過去編5〜ミラとケイゴ
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さっきからミラのケータイが何回か鳴っている。表示には『先輩』。トラさんはミラに取り継がず無視する。
本当は取り継ぎたいが、この状況の理由を突き止めるまでは取り継げない。しかしケイゴが言うからには多分この『先輩』と言う奴のせいだろう。
ケイゴと会ったであろう時間以降、この人間から3回着信があった。ケイゴの報告が無いうちは出られない。ケイゴはわざと報告を遅らせている。
「電源切っちゃダメかなぁ?」
「『先輩』以外からも連絡は入るだろうから、その時は教えてあげないと。」
「あーそうですね…。」
「まぁケイゴだったら、『先輩』の文字を見た瞬間に問答無用で切ってるだろうな。」
「…(苦笑)ケイゴはあんなに独占欲が強かったんですね。」
「昔からお嬢に関しては執着はしてたよ。態度の端々に見え隠れする、可愛らしいものだったけど。でも自覚してからは俺のモノ感がすごい。」
「…遠くからでも射殺さんばかりに睨みつけて来ますからね。俺らに対しても。」
「お嬢も悪い。何であんなに鈍感なんだ…。」
「そうだ!それに純粋過ぎるんだよ!心配するのは当然だろ!?」
「誰にでも笑顔で接して優しいところもダメだ!」
「あと、突然のボディタッチとか間近で見つめてくるところもなってない!あんなんじゃ勘違いする男が出てくるだろ!」
「ちょっとあんた達…。お嬢の悪口?はやめなさい。」
「タミさん!だってお嬢が男達を惑わせるんですもん。」
「天然なのがタチ悪い!」
「はいはい(苦笑)」
そこへ玄関の開く音がする。
「ただいま戻りました。」
「ケイゴ君お帰り。どうだった…なんて聞くまでもないか。」
「はい。もうあの野郎には会わせません。部活も辞めさせて毎日送り迎えにします。」
「…。」
みんなは目を伏せる。トラさんがオズオズと話す。
「ケイゴ、お前の気持ちはよく分かる。でもお嬢の気持ちは?」
「あいつのせいで食べられなくなったんですよ!」
「そうだとしても、無理矢理引き離せば強く反発し余計に結びつく事もある。最悪の場合、体の関係にでもなったらどうするんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、ケイゴの表情は鬼と化す。居合わせた全員が震え上がるほどの。
「ま、まぁそれは…お嬢に限って無いだろうけどね…。相手がケイゴじゃなきゃ嫌がるだろうし。」
「…俺なんかじゃ釣り合いません。」
「自覚してる割には触るなビーム出してるな。」
「…。」
「何で釣り合わないと思うんだ?」
「…立場が違いすぎます。」
「そうか。なら諦めてちゃんと従者の顔をしろ。」
ケイゴは傷ついた顔をする。
「それが出来ないなら、お嬢に告れるくらいの勇気をつけろ。」
「…。」
みんなはケイゴを穏やかな眼差しで見つめる。
「引き離すだけじゃ無く、周りを含めて暖かく包み込んでこそ男だ。」
「…はい。」
「お前はまだ18歳だ。それに付き合った事もないひよっ子だ。」
「何人かとは付き合いましたよ。」
周りのみんながその言葉にびっくりしている。
「えっ!ケイゴ君、付き合った事あるの?しかも何人も!」
「まさかケイゴがナンパだったとはな。」
「…周りが付き合っていたので。」
「えっ?それだけの理由で?」
「…はい。丁度告白されたので付き合ってました。でも暫くすると違うなって思って別れてました。あんまり長く続いたことは無いです。」
「淡々と話しすぎだろ?」
「特に思い入れもないので。」
「まぁお嬢様に気持ちがあったんだから、そりゃ動かされないだろうけど、付き合った方々には失礼ね。」
「…反省してます。」
「お嬢様もそんな感じで付き合われてたのかしら?」
「だとしたら、棚上げですが本当に許せないです。」
「それは俺らだって許せない!」
トントントンと足音が聞こえる。あれはミラの足音。
「何が許せないの?みんな。」
ミラは部屋をのぞいて優しく微笑む。その笑顔はげっそりして痛々しい。みんなは目を逸らす。
「フフッ。あからさまに避けすぎでしょ。」
みんなは口々に「そんなことは…」と気まずそうに言っている。
「今日は気分がいいの!ちょっとお散歩してこようかな!」
「お供します。」
「嫌よ!ケイゴ最近顔が怖いもん。」
ケイゴはハッと気付かされる。
「申し訳ありません。」
「今までみたいに優しいお兄ちゃんでいて欲しいわ!」
「…。気をつけますから、お供させてください。」
「しょうがないなぁ。いいよ!」
「ではアクアリウムなんてどうですか?」
ミラは一瞬微妙な顔をするが、すぐに笑顔になる。
「…うん!行きたい!」
次回はデート




