ、好きですけど。」
(君が好きで、かわいい顔をするから好きになったんだよ。)
「そうでしょ?」なんて言いながらピーチメルバを食べようとしたミラだが、急に動きを止める。
「どうかされました?」
ミラは桃を口に入れてからスプーンを置き、テーブルの隅に置いてあるフラワーアレンジメントを凝視する。
「この飾りのフラワーアレンジメント、よく見るとミニ薔薇が、11本…。それにさっきからたまにキラキラしてて…。」
ミラはその花に手を伸ばす。よく見ると薔薇の真ん中に指輪が。ミラはそっと手に取る。
「ピンキーリング?何でこんなところに?」
ケイゴを見上げると優しく微笑んでいる。
「貸して下さい。着けてさしあげます。」
「あっ…。」
ケイゴはミラから指輪をそっと受け取ると、左手を取り小指へとはめる。
「か、かわいい!」
ミラは思わず顔を綻ばせる。
「11本の薔薇の意味はご存知ですか?」
「…数で意味が違うのは知ってるけど…11本は分からないわ。」
「そうですか。では調べて下さい…と言いたいところですが…お嬢が好きです。心から愛してます。」
「!?!?!?。」
ミラは驚きのあまり目を見開きパクパクしている。何かを言おうとしている様だが出てこない。ケイゴはクスクス笑いながら、ミラの口に「し〜」と人差し指を当てる。
「お嬢からの返事はyesしかありませんから。お嬢が俺を受け入れる気になるまで待ちます。でも覚悟して下さい。俺はお嬢を誘惑し続けますから。」
ミラは固まっている。
ケイゴはアイスをすくって、パクパクしている口に入れる。
「フフ。さぁ、食べたら帰りますよ。」
ミラは「はい…。」と心ここに在らずな感じで答え、ピーチメルバを頬張った。
「さぁ、行きましょうか。」
ケイゴはミラに手を差し伸ばす。ミラはその晴れやかで暖かな顔にポーッと見惚れてしまう。その様子にケイゴはフッと笑みを深めて手を取って歩き出す。
(良かった。まだ俺にもチャンスがあるんだ。)




