改善できない国
私の本業は建築士なので、一番身近な法律となれば建築基準法になる。
建築基準法は弁護士の方と話しても、最も難解な法律のひとつだと言われる。日々業務で触れていて、世間的には専門家とされる我々ですら、その解釈に戸惑うことがしばしばだ。
それ自体問題があると思うが、この昭和25年に作られた法律は、継ぎはぎしながら今でも使われ続けている。当然内容はおかしなところがたくさんある。
中でも建築に携わる人間であれば、最も納得できない基準として排煙をあげる人が多いと思う。
内容を簡単に言えば、火災時に煙が外に有効に排出できる窓等が必要だというものだ。大きな施設や不特定多数が使用する建物であれば納得できる部分もあるが、住宅であっても規模によってはこの法律が適用される。
窓に関しての規定は換気用に床面積に対する換気上有効な窓の設置が義務付けられるので、個人的には住宅の場合こちらだけで十分だと思う(排煙用の窓と違うのは煙の排出言う事で、排煙上有効な窓は部屋上部にないといけない)。
もちろん実際の火災時に家の窓を開けて逃げる人なんていないので、実効性はどうなんだと思う。消火活動時に窓を割って煙を外に排出する事はありそうだが、ならば鉄の扉や天窓を有効とするのはおかしいだろう。実効性がないので、基準も良く分からないものになる。判断に迷っても、根本的な理屈に納得できていないので、どうして良いのかがわからない。そんな曖昧な感じなので、細かい部分では審査する方の判断も行政によってまちまちだ。
ただ一番の問題は、建築基準法に限らず、それら現場ではおかしいと思われている事が、改善していける仕組みがないことだと思う。人の作るものに完璧なものは存在しない。だからこそ改善していける仕組みが必要だ。扶養制度も年金制度も社会保険制度でもなんでも一緒だ。
この歯車の組み合わせを考えるのが本来の政治の役目であるのに、一生懸命に回すことだけをしようとしている。老朽化して装置自体が不具合を起こすのは時間の問題だろう。
ブツブツ独り言で文句を呟いていても何も変わらないので、日々自分には何ができるのかを考えている。考えるだけではなく、少しは実行しているつもりでもあるけれど、中々に壁は厚くて高い。




