おっさんの隣人③
決意したはいいけれど、何から始めよう。
そうだ!
「俺、ちょっと話してくるよ」
「隣人とですか?」
「ああ」
「無理だと思いますがね」
「大丈夫だって、話せばわかるよ。同じ人間なんだから」
俺は、ベッドから起き上がり服を着替えて玄関を出る。
大丈夫。
わかってくれる。
隣人の家のインターホンを鳴らす。
ピンポーン……。
ワンワン……。
ワンワン……。
犬の吠え声がうるさすぎて何を言ってるのか聞こえない。
俺は、もう一度インターホンを押す。
「はい……」
「あの、隣のものですけど……」
「はい」
隣人は、恐る恐る玄関から出てきた。
「あのーー。車の音や犬の吠え声をもう少し静かにしていただけますでしょうか?」
「あっ、はいはい。すぐに出来るかわかりませんけど、しますので」
適当にあしらうように言われてイライラした。
「お願いしますね」
「はい。わかりました……。でも、車は息子が趣味で乗ってますし。あれしか趣味がない子なんですよ。それを取り上げるのも可哀想だし」
言い訳がましく言われる言葉に俺は、イライラしていた。
「とにかく、寝れなくて迷惑なんでお願いします」
「わかりました」
俺が強気でいうと、隣人は嘘泣きなのかうるうるとしている。
俺は、何とか伝えられて安心した。
少し言ったお陰で、殺意は少し和らいだ気がする。
俺は、家に帰宅した。
「やっぱり話せばわかってくれたよ」
「そうですか、よかったですね」
「これで、安心だから大丈夫だよ。おっさん」
「だと、いいですね。では、私は帰ります」
おっさんは、何かを悟っている顔をしている。
だけど俺は、隣人に言えてスッキリした気持ちになった。
パジャマに着替えて、寝不足の頭をスッキリさせようと眠る。
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「♪︎♪︎♪︎♪︎♪︎♪︎」
外が騒がしくて目が覚めた。
「な、何だ……?」
手探りでスマホを探すと夜中の3時30分。
「あんたねーー。ちょっとそれ何聞いてるのよ。いつも、いつも横文字で」
「えーー」
【ワン、ワン、ワンワン】
昨日の夜中より明らかに五月蝿くなった。
「チッ、この低俗の下等動物め」
俺は、イラついて吐き捨てるように言った。
おっさんが悟っていたのは、この事だったのか?
「だから……」
息子らしき声は聞こえない。
だけど、おばさんが酷い。
音楽がデカイから耳が遠いんだろうな。
深夜に話す声のレベルじゃない。
「あんた、今日も遅いの?」
「……」
「あーー。そう。そしたら、カレーにするわね」
家で話せ!!
糞野郎共……。
話すなら、息子も旦那もいる時間じゃないと意味がない。
ババア一人に言っても、何も解決しない。
今日は、仕事を休んで。
両方が帰宅するのを待ってやる!!
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午後19時15分。
「大丈夫ですか?聞こえますか?」
「どうして、こうなってる?」
「よかった。意識がある。行くよ」
「ゲホッ、ゴホッ……」