士業と家業
前にも同様の事を書いたかもしれません。建築士と建築家はどう違うんだという質問をよく受けます。建築家は職業の名前ですが、建築士は資格の名前です。
私は仕事は面白くないと嫌な性質です。金儲けが好きな人は、それ自体がきっと面白いからその仕事をする事ができるんでしょう。もちろんどんな仕事も面白い部分があるとは思いながらも、そこをかなり重要視してるかなと思います。
そう言った人々の職業には『家』が付くことが多いような気がします。画家、漫画家、陶芸家、芸術家、小説家etc……但しそこには生活の不安定さもにじみ出ています。一方『士』の方には生活の安定感を感じます。税理士、会計士、司法書士、弁護士etc……多くの士業には、その資格が無ければできない独占業務があるからです。建築設計も建築士でなければ原則できません。
しかし『家』の方は資格は関係ないです。漫画家になるのに一級漫画士の資格は必要ないです。完全な実力勝負の世界です。しかしそれ故に仕事量にムラがあって、収入が安定しないので生活も安定しません。大人気になればもちろんその限りでは無いですが、そこへ辿り着ける人はほんの一握りです。それでも細々と続ける人もいます。安定より仕事の面白さを優先した人が『家』を名乗る感じですかね。
だから建築士と建築家は珍しい関係のような気がします。建築士と言えば安定感があって、普通はその資格を持って建築家になるので、いいとこどりも可能な気がします。しかし建築士としてこなす業務の中には、面白くないものも多いです。建築家を名乗る人は、そういったものとは距離をとっている気がします。そうして建築家を名乗る人でも、建築士の資格を持っていない人がいます。一般の人はその事実に驚くと思いますが、凄腕の医師であるブラックジャックも医師免許を持っていないので、似たようなものです。ブラックジャックは、自分の納得いく仕事でなければ引き受けません。
では私はどう名乗っているかと言えば、未だに建築家の○○ですとは言わないですね。建築士の○○ですと名乗ります。クライアントが誰か他人に、私の事を紹介するときには建築家の○○さん、という風に言われたりはするんですが、どうにも自分でそう名乗る覚悟?はありません。多分一生そうは名乗らない様な気がします。
先生と呼ばれるのも苦手です。現在非常勤講師もしているので、学生さんからそう呼ばれるのは仕方ないとして、クライアントや工務店から先生をつけて呼ばれるのにもどうにも抵抗があります。
最近歳をとったので、実際には先に生まれていたりもするんですが、やはり自分の中では先生では無いような気がしています。




