パーティー当日2
「こちらは華峯ミラさんです。僕のパートナーです。」
その瞬間、さらに会場から鋭い視線が飛んできた。
「悪いけどすぐダンスが始まる。通してくれるかな?」
ご令嬢に対する紫苑の態度はとても冷たい。
(いつもは凄く穏やかな方なのに、こんな一面もあるのね。)
紫苑はそのご令嬢を見ずにミラをサーっとエスコートしホールの真ん中に立つ。ポージングすると、すぐに曲が流れ始める。
(一曲目からこの難曲が来るなんて聞いてないよー!)
ミラは内心そう思うが顔には出さない。散々練習したダンスを兎に角間違えずに必死に踊ろうと思っていた時である。小声で紫苑が話しかけて来る。
「ミラちゃん、そんな不安な顔をしないで。僕がちゃんとリードするから、間違えても大した事ない。楽しんでくれたら嬉しい。」
その言葉にミラは励まされ、フワッとした笑顔を返す。
「はい!宜しくお願いします!」
紫苑の言葉通り、とても優雅にエスコートしてくれる。凄く踊りやすい。ステキなドレスを着ているせいだろうか、こんなに難しい曲なのに、凄く楽しい♪
二人のダンスは素晴らしく、会場の皆んなが見惚れている。紫苑に憧れているご令嬢方の冷たい視線は、今は紫苑の美しい顔に釘付けである。
一曲が終わると、会場全体から拍手が巻き起こり、なかなか収まらない。スタンディングオベーションというやつだろうか。それくらい二人のダンスは素晴らしかった。
拍手が収まった頃、当主であるルイが挨拶する。
「本日は息子紫苑の為にお集まり頂き、誠にありがとうございます。彼は現在ーーーー」
堅苦しい挨拶がされた後、紫苑も挨拶をする。
「ーーーーそれでは皆様お楽しみ下さい。」
紫苑の順番が終わった後、再び手を引かれて中央へ移動する。
(また踊るの?予定と違う様な?)
そんな事を考えていると、また小声で話しかけて来る。
「ごめんね、予定と違っちゃうんだけど、もう一曲お願いするね。今度は恋人みたいな雰囲気を出して欲しいんだ。」
(いよいよ私の本当の役目、偽婚約者だ!)
「はい!分かりました!」
曲が始まる。
(この曲は仮面舞踏会や夜会も深まった時間にしか踊らない、密着度の高いやつじゃないか!お昼に使う事もあるんだぁ。だから教え込まれたのね。)
紫苑はグッとミラを抱き寄せ、ピッタリと密着する。お腹同士がくっついて、胸元もほぼ隙間が無い。これは少ーしセクシーなダンスだ。普通は公式行事などでは踊られない
(公式と言っても個人の誕生会だから、これもOKなのだろうか?)
見つめ合いながら踊る。紫苑の綺麗な目は、不思議な甘さを宿している。その目に見つめられると恥ずかしくなってしまう。
「目を逸らさないで。」
甘い顔で見つめられ、甘い声で言われる。コレに落ちない女性はいないぞ!そう思いながらミラは赤い顔で紫苑を見つめる。
(ミラちゃん、凄く顔が真っ赤で可愛い!!ケイゴはこうやってやられたんだなぁ。この瞳で見つめられたら好きになっちゃうな…。男を惑わす瞳だ。フリをしてくれてるんだろうけど…コレはきつい。参ったな…。)




