誕生日前のパーティーお誘い
9時なのに眠い
もうすぐミラの誕生日だ。今年はミラが16歳になる記念の年。その為誕生日パーティー前に社交デビューしておく必要がある。
親分とケイゴは、どのパーティーでデビューさせようか招待状を見ながら選んでいる。
「ここのパーティーはどうだ?」
「こっちの方も宜しいかと。」
「うーん…なかなか決まらないなぁ。」
ピーンポーン
インターホンが鳴る。
(今日は来客はないはずだが…?)
「親分、失礼します。ハリス紫苑様がお見えです。」
「紫苑が⁉︎」
驚いた声を上げたのはケイゴだった。客間に案内されていた紫苑に、丁度タミさんがお茶を出していた。
「紫苑、急にどうした?」
「おーケイゴ!わるいな、アポなしで。」
ケイゴは座りながら話す。
「一体どうした?イギリスだったんじゃ無いのか?」
「一昨日までドイツに行ってたんだよ。で、帰ってきたからお土産渡すついでに来た。」
そう言いながらお土産を渡してくれる。
「あぁ、ありがとう。でも、それだけが理由じゃ無いよな?」
「あぁ、もちろん違う。あのね、ミラちゃんのデビュー、僕の誕生日パーティーでにしてくれないかなぁ?」
「……何?何で?」
「ケイゴだって、ミラちゃんのデビューは力がある同派閥で、ミラちゃんが気兼ねなく行けて、ある程度目立っても大丈夫でーーーみたいな理想のパーティーを探してるんだろ?」
「まぁ…そうだな。」
「だったら、ぜひ僕の誕生日パーティーのパートナーをお願い出来ないかな?」
「はぁ?」
ケイゴはメチャクチャ嫌そうな顔をする。親友だとしても自分以外がエスコートするのは相当嫌なのだろう。
「ハハッ!折角の顔が崩れてるぞ!」
紫苑はおかしそうに笑っている。
「まさかケイゴがこんなに女の子を好きになるとはな。」
「うるさい。いいだろ、別に。」
紅くなってブスッとしている顔が可愛い。
「幼馴染なら僕もいるけど、君達みたいに毎日一緒にいるみたいな事は無いからなぁ。」
「…。俺達はずっと一緒に住んでるからな。」
「ふーん。つまり刷り込み式に好きになった訳?」
「俺がそんなんに乗せられるかよ。」
「まぁそうだね。あっ!ミラちゃんへのお土産もあったんだ!ちょっと車に取って来る。」
「ミラに渡すかどうかは、俺が決めるからな。」
「はいはい(苦笑)」
紫苑が廊下に出ると、ちょうど起きて来て全く準備出来ていないミラが、大きく伸びをしながら階段から降りて来る。
そんな隙だらけのミラと、キラキラ王子様的な紫苑の視線が絡む。お互い足が止まり見つめ合う。ミラは明け方までテスト勉強をしていた為、まだ頭がボーッとしている。
そこへ、小さな足音に気付いたケイゴが紫苑の横を抜けて慌てて廊下へ出る。そしてミラを見つけて抱きしめ紫苑の視線を自身の体で遮りつつ後ろへ声を掛ける。
「紫苑、見るな!早く行け。」
「あぁ、そうだね。」
紫苑はケイゴの逆鱗に触れない内にスッと姿を消す。そんな様子をケイゴに抱きしめられながら聞くミラ。そして上から降って来る声。
「おはようございます、お嬢。タイミング最悪ですけど。」
ムッとした声で笑顔のケイゴは、朝から心臓に悪い。
「おはよう。今のは紫苑さん?」
誤魔化す様にミラは聞く。
「ええ、少し用事があって来られました。」
「予定あったっけ?こんな早くに。」
「…何言ってるんですか。もう10時過ぎてますよ。貴方が夜更かしするからいけないんですよ。」
「だって難しかったんだもん。」
「そう言う時は俺を呼んで下さいよ。その為に勉強したんですから。」
「…ケイゴは私の為に先生になるの?」
「教師と生徒なんて、響きが妖し気でいいでしょ?」
さっきまで怖い笑顔だったのに、今は妖しい顔になっている。ミラは真っ赤になって抗議する。
「ふ、不良教師\(//∇//)\ 学校で何する気なの!」
「何を想像されたんでしょうかねぇ。」
そんな事を耳元で囁かれながら、いつの間にか部屋に差し戻されている。
「お着替えして、身支度を整えられてから下にいらして下さい。女性があんなマヌケな姿を男に見せるものではありませんよ。」
「ケイゴやみんなは見てるじゃん。」
「我々はお嬢の情けなくも緩み切った姿を知っていますが、他の方が見たら100年の恋も冷めるレベルですよ。」
(何なの?失礼しちゃうわねぇ。)
やれやれ、なんて漫画の様な事を言いながら、部屋を出て行こうと扉に手を掛ける。
「修一さんは寝起きでも可愛いって言ってくれたのにー!」
ミラはツーンとしてそっぽを向くと、怒気を纏った黒いオーラが、ユラリと近づいて来る。そちらをチラッと見ると、ケイゴがメチャクチャ怖い顔で睨んでいる。
(えっ!!コワ!?)
急にグッと腕を引っ張られ、壁に追い詰められる。その荒々しさにビックリしてしまう。如何に普段優しく接してくれているか自覚する。
「どうやら俺を怒らせたいみたいだな。」
「そんな事は…。」
「ミラの緩みきったのが可愛いだって?それで嬉しくなってどうしたんだ。」
ケイゴはミラを挟んで壁に両手をついている。こんな壁ドンは怖くて嫌だ。
「こうして顎を掬い上げられて、キスでもしたのか。」
言い当てられて無条件に紅くなってしまう。
その反応が、更にケイゴを苛立たせてしまう。
(いつも我慢してるこっちの身にもなれ!もう殺されてもいいから、俺のものにしてしまおうか。)
見つめ合いケイゴの顔が近づいてくる。ミラはギュッと目を瞑る。怒っているはずなのに、思った以上に優しい唇に塞がれる。
「ん、、あ、、」
何度も角度を変えて降って来る。全く止めようとしない深い口づけ。ミラばかりが甘い声を洩らしている。優しくも激しいキスに、ミラは力が抜けていき、いつの間にかケイゴに抱き抱えられている。すごく愛が流れ込んで来るキスだった。
ようやく唇が離れた時、ミラは全く足の力が無くなっており、ケイゴはそのまま抱き抱えてベッドに下ろした。腰砕けと言うやつだろうか。
「お嬢、そんなんじゃダメですよ。無理矢理乱暴にされてるんですから、もっと抵抗しなくちゃ。」
ミラは聞いているのかいないのか分からない表情でケイゴを見上げている。
「無理矢理だったけど、優しくて気持ちいキスだったから。」
「(//∇//)!!お、俺は下で紫苑が待ってるので行きます。お嬢はちゃんと身支度を整えてから来てくださいね。」
ケイゴは念押ししてから客間に戻ると、既に紫苑が待っていた。
「遅かったね。ミラちゃんといたの?」
ケイゴはギロリと紫苑を睨んだ。




